八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

放水ゲートの取り付け公開 八ツ場ダム

 国交省八ッ場ダム工事事務所はさる9月19日、八ッ場ダム本体の放水ゲートの取り付け作業を報道関係者に公開しました。
 八ッ場ダムの本体工事は、そのスケールの大きさから、多くの観光客をひきつけています。国交省もゼネコンも技術が優れていることをしきりにアピールしていますが、どれほど素晴らしい技術でも、建設目的が体をなしていなければ活かされようがありません。

 関連記事によれば、国交省は放水ゲートについて、「大雨のときに下流地域が被災しないよう放水量を調整する」施設と説明しているようです。八ッ場ダムの主目的は「利根川の洪水調節」ですから、「下流地域」とは、八ッ場ダムを建設している吾妻川が利根川と合流する群馬県渋川市より下流の利根川流域を指します。
 しかし、ダムの治水効果は遠ければ遠いほど減少するといわれます。実際、国のデータを見ても、八ッ場ダムの治水効果は、利根川の治水基準点とされる群馬県伊勢崎市の八斗島(やったじま)で、最大でも僅か数センチ水位を下げるだけで、堤防の余裕高は4メートル以上あります。伊勢崎市より下流ではさらに治水効果が下がりますが、利根川流域1都5県は防災のためとして巨額の負担金を払い続けています。

 関連記事を転載します。
 記事の中で、ダム堤体のコンクリート打設は116メートルの堤高の3割超と説明されています。国交省八ッ場ダム工事事務所は7月末にコンクリート打設が堤高の3割超と発表しています。

◆2017年9月20日 上毛新聞
 http://www.jomo-news.co.jp/ns/6915058713111673/news.html
ー放水ゲートの取り付け公開 八ツ場ダムー

 国土交通省八ツ場ダム工事事務所は19日、群馬県長野原町の八ツ場ダム工事現場で、大雨のときに下流地域が被災しないよう放水量を調整する放水ゲート「常用洪水吐」をダム本体に取り付ける作業を報道陣に公開した。

 多くの関係者が見守る中、全長22.5㍍、重さ約350㌧ある二つの放水管を、ダム本体の高さ約40㍍の地点に設置した。作業は18,19の両日行われた。
 
 事務所によると、本体のコンクリート打設工事の打設高は全体の3割を超えた。年度内に水位調節のための放水設備を本体に設置する。完成は2019年度の予定。

◆2017年9月20日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170920-OYT1T50043.html
ー建設進む「八ッ場ダム」、放流管設置作業を公開ー

 国土交通省八ッ場ダム工事事務所は19日、建設中の「八ッ場ダム」(群馬県長野原町)で、洪水調節機能の要となる放流管の設置作業を報道陣に公開した。

 放流管は、大雨の時に川の下流で水があふれないように、ダムから流す水の量を調節する設備の一つ。今回設置されたのは二つの放流管で、長さは約22・5メートル、重さ約350トン。放流管は、移動用のレールやローラーの上で約4か月かけて組み立てられた。

 19日は、約7トン分の力で押す油圧ジャッキを使い、一つの放流管を約3時間かけて37メートル動かし、所定の位置に設置した。

 ダムは完成すると116メートルの高さになり、現在は3割超の高さまで工事が進んでいる。今年度中には放流管がもう一つ追加され、合計で毎秒約1000トンを放流できるようにする。

 同事務所の由井修二副所長は「無事に放流管を設置できた。完成に向けて着々と工事を進めていきたい」と話していた。

◆2017年9月20日 建設通信新聞
 https://www.kensetsunews.com/web-kan/106726?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter
ー【八ッ場ダム】異工種JVの本領発揮! コンクリート打設止めずに常用洪水吐の放流管設置ー

