八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

水没住民の移転代替地、土壌からフッ素基準の10倍検出

 八ッ場ダムに水没する川原湯地区住民の移転代替地に有害スラグが不法投棄され、環境基準の10倍のフッ素が検出されたことが、今朝の紙面で報道されました。

右写真=2017年6月13日撮影。フッ素が検出された現場。周囲の空き地は草に覆われているが、スラグがある場所には草が生えない。
佐藤建設資材置き場 
 八ッ場ダムの移転代替地など、群馬県内の公共工事現場に、(株)大同特殊鋼渋川工場の有害スラグが不法投棄された問題は、2014年8月5日、毎日新聞が一面トップニュースで報じたことで注目されました。

 その直後に八ッ場ダム本体工事の開札を行った国交省関東地方整備局は、有害スラグ問題がダム本体工事の着工に影響を及ぼすことを避けるため、八ッ場ダム事業用地におけるスラグの調査を同年9月に開始し、10月には中間報告を発表しました。

 調査の結果、環境基準を超える六価クロムやフッ素が検出された場所では、スラグの撤去作業が行われたのですが、今回の調査では、スラグを撤去済みとされていた場所に有害スラグがありました。
 毎日新聞の報道から3年が経とうとしていますが、スラグ問題は解決に程遠い状況です。

◆2017年8月3日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20170803100580001.html
ー土壌からフッ素基準の10倍検出ー

 国土交通省八ツ場ダム工事事務所は、ダムの移転代替地工事の時に建てられた現場事務所(長野原町川原湯)の跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかったと発表した。事務所を建てる際、大同特殊鋼渋川工場から出た有害物質を含む鉄鋼スラグ混合砕石が使われていたため、県が同社に土壌の分析をするよう指示していた。

 ダム工事事務所によると、現場事務所があったのは2011~14年度で敷地面積は約1千平方メートル。事務所が建てられる際、土壌の上に安定用としてスラグが使われていた。移転工事が終了し、事務所解体に伴ってスラグも処分され、今年春に同社が分析した。

 その結果、7カ所のうち5カ所の表層で基準値を超えるフッ素が検出された。今後、表層などの土壌を撤去していくとしている。

 国交省は、代替地に移転した住民への生活用水への影響はないとしている。

—転載終わり—

調査位置図 この情報は、国交省八ッ場ダム工事事務所のホームページにお知らせとして掲載されています。

◆国交省八ッ場ダム工事事務所 最新のお知らせ
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000679466.pdf
平成29年7月28日 大同特殊鋼(株)が群馬県の指示により、鉄鋼スラグ混合砕石が既に撤去された土地で土壌分析調査を行った結果の報告を受けましたので、お知らせします。

 環境基準の10倍のフッ素が検出された場所は、川原湯地区の打越代替地で、吾妻渓谷の中を貫通している県道のトンネル出口の近くです。
 右図=国交省の「最新のお知らせ」2ページより 

 国交省八ッ場ダム工事事務所は、今回の調査について今年3月に告知しています。

◆国交省八ッ場ダム工事事務所 「最新のお知らせ」
 http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000668845.pdf
平成29年3月15日 大同特殊鋼(株)が群馬県の指示により、鉄鋼スラグ混合砕石が既に撤去された土地で土壌分析調査を行うこととなりましたのでお知らせします。
 

資材置き場のスラグ 写真右=現場では、スラグのある場所にリボンがつけてあり、地表にあるスラグが目視できる状態だった。2017年6月13日撮影。

 群馬県によれば、(株)大同特殊鋼が調査を行ったのは6月5~6日です。
 環境基準の約10倍のフッ素が検出された場所は、大同特殊鋼の有害スラグを八ッ場ダム事業で大量に使用した(株)佐藤建設工業の資材置き場の跡地です。2015年4月7~8日には、路盤材として使われた鉄鋼スラグが現場から撤去されました。その後、別の業者が工事のためにこの土地を使っていましたが、3月には国交省に返還されていたということです。
 今回の調査では、地表から3メートルの深さまで、土壌の調査を行ったことが、7月28日の国交省の「お知らせ」2ページに掲載されている調査結果の表からわかります。

 八ッ場ダム事業における有害スラグの問題は、こちらのページにまとめています。
 現状レポートー「鉄鋼スラグ問題と八ッ場ダム」