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国交省、八ッ場ダム事業用地の強制収用へ向け事業認定(関連記事)

 昨日4月23日、国交省は八ッ場ダム事業用地の強制収用へ向けて、事業認定の告示を行いました。
DSCF4662 (2) 水没予定地の住民らは、”強制収用”をちらつかせた脅しと圧力によって今年2月までに国交省との契約を余儀なくされましたが、そのことに触れている報道は限られています。
 残された未収用の土地は共有地です。未収用の土地の中には、道路などの事業用地が含まれており、国交省は道路建設などを予定通り進めるために、共有地の強制収用をめざしていると考えられます。写真右=八ッ場ダム水没予定地

 この後、強制収用の可否は群馬県の土地収用委員会で審理されることになっています。
 昨日、国交省が公表した事業認定に関する資料によれば、昨年、事業認定手続きに基づいて国民から群馬県知事に提出された意見書は139通、このうち事業認定への反対意見は118通あったということですが、自民党の全面的な支援を受けている群馬県知事は国交省と足並みをそろえて、昨日、以下のコメントを公表しています。

★群馬県ホームページより 知事コメント
http://www.pref.gunma.jp/chiji/o6000001.html

八ッ場ダム建設事業に係わる土地収用法に基づく事業認定告示に対する知事コメント
1 今回の土地収用法に基づく事業認定の告示は、平成32年3月末の八ッ場ダム建設事業の完了を確実に履行するために必要な手続として、事業認定庁が八ッ場ダムの公益性等を認めたものと認識している。

2 国に対しては、地元の皆様が不安にならないよう丁寧に説明していただくと共に、一日も早い八ッ場ダムの完成をお願いする。

3 県としても、引き続き、地元関係者、長野原町、東吾妻町、関係する一都四県、国と連携しながら、ダム湖を前提として進められている生活再建事業の早期完成に向けて全力で取り組んで参りたい。 平成28年4月22日

 関連記事を転載します。

 ◆2016年4月23日 NHK前橋放送局
 http://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1066950731.html
 -八ッ場ダム 土地収用事業認定ー

 建設が進められている群馬県の八ッ場ダムについて、土地の取得を速やかに進めようと、国に対して申請されていた強制的に土地を買い上げる「土地収用」をするための事業が認定されました。
 今後、県の委員会が許可すれば、土地の強制的な収用が可能となります。

 群馬県長野原町にある八ッ場ダムは、平成31年度末の完成を目指し、建設が進んでいますが、予定地のおよそ5%については、地権者の行方が分からないなど、交渉が進まず、事業の遅れが懸念されています。
 このため、国土交通省関東地方整備局は、去年4月、土地を強制的に買い上げる「土地収用」を進めるため、国土交通省に対して法律に基づく「事業認定」の申請をしていました。

 これについて、国土交通省は22日付けで、事業を認定し、官報に告示しました。
 許可の理由としては、ダムの建設によって利根川水系流域の洪水の防止や首都圏の水を確保するという公益性が高い事業であることなどを挙げています。
八ッ場ダムを巡っては、今年度の国の予算に工事費として212億円余りが計上されていて、今後、県の収用委員会で許可されれば、土地の強制的な収用が可能になります。

 群馬県の大沢正明知事は「国には地元への説明と1日も早い完成を求めるとともに、県としても生活再建事業の早期完成に全力で取り組みたい」とコメントしています。4月23日 06時47分
*注:八ッ場ダム事業の今年度の予算は約222億円です。記事中の「212億円余り」は工事諸費及び営繕宿泊費を除いた額です。

◆2016年4月23日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20160423100580001.html
ー土地強制収用へ着々 八ッ場ダム 国交相が事業認定ー

 国土交通省が長野原町で進めている八ッ場ダム建設事業で、国交相は22日、土地収用法に基づき、事業認定した。今後、同省八ッ場ダム工事事務所が土地調査をし、県の収用委員会の審理などを経て、未買収地を取得できるようになる。

 工事事務所によると、3月末までに、水没予定地を含む計画予定地約301ヘクタールのうち、95%に当たる約286ヘクタールを取得した。予定地にある住居全戸と移転の契約を終えており、残っているのは主に所有者の所在が分からず買収交渉ができない土地だという。

 国交省は2018年9月にかけて本体や水門設備を造り、18年9月以降に水をためる計画という。すべての土地を取得できなければ水をためられないため、工事と並行して未買収地の強制収用に向けた手続きをしていた。

 大沢正明知事は「国が公益性を認めたものと認識している。地元の皆様に丁寧に説明していただくとともに、一日も早い完成をお願いする」とのコメントを出した。

 最後まで水没予定地に残っていた一人の高山彰さん(62)は「移住に向けて忙しく準備を迫られ、憤りを感じる。代替地に人が住むわけだから、鉄鋼スラグや地滑りの問題を地元住民にも分かるよう、きちんと対処してほしい」と話した。

◆2016年4月23日 上毛新聞
 http://www.jomo-news.co.jp/ns/7414613390437626/news.html
ー土地収用法事業に認定 八ツ場ダム建設で国交省ー

 八ツ場ダム(長野原町)建設事業で、国土交通省は22日、水没予定地の強制収用を可能にする土地収用法に基づく事業に認定したと告示した。
 同省によると、3月時点の水没予定地取得率は、前年同期から2ポイント増の95%(面積ベース)。ただ、未取得地用地には地権者が不明な場所も残り、全てを任意で取得するのは難しい状況という。認定理由について、同省は官報で「流域住民の生命や財産の保護や、水道、工業用水の確保で得られる公共の利益が相当ある」と説明している。

 同省関東地方整備局は、対象となる用地を立ち入り調査し、県収用委員会に申し立てた後、明け渡し採決などを経て取得する。ダムへの「試験湛水」までに取得を完了させる。
 同省が昨年6月に東吾妻町で開いた同法に基づく公聴会では公述人から賛否両論があった。大沢知事は「地元が不安にならないよう丁寧に説明し、一日も早い完成をお願いする」とのコメントを出した。

◆2016年4月24日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201604/CK2016042402000152.html

ー土地強制収用へ事業認定を告示 八ッ場ダムめぐり国交省ー

 長野原町の八ッ場ダム建設をめぐり、国土交通省は二十二日、強制収用を可能とする土地収用法に基づいた事業認定を告示した。今後、強制収用の対象となる土地への立ち入り調査などを経て、県収用委員会に申し立てる予定。

 国交省八ッ場ダム工事事務所が昨年四月、所有者が分からない共有地などの取得を目指し、国交相に事業認定を申請していた。
 事務所によると、今年三月末までに事業に必要な土地の約95%を取得している。

 八ッ場ダムは利根川支流の吾妻川に建設する多目的ダム。民主党政権下で一時凍結されるなどしたが、国交省は昨年一月、本体工事に着手した。二〇一九年度に事業完了の予定。

写真下=群馬県・埋蔵文化財調査事業団による「石川原遺跡」の発掘調査のため、樹木が伐採された水没予定地・上湯原。2016年3月6日
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写真下=水没予定地・川原湯温泉街の大沢で進められている町道の橋脚工事。右手の山の中腹に、観光客に親しまれた「聖天さまの露天風呂」があった。
大沢の橋脚工事

写真下=川原湯神社の移転予定地に、地鎮祭で使われた笹が立っている。周辺では延々と砂防工事。脇に暫定開通の付替え県道、それより谷側にJR吾妻線が走り、川原湯温泉の新駅もある。
川原湯神社の