  関東地方整備局は19日、群馬県長野原町で建設を進めている八ッ場ダムの常用洪水吐の放流管設置作業を報道機関に公開した。作業構台の上で組み立てた放流管を油圧ジャッキで押し、細心の注意を払い約3時間かけてダム堤体に移動させた。今週中に堤体と固定する作業を実施する。コンクリート打設高は堤高116mの約3割を超えた。2019年度の完成を予定する。
 八ッ場ダムは、洪水時にためた水を下流に流す常用洪水吐を2カ所設ける。常用洪水吐に設置する放流管は2条で、1条当たり長さ22.5m、重さ約350tある。工場で製作した部品を5月末に現場へ運び入れ、上流部に設けた作業構台の上で組み立てていた。
 この日は放流管1条の設置作業を公開。油圧ジャッキ2台を用いてレールとローラーに乗せた放流管を14tの力で1mずつ押し出し、作業構台とダム堤体の間に架けた仮橋を渡り、約3時間かけ約40回押して37mの距離を移動させた。
 本体工事は清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステムJVが施工を担当している。清水建設JVの担当者は「仮橋の上でぐらつかないようにするなど、細心の注意を払って慎重に作業をしている」と話した。残る1条は18日にダム堤体に移動させた。
 コンクリート打設を止めないで効率的に工事を進められるこの方法は清水建設JVの技術提案によるもので、関東整備局八ッ場ダム工事事務所の担当者は「異工種JVの本領を発揮する作業」と説明した。

◆2017年9月21日 建設通信新聞
 https://www.kensetsunews.com/web-kan/107307
ー【八ッ場ダム】プロが最先端技術や創意工夫を目の当たりに! 東京土木施工管理技士会が見学会ー

 東京土木施工管理技士会(伊藤寛治会長)は5日、国土交通省関東地方整備局が群馬県長野原町で進めている八ッ場ダム本体建設工事で会員向けの現場見学会を開いた。現場では高速施工技術「巡航RCD工法」による堤体コンクリート打設が本格化しており、参加者は現場で採用されている最先端技術や創意工夫などについて熱心に質問していた。
 見学会は土木技術者の育成を目的に毎年2、3回のペースで開いており、2017年度は2回目となる。ダムの現場見学は10年以来7年ぶりで、会員企業の30人と事務局など計約40人が参加した。施工は清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステムJVが担当し、19年度の完成を目指している。
 首都圏で唯一建設中のダム工事に対する関心は高く、57回目となる今回は「キャンセル待ちが出るほど応募があった」(事務局)と人気を集めた。開催に当たり、同会事業運営委員会の草薙史朗現場視察グループ長は「百聞は一見に如かずということで、現場では疑問点を遠慮なく質問して、知識を蓄えていただきたい」とあいさつした。

◆2017年9月27日 産経新聞群馬版
http://www.sankei.com/region/news/170927/rgn1709270066-n1.html
ー八ツ場ダム工事「正念場」 350トン放流管設置 群馬ー

  平成31年度内の完成をめざす八ツ場ダム(長野原町川原湯)の建設工事が正念場を迎えていた。膨大な水をせき止めるダム本体の“下腹部”で、洪水時に水を放流する巨大な放流管の設置作業が始まったからだ。3割ほど完成した本体の上に移動する作業は微妙なバランスを要し、「移動中に大きな地震でもきたらアウト」。最難関作業の現場を取材した。 

 放流管は、ダム本体に設置する「常用洪水吐(じょうようこうずいばけ)」の内部装置。長さ22・5メートル、高さ10メートル、重さは350トンという巨大な管で、ダムの洪水調節機能を担う最重要設備の一つだ。19日に公開されたのは、ダム本体脇の仮置き場(高さ40メートル)で組み立てた放流管を本体設置部分に平行移動させる作業。わずか37メートルの移動に作業員は細心の注意を払った。

 レール状にした巨大な鉄骨の上で、ローラーに乗せた放流管をジャッキ2台で支えながら動かしていく。傾きや蛇行は許されない。37メートルに約3時間。移設管は2つあるため2日がかりとなったが、地震もなく、作業は無事終了した。

 放流管は高さ116メートル、幅291メートルとなるダム本体の高さ40メートル付近に移設され、今後は周囲を固めていく。「ダム完成後は放流管を視認することは難しく、じっくり観察できるのは工事中しかない」という。

 八ツ場ダムは70年前の昭和22年9月、群馬を始め関東全域に甚大な被害をもたらしたカスリーン台風を教訓に計画が持ち上がった。平成26年の着工までに紆余曲折(うよきょくせつ)を経たが、現在は24時間態勢で1日450人が工事に携わる。その様子を新たな観光資源にしようと、4月からダム見学案内ツアーが始まった。コンシェルジュが案内するツアー参加者は7月に2200人、8月に1500人で、11月まで予約でいっぱいという。

 集中豪雨が各地で観測される現在、ダムが治水に果たす役割はカスリーン台風当時より高まっている。