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国交省と江戸川区が進めるスーパー堤防整備事業の現況

 国交省と江戸川区は江戸川右岸で二つのスーパー堤防整備事業を進めています。

 江戸川区北小岩一丁目のスーパー堤防事業では、反対住民を強制的に立ち退かせて土盛り工事が行われてきました。差し止めの裁判が最終段階を迎えています。
 同じく江戸川区の篠崎公園地区では、今年3月に土地区画整理事業計画の認可が下りましたが、これについても地元住民が反対運動を展開しています。
 北小岩一丁目は国交省のスーパー堤防整備事業と江戸川区の区画整理事業だけですが、篠崎公園地区の事業は、国交省のスーパー堤防整備事業と江戸川区の区画整理事業、それに東京都の篠崎公園事業、江戸川区の緑地事業、幹線街路事業も一緒の複雑な事業になっています。
 篠崎公園地区のスーパー堤防は、土地区画整理、道路、緑地、都の公園の各事業とセットで進めることになっていて、完成予定は2026年度ですから、計画通りに進んだとしても、完成は今から11年後です。事業費は新聞報道によれば、国と江戸川区だけでも約234億円です。スーパー堤防の整備延長は約420メートルですから、1メートルあたり5600万円にもなります。

 北小岩一丁目のスーパー堤防は120メートルで、事業費が47億円ですから、1メートルあたり3900万円です。いずれも、無茶苦茶に高い堤防整備費用です。国交省が普及をストップしている耐越水堤防工法ならば、1メートル50~100万円で済みます。

 篠崎公園地区のスーパー堤防予定地には、以下の図にあるように、お寺と神社(妙勝寺と浅間神社)がありますが、神社は手を付けられないことになっていて、そのまま残り、大きな窪地のあるスーパー堤防になる予定です。なぜか、お寺の方は移転対象になっていますが、妙勝寺の住職は強く反対しています。

キャプチャ

 江戸川下流では両岸合わせて22kmのスーパー堤防をつくることになっていますが、具体的に整備を展開していく計画はありません。
 北小岩や篠崎公園といった”点”だけのスーパー堤防をつくる、治水対策として無意味な事業に巨額の公費が投じられつつあります。

 江戸川区の防災問題に取り組んでいる地元の方々が企画している学習会のお知らせはこちらのページに掲載しています。
 
 

 関連記事を転載します。

 ◆2016年3月22日 朝日新聞東京版
  http://www.asahi.com/articles/CMTW1603221300004.html
 -東京)スーパー堤防 江戸川区新計画決定ー

 江戸川区は、国土交通省の高規格堤防(スーパー堤防)と一体的に進める「上篠崎一丁目北部土地区画整理事業」の計画を正式に決めた。同様にスーパー堤防と土地区画整理がセットで進む区内の北小岩1丁目では、堤防の盛り土工事が大詰めを迎え、新年度に堤防の上に宅地がつくられる。建設の是非をめぐって議論がくすぶる巨大事業が着々と進む。

 ◆「造ること前提で進んでしまう」

 江戸川右岸の篠崎公園地区では、スーパー堤防事業が区の土地区画整理、道路、緑地、都の公園の各事業とセットで進む。道路が狭く、古い木造家屋が密集する住宅地の環境を改善する一方、スーパー堤防や公園の高台化で防災機能を高める狙いがある。予定地は計約9ヘクタール。2026年度の完成予定で、区と国だけで計約234億円を投じる。

 国交省は堤防の約420メートルの区間をスーパー堤防にする。市街地側に約150メートルにわたって盛り土をして傾斜をつけ、200年に一度の規模の洪水で水が堤防を乗り越えても壊れないようにする。盛り土をした上を区や都が宅地、公園、道路などにする。

 スーパー堤防の工事に先立ち、区は土地区画整理を本格化させた。新年度は予定地内の51権利者の権利関係や土地の調査などをする。国交省や都と共同事業として進める協定を結ぶ。

 区はすでに44権利者から9877平方メートルの土地を購入しており、予定地に空き地が目立つ。

 所々に「スーパー堤防建設反対」という赤いのぼりが立てられている。

 予定地内にある日蓮宗の石歴山妙勝寺は鎌倉時代の1279年に開かれ、今から100年ほど前に堤防の内側の河川敷から移ってきたという。450基ほどの墓もある。土地区画整理となれば、すべて移転しなければならない。

 先代住職の渡辺清明さんは、スーパー堤防の話が持ち上がった10年以上前から「無駄な事業だ」と反対を叫び続け、12年に亡くなった。妻の美代子さん(74)も反対の気持ちは変わらないが、事業がいよいよ本格化し、不安が募る。

 美代子さんは「スーパー堤防は必要なのかと区に聞いても、造ることが前提でどんどん進められてしまう。東北の被災地ではいまだに仮設住宅で大勢の人たちが暮らしているのに、こんな無駄なものに税金を使うことは納得できない」と憤る。

 ◆住民反発 区が民家強制解体

 ◇着工 大幅に遅れた地域も

 北小岩1丁目では国交省による堤防120メートルの盛り土工事が最終段階に入り、市街地側に約160メートル、周囲より高くなった一角が姿を現した。

 スーパー堤防は民主党政権の事業仕分けで「いったん廃止」とされたが、国交省は計画を縮小して継続させ、自民党の政権復帰で本格的に再開した。低地が広がる江戸川区では、多田正見区長が推進に力を入れ、北小岩1丁目が再開後初の着工区間に選ばれた。そのためこの一角は、スーパー堤防をめぐる議論の象徴的な場所になった。

 区は事業に異を唱える住民らの反発に直面し、14年7月には土地区画整理法に基づいて民家の強制解体に踏み切ったが、盛り土着工は大幅に遅れた。反対する住民らは土地を明け渡した後も国や区を相手取って裁判を続けている。

 区は予定地を4月に国交省から引き継ぎ、土地区画整理の仕上げの宅地造成や道路整備にかかる。今年末か来年初めに住民に引き渡し、来春にも住宅が完成し住民が戻り始めるというスケジュールを描いていた。

 しかし、盛り土工事中に地中で見つかった古いコンクリート管を4月以降に区が撤去することになったため、遅れそうだという。

 事業が本格化する前の11年春、住宅93棟に約250人が住んでいた。区は事業後に約70棟の住宅が建つとみている。福祉施設を含む集合住宅などを建てる事業者を募り、土地の一部を売却する方針だ。(佐藤純)
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 ■スーパー堤防

 国交省が1980年代に整備を始め、首都圏、近畿圏の6河川で873キロ造る計画だったが、民主党政権の事業仕分けで「完成までに400年、12兆円かかり無駄」と批判され、「いったん廃止」となった。11年に5河川120キロに縮小された。このうち昨年度末までにできたのは、部分的完成を含めて12キロ。事業再開後の13年度に北小岩1丁目など2カ所が新たな着工区間に選ばれたが、その後、新規の着工はない。江戸川区内では江戸川、荒川の約20キロで計画があり、これまでに2カ所で計2・5キロできている。