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石木ダム工事 差し止め却下、佐世保地裁

 ダム問題についての裁判で、司法が住民側の主張を認める判決を下すことは殆どありません。
 長崎県は石木ダム予定地住民、13世帯61人がふるさとに住み続けたいという素朴な願いを踏みにじって不要なダムを造ろうとしています。
 昨日、長崎地方裁判所佐世保支部は、反対地権者らが石木ダム工事差し止めを求めた仮処分申し立てについて、却下の決定を出しました。しかし、闘いはこれからです。

 関連記事を転載します。

◆2016年12月21日 長崎新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161221-00010004-nagasaki-l42
 -石木ダム工事 差し止め却下 佐世保地裁「緊急性ない」ー

石木ダムを巡る法廷闘争
 東彼川棚町に石木ダム建設を計画している長崎県と佐世保市を相手に、反対地権者らが工事差し止めを求めた仮処分申し立てについて、長崎地裁佐世保支部(渡邊英夫裁判長)は20日、「工事続行を禁じる緊急の必要性がない」として却下する決定をした。県の主張が全面的に認められ、工事によって「平穏に生きる権利などが侵害される」という反対派の主張は退けられた。

 反対地権者を支援する石木ダム対策弁護団(団長・馬奈木昭雄弁護士)は「決定の内容を精査して、今後の対応を検討する」とコメント。地権者らは福岡高裁への抗告を検討している。

 決定書などによると、反対派が侵害されると主張した▽生命・身体の安全▽人格権-などの被保全権利については、存在するかどうかの判断を回避。工事が一部着工にとどまっていることから「状況が切迫しているとはいえない」と指摘した。税金が有効、適切に利用される権利については、認めなかった。反対派が求めていた工事の必要性についての言及もなかった。

 中村法道知事は記者団に対し「県の立場が認められたものと考えている。スムーズに推進できるよう引き続き努力をしていく」と述べた。
 今年2月に仮処分を申し立てたのは約500人。これまで3回の審尋(非公開)があり、県側は反対地権者らの訴えに対し「抽象的で被保全権利に当たらない」などと反論し、申し立て却下を求めていた。

 工事を巡っては、県が付け替え道路の工事再開を試みているが、反対地権者らの阻止行動により進んでいない。反対派は国を相手に事業認定取り消しを求め、長崎地裁に行政訴訟を起こし、ダムの必要性について争っている。

◆2016年12月21日 朝日新聞長崎版
http://digital.asahi.com/articles/ASJDN4WMSJDNTOLB00J.html 
ー石木ダム工事差し止めの仮処分却下 長崎地裁支部ー

 県と佐世保市が計画する石木ダム(川棚町)について、建設予定地の地権者らが工事差し止めを求めた仮処分の申し立てについて、長崎地裁佐世保支部は20日、却下の決定を出した。

 地権者やダム建設に反対する計505人が今年2月、申し立てていた。ダム建設で地域が水没すれば豊かな自然環境や社会生活が奪われ、人格権などが侵害されると主張。一度侵害されれば回復できないとして、工事禁止の必要性と緊急性を訴えた。地権者らは昨年11月、国の事業認定取り消しを求める行政訴訟を長崎地裁に起こしている。

 石木ダムは、2010年に付け替え道路工事を着工したが住民との話し合いのため中断。14、15年と一時的に再開したものの、住民らが工事現場出入り口で反対を続け、実質的な工事は進んでいない。

 決定では、道路工事の一部しか着工されていないことに触れ、「権利侵害が差し迫り、工事続行を禁止する緊急の必要性があるとはいえない」などとした。

 決定を受け、県は記者会見し、「工事を続行していいと判断してもらった。(反対住民は)司法判断を受け止め、妨害行為をやめていただけると信じている」と話した。

 一方、申立人の一人で建設予定地に暮らす岩下すみ子さん(68)は「予想していた内容。次の運動の準備をしたい」と話した。「ダムは若い人の借金を増やすだけ。県は考えを改めるべきだ」と語った。(八尋紀子、福岡泰雄)

◆2016年12月20日 毎日新聞
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161220-00000094-mai-soci
ー<長崎・石木ダム>工事差し止め仮処分却下 地裁佐世保支部ー

