八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムに沈められる柱状節理と立野ダムで「破壊予定」の阿蘇の柱状節理

川原湯岩脈説明板 八ッ場ダム事業では1934年に国が天然記念物に指定した柱状節理「川原湯岩脈」や貴重な枕状溶岩がダムに沈められます。

写真右=旧国道沿いに掲げられていた川原湯岩脈の説明板と、白い手すり越しに見える臥龍岩。ダム予定地を流れる吾妻川に龍が横たわるようにある。
 旧国道のこの地点は2014年11月より本体工事の車両専用道となり、一般車両は通行止め。

 ★文化遺産オンライン
 http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/160798 
 川原湯岩脈(臥龍岩および昇龍岩) かわらゆがんみゃく(がりゅうがんおよびしょうりゅうがん)
川原湯岩脈の記録保存
 国交省はこれらの貴重な自然遺産を「記録保存等によって対応」すると説明しています。

写真右=2015年1月24日、ダム予定地を抱える長野原町で国交省が開催した八ッ場ダム事業認定の説明会における国交省のスライドより。

 事業認定とは、八ッ場ダム事業の公共性を認定することで、水没予定地などの土地や家屋を住民から強制収用することを可能にするための手続き。説明会の冒頭、国交省は八ッ場ダム事業の公共性を説明する中で、ダムに沈める川原湯岩脈についての対応を説明した。

 阿蘇・立野渓谷の柱状節理が破壊されている問題で、毎日新聞が詳しい記事を載せました。
 国交省はこの問題がクローズアップされることで、立野ダムの反対運動が盛り上がることを懸念してか、立野ダム工事事務所のホームページで記事掲載の三日後に以下のように反論をアップしています。八ッ場ダム事業についての国交省の説明と同様、環境に十分配慮しているという説明です。

 平成29年9月16日付毎日新聞(熊本版28面)別の柱状節理も「破壊」 阿蘇・立野峡谷 国、ダム建設で数年後との報道について(平成29年9月19日)
 http://www.qsr.mlit.go.jp/tateno/topics/data_file/1505798465_0.pdf

 市民団体「阿蘇:立野ダムによらない自然と生活を守る会」は、柱状節理の破壊に関して、国交省(9/24)と熊本県(9/27)にそれぞれ公開質問状を送付しました。9月30日には熊本市で学習会、10月28日には県民総決起集会「阿蘇ジオパークを立野ダムでこわさないで~工事は一旦中止し県民に説明を」を開催するとのことです。詳しい情報は下記ブログをご覧ください。

 「阿蘇:立野ダムによらない自然と生活を守る会」
 http://stopdam.aso3.org/
 
 国交省九州地方整備局は流域住民の反対運動によって熊本県の川辺川ダムを建設できずにいます。なんとしても立野ダム事業は進めたいと、昨年の熊本地震で大きく崩壊した予定地で本体工事の準備を進めていますが、無理に無理を重ねているのは明らかです。

◆2017年9月16日 毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170916-00000005-mai-soci
ー <阿蘇・立野峡谷>別の柱状節理「破壊予定」 ダム建設でー

 世界ジオパークに指定されている熊本県・阿蘇の立野峡谷の柱状節理(ちゅうじょうせつり)が国の復興工事で破壊された問題で、峡谷内にある別の柱状節理も国が進めるダム建設で数年後にほとんどが削り取られる予定であることが分かった。

 破壊された柱状節理は白川の支流、黒川に架かり、熊本地震で崩落した阿蘇大橋の600メートル下流の右岸にあった。この現場の約1キロ下流の白川右岸にも高さ約60メートル、幅約300メートルにわたって溶岩が柱状に縦に割れた柱状節理がある。板状に横に割れた「板状節理」と交互に重なっている。

 この場所は国が進める立野ダム(同県南阿蘇村、大津町)の建設予定地で、国土交通省九州地方整備局(九地整)が設置した有識者会議「熊本地震後の立野ダム建設に係る技術委員会」に国が示した資料によると、本体工事に伴い幅約200メートル、高さ約90メートル、厚さ最大約40メートルにわたって削りコンクリートで固める予定になっている。

 破壊されたものとダム予定地の柱状節理は立野峡谷内でも特に規模が大きい。

 阿蘇ジオパークガイド協会員の中島一美さん(69)は「破壊されるのは非常に残念」と語る。九地整立野ダム工事事務所は「柱状節理の掘削を最小限にするなど十分配慮する」としている。【福岡賢正、中里顕】

◆2017年9月20日 熊本県民テレビ
http://www.news24.jp/nnn/news8687871.html
ー「復旧か景観か」柱状節理掘削(熊本県)ー

 熊本地震で崩落した阿蘇大橋の架け替え工事に伴い、立野峡谷の独特の景観を形作る「柱状節理」の一部が削り取られ、さらに別の場所の柱状節理も削り取られる予定であることが分かった。これについて熊本県の蒲島知事は掘削は最小限にとどめることを国に確認したとしている。「柱状節理」はマグマが冷え固まる際に入る柱状の亀裂で、阿蘇の景観の一つとなっている。削り取られていたのは、新たな阿蘇大橋の架け替え予定地にあたる黒川の右岸。国交省熊本復興事務所によると、工事用道路を整備する際に柱状節理を含む高さ70メートル、幅110メートルの川岸を削ったという。さらにこの工事現場からおよそ1キロ下流の白川の右岸にある柱状節理も、国交省が計画している立野ダムの建設予定地になっていて今後、幅200メートルほどにわたって削り取る予定であることがわかった。削った後はコンクリートで固める計画だ。国交省立野ダム工事事務所は「立野ダム建設は法令を遵守し自然環境の保全に十分配慮して事業を進める」としている。これについて熊本県の蒲島知事は「柱状節理の取り扱いについては、必要最小限の掘削が生じること、それ以外の箇所では柱状節理の露頭を掘削しないことを改めて国に確認した」とするコメントを出した。立野峡谷はユネスコが認定する阿蘇ジオパークの構成資産のひとつとなっていて、来年再審査が予定されている。立野峡谷の保全活動などに取り組む市民団体の中島康代表はKKTの取材に対し、「市民への説明もなくジオパークの美しい景観を壊してまでダムを作る必要があるのか」と話している。