八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

国交省による現場見学会の説明に関する疑問点

 国交省八ッ場ダム工事事務所のホームページに同所が主催する「現場見学会」の各コースのページに10月、11月の予定表が掲載されています。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/yanba_index032.html

 9月に「現場見学会」の「本体みっちりコース」に参加した方のビデオが公開されています。
 https://yamba-net.org/wp/?p=12373

 地元では「ダム本体工事の際は見学者が地元に賑わいをもたらす」ことになっており、「現場見学会」も「現場見学会」も「賑わい」に貢献することを目的に企画されたものであると思われますが、女性ガイドと補助役の国交省職員の説明には疑問があります。そのいくつかをお伝えします。
 
★見学会は本体工事現場を見せるということであったが、本体工事現場は一般に公開されている展望台からの眺望と、本体工事現場が直接は見えないバスの車内から望むだけで、工事についての説明も新聞に書かれている程度の内容にすぎず、「本体みっちりコース」という名称は誇大広告であった。

★水没予定地に住民が今も住んでいることに触れず。
 水没予定地の田んぼやはさがけを見て、参加者が「水没予定地に住民が住んでいるのではないか」と質問したが、女性ガイドも国交省職員も「わかりません」と答えた。
(水没予定地に住む住民らに対して、「強制収用」を可能とする事業認定手続きを進め、追い出しにかかっている状況にあって、当事者である国交省の職員が住民の存在を知らないとは考えられない。)

★昨年11月、水没予定地の国道を廃線化する際、水没予定地住民らは生活道路である国道の使用継続を求めたが、国交省と群馬県は旧国道を本体工事の掘削土の運搬専用路とするため拡幅する必要があるので要望を受け入れられないと説明した。しかし現在、掘削土の置き場は旧・川原湯温泉駅周辺となっており、住民の居住地周辺の旧国道は掘削土の運搬には使われていない。(旧国道の閉鎖は水没予定地住民への嫌がらせであったと考えられる。)
 
★掘削土の現在の置き場は八ッ場ダム水没予定地にあり、このままではダムに沈むことになるが、国交省職員は「総貯水容量に対して掘削土量は微々たるものである」と説明した。現在の計画では掘削土量は68万立方メートルとされており、誤差の範囲といえる土量ではない。

★ダム予定地の樹木をどうするかは検討中だが、費用節減のため、ほとんどを残すことになるだろうという説明があった。予定地に生い茂る樹木を全面伐採すれば、荒涼たる風景が広がることになるが、伐採せずに貯水すると、水面下で樹木が分解して水質悪化の要因になる。また、洪水時には大量の流木が流出することにもなりかねない。このため、ダム事業では原則として予定地の樹木を伐採することになっているが、八ッ場ダム事業ではどうなるのか不明。

★本体工事は24時間行われているが、本体工事現場に近い川原湯温泉の住民からは夜間の騒音について文句は出ていないという。その理由は、住民が「ダムの早期完成を望んでいる」ためであるということであったが、住民はやむをえず耐えている状況ではないか。

★見学会全体を通して、国交省が工期の遅れ、費用の増大を抑えようと努力している旨の説明が繰り返された。無理な時間と費用の節約が安全性や住民の生活を脅かす事態を引き起こすことが懸念される。

 展望台「やんば見放台」の正面に見える八ッ場ダム本体工事左岸作業ヤード (2015年9月27日撮影)
骨材の貯蔵ビン.jpgs