八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

梶原健嗣氏、『戦後河川行政とダム開発』で水資源・環境学会賞受賞

キャプチャ 水資源・環境学会は、『戦後河川行政とダム開発 ー利根川水系における治水・利水の構造転換』の著者、梶原健嗣氏に今年度の学会賞を授与しました。

 梶原さんのご著書は治水・利水にわたる利根川研究をベースに、戦後の河川行政を歴史的に検討した著作です。研究に於いては八ッ場ダム住民訴訟が大きなベースになっており、住民訴訟の原告で当会運営委員でもある嶋津暉之氏の研究・収集資料に多くの知見を得ています。

 司法は八ッ場ダム事業の議論に踏み込むことなく、八ッ場ダムへの公金支出は違法だとの原告住民側の主張を退けました。しかし、水問題にかかわる多分野の研究者の視点から、総合的に検討した時には、原告の主張は十分合理的と認めることが出来たのでしょう。学会賞の受賞は、そうした証の1つなのではないでしょうか。

キャプチャ3

水資源・環境学会の2015年の学会誌には、伊藤達也氏による正鵠を射た書評が掲載されており、その一部がこちらでご覧いただけます。
 

☆ミネルヴァ書房ホームページより
 http://www.minervashobo.co.jp/book/b177683.html

【内容説明】
キャプチャ2 「無駄な公共事業」という言葉に対して、条件反射のように「利権の構造論」を思い浮かべる人が多いのではないか。しかし、それだけでは全容の解明は難しい。多目的ダム計画においては、治水と利水の絡み合いが鍵となる。本書は、技官の世界とされ、社会科学のブラックボックスだった河川・ダム政策の問題点に迫る。河川行政史を縦糸に、利根川開発を横糸に、社会学・自然科学を越境するアプローチで、ダム計画の問題点を鮮やかに描き出す。

[ここがポイント]
◎ 利水・治水の絡み合いから、多目的ダム計画の構造を描き出す
◎ 自然科学の知見も用いながら、ダム開発の非合理性を追求する

[ここがポイント]
◎ 公共事業を「もう一つの社会政策」であったと位置づけつつも、現在に適した形かどうか問いかける
◎ 工学的知見も用いながら、ダム建設の非合理性を追求する。

【目次】
序 章 ダム問題の現在
 1 防災と減災のベストミックスのために
 2 ダム問題のパラダイムシフト
 3 多目的ダムの政策的整合性
 4 本書のテーマと構成

第1章 河川行政の歩みと多目的ダム
 1 多目的ダムという構想の由来
 2 戦後の制度化と多目的ダム事業の展開
 3 新河川法の制定とその変化

第2章 水資源開発の政策的整合性
 1 水資源開発計画と水需給
 2 水資源開発の新しい論理
 3 安定供給量の論理と開発計画

第3章 利根川水系の水源開発と東京都
 1 利根川水系の戦後開発
 2 東京都の水源開発
 3 需給均衡の達成と渇水

第4章 安定供給量の確保と八ッ場ダム
 1 八ッ場ダムについて
 2 安定供給量の論理と八ッ場ダム
 3 水源開発と行政裁量

第5章 利根川水系の治水計画
 1 戦前の利根川治水計画
 2 戦後の利根川治水計画
 3 戦後・利根川治水に共通するもの

第6章 利根川治水と八ッ場ダム
 1 利根川洪水の特徴
 2 利根川洪水と治水計画
 3 利根川洪水と八ッ場ダム

第7章 治水行政を支える「科学」
 1 焦点となる基本高水流量
 2 基本高水流量とその科学的根拠
 3 科学的合理性の限界からの出発

第8章 治水行政の論理とその政策的総合性
 1 治水行政と住民の対立
 2 「地方」は,治水行政をかえるか
 3 政策の総合性はなぜ失われるか

終 章 多目的ダム計画の合理性の欠如
 1 これまでの結論の整理
 2 基本高水モデルの限界と多目的ダム
 3 変わらぬ利根川治水

参考資料/あとがき/索引