 長崎県川棚町に県と佐世保市が建設を計画している石木ダムについて、水没予定地の反対派地権者と支援者ら約500人が県と同市を相手取って工事差し止めを求めた仮処分申請で、長崎地裁佐世保支部(渡辺英夫裁判長)は20日、申し立てを却下した。
 渡辺裁判長は「工事を進めることで、地権者らの生命や身体の安全、平穏な生活を営む権利などが侵害されるという具体的な証明はない」とした上で「工事の続行を禁止する緊急の必要性は認められない」と判断した。【浅野孝仁】

◆2016年12月20日 テレビ長崎
 http://www.ktn.co.jp/news/20161220104263/
 ー石木ダム仮処分申し立てを却下ー

 東彼・川棚町の石木ダム建設をめぐり、計画に反対する地権者が求めていた関連工事を差し止める仮処分命令の申し立てを、裁判所は、20日、却下しました。地権者は、冷静に受け止めていて、今後もダムの必要性への説明を、県に求めるとしています。

 地権者 松本好央さん「却下されたことには残念だと思う」東彼・川棚町の石木ダム建設をめぐっては、県が関連する道路の工事を進めています。しかし、ダムの建設予定地で暮らす地権者は、必要性に疑問があるとして、計画に反対しています。

 そして、地権者やその支援者など505人は、ダム建設に関連する工事については、豊かな自然の中で生活する権利などが奪われるとして、工事を差し止める仮処分を求めていました。

 これに対し長崎地裁・佐世保支部は、工事の続行を禁止する緊急の必要性はないなどとして、20日付けで、申し立てを却下しました。

 長崎県 中村知事「こうした判決については、これまでの県の主張が認められたものと、この訴訟結果を十分にご理解いただいて、納得いただいた上で、工事の進捗にご理解をいただきたい」

 地権者 岩本宏之さん「明け渡しの裁決が出ると思う。家も土地も。しかし、我々はそんな気持ちはない。とことん戦う。それだけ多くの人を犠牲にするような世の中は、おかしい」

 地権者 松本好央さん「しっかり、自分たちのやっていること、自分たちの思いを伝えていきたい」

 県は、21日以降、ダムの建設予定地を訪れ、地権者に決定内容を説明したいとしていますが、

 地権者側は決定を不服としていて、今後の対応を協議しています。

◆2016年12月20日 NHK長崎放送局
 http://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/5035426161.html?t=1482295387746
 ー石木ダム仮処分申し立て却下ー

 長崎県と佐世保市が川棚町に計画している石木ダムをめぐり建設に反対する地権者が、工事の禁止の仮処分を求めた申し立てについて、長崎地方裁判所佐世保支部は、「住民の生命、身体の安全が侵害されることが具体的に証明されていない」として、退ける決定を出しました。

 長崎県と佐世保市は佐世保市の水道用水の確保などを目的に、川棚町に石木ダムの建設を計画しています。

 これについて、ダムに反対する地権者など、505人はダムの工事により生命、身体に対する危険におびえず、平穏に生きる権利が、侵害されるなどとして県と佐世保市に工事の禁止を求める仮処分をことし2月に長崎地方裁判所佐世保支部に申し立てていました。

 20日の決定で長崎地裁佐世保支部の渡邊英夫裁判長は、「生命、身体の安全が侵害されることが具体的に証明されていない。また、工事を禁止しなければ、権利の侵害を防ぐことができない緊急性もない」として、申し立てを退けました。

 長崎県の中村知事は、「県の主張が認められたものと思っている。石木ダムは必要不可欠だという考えは変わらず、事業がスムーズに進むよう、地権者の方々などに理解していただきたい」と話していました。

 これについて、佐世保市の朝長則男市長は、「裁判所の判断が、今後の事業の着実な進展につながっていくものと期待しています」というコメントを出しました。

 一方、地権者側の代理人の平山博久弁護士は、「決定内容を精査して、今後の対応を検討する」としています。

 石木ダムをめぐっては、このほかに、地権者などが、国を相手どって、憲法で保障されている生存権が損なわれるなどとして、ダムの事業認定の取り消しを求める裁判を起こしているほか、逆に、県が、地権者などを相手取って、ダム建設に伴う道路工事を妨害しないよう求める仮処分を申し立てています