八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

鹿島建設、ダムの型枠作業の自動化技術を開発

 鹿島建設によるダム建設の新たな技術について報道されています。
 鹿島建設のサイトに、記事の情報源が掲載されています。
 https://www.kajima.co.jp/news/press/201711/29c1-j.htm
 ーダム堤体で幅15mのスライド型枠「全自動化」に成功ー

 八ッ場ダムの本体工事は清水建設JVが受注し、清水はテレビや営団地下鉄で大掛かりなPRを行っていますが、実際に使われている技術は鹿島建設によるものです。
 国交省関東地方整備局は鹿島建設の技術力を高く評価しており、八ッ場ダム建設に鹿島建設の技術を使うことは開札前から織り込み済みでした。
 プレスリリースにあるような自動化技術の開発が進むと、ゼネコンがダムをもっとつくりたくなってくるように思いますし、また、ダム建設に関わる業界の裾野が狭くなって、儲かるのはゼネコンだけということになりかねません。

◆2017年11月30日 建設通信新聞
https://www.kensetsunews.com/archives/132359
ーダム堤体移動/スライド型枠 全自動化/鹿島 端末でミリ単位調節 ー

 鹿島は、ダム現場でクレーンを使用せずに型枠を移動させるスライド型枠の「全自動化」に成功した。コンクリート打設後の脱型から次の打設個所へのスライド、セットまでの作業をタブレット端末の指示だけで1人の作業員が実施できる。 今回開発したシステムでは、6基の電動モーターを活用し、幅15mの大型鋼製型枠(ダムフォーム)の脱型、スライドのための水平移動、次の打設個所でのセットといった作業の全自動化を実現した。作業員はタブレットを操作するだけでスライドのズレを防止する同調制御や型枠セット時の位置合わせをミリ単位で調節できる。
 既に北海道三笠市で施工中の重力式コンクリートダム「新桂沢ダム堤体建設工事」に適用し=写真、これまで5人の作業員で280分の作業時間が必要だった型枠の脱型からセットまでの一連の作業を、1人の作業員が180分で完了させた。開発に取り組んだ土木管理本部土木工務部ダムグループの岡山誠担当部長は「ダムのリニューアル工事など活用の余地は大きい。生産性を向上し、将来的な時短や休日確保につなげたい」と語った。
 ダムなどの大型構造物を施工する際、従来のコンクリート打設作業ではとび工やクレーンオペレーターなど最低5人の特殊作業員がクレーンで型枠をスライドさせながら建て込む作業が不可欠だった。高所作業となることから墜落災害や吊り荷の飛来落下といった安全面のリスクもあり、技能労働者不足に対応するためには大幅な省人化と安全性の向上が課題となっていた。
 そこで鹿島は5月にDoka Japan(ドカ・ジャパン)社製のセルフクライミング装置に大型の型枠部材を組み合わせた型枠機構を開発し、大分市の「大分川ダム建設工事」に導入した。同現場ではクレーンを用いない型枠の一括スライドには成功していたものの、脱型や型枠のセットなどで人力の作業が必要で、さらなる効率化に向けた「全自動化」が求められていた。
 今後はさらなる施工の効率化に向け、2018年の春ごろから「新桂沢ダム堤体建設工事」で幅60mの型枠作業の全自動化に着手する。また現段階では人の手で実施している型枠セット時の測量作業も自動化していく方針だ。岡山担当部長は「同じ形状で高さがある構造物に自動化システムは大きな力を発揮する。ダムだけでなく他の大型構造物にも幅広く展開していきたい」と語った。

◆2017年12月4日 日経コンストラクション
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2421384004122017000000/
ー鹿島がダムの型枠作業を自動化、1人で対応可能にー

 鹿島はダムのコンクリート打設で、一連の型枠作業を全自動化するシステムを開発した。国土交通省北海道開発局が発注した新桂沢ダムの堤体建設工事で、コンクリートく体の増し打ちに適用。作業員は、タブレット端末から指示するだけでよい。

全自動化した型枠を使ってコンクリートを打設している。黒く見えるのは既設のダムく体(写真:鹿島)

 ダムのようにコンクリートを高く打ち継ぐ場合、工事の進捗に沿って型枠を上方に盛り替える。従来工法では幅3mに分割した型枠をクレーンで吊って移動させ、溶接などでく体と固定していた。作業員が墜落したり、ダンプトラックとクレーンが交錯したりする危険性があった。

 これに対して、同社は2017年5月に油圧ジャッキで上方にスライドできる幅15mの型枠を開発済みだ。ベースにしたのは型枠メーカーのDoka(ドカ)が販売する垂直昇降可能なセルフクライミング装置。鹿島はダム表面の斜面に沿って可動するように装置を改良し、国交省九州地方整備局が発注した大分川ダムの建設工事で、洪水吐き減勢工のコンクリート壁の打設に使用した。クレーン作業が不要になり、盛り替えに必要な作業員の数は5人から3人に減った。

 さらなる省力化に向けて同社が着目したのは、人力作業に頼っていた脱型と位置合わせだ。タブレット端末のタッチ1つで脱型できるように、スライド式の型枠に6つの電動ジャッキシステムを組み込んだ。各システムはそれぞれ、スクリュージャッキとギアドモーターで構成される。

斜材の単管の先に付くのがスクリュージャッキ。さらにその先がギアドモーターだ。タブレットを操作すると一斉に動き出す(写真:鹿島)

 タブレット端末で脱型を指示すると、スクリュージャッキが型枠をコンクリートから剥がし、ギアドモーターがさらに壁面から引き離す。油圧ジャッキを使って上方にスライドした後は、脱型と逆の動きで次の打設位置にセットする。タブレット端末の操作で、位置合わせは1mm単位で微調整できる。ただし、型枠のセットには作業員が測量して位置出しをする必要がある。

 開発した型枠の高さに適用サイズの制限は無い。新桂沢ダムでは1層当たりの打設高さが1.5mなので、高さ3mの型枠を使用した。

ステップ2とステップ5が新たに開発した動き。タブレット端末の操作に従って、電動ジャッキが脱型や位置合わせをする(資料:鹿島)

型枠の位置合わせは重要な作業。タブレット端末を使ってミリ単位で調整する(写真:鹿島)

■ダムのリニューアル工事の需要を見込む

 脱型と位置調整の自動化によって、型枠1つの盛り替えに要する時間は、従来工法に比べて100分短縮でき、180分となった。必要な作業員はタブレット端末を操作する1人だけだ。

作業時間は、脱型から次の打設位置への型枠セット・位置合わせまでにかかる時間を示す(資料:鹿島)

 鹿島は今後もダムのリニューアル工事などを中心に需要があるとみて、型枠の幅を15mから60mに大型化するほか、残る人力作業である測量も自動化することを目指す。複数の現場で適用すれば、型枠を再利用するなどして従来工法に比べてコストを削減できる見込みだ。

 同社の土木管理本部土木工務部の岡山誠担当部長は、「自動化が進めば、週休2日などの働き方改革も進む」と意気込む。一方、新桂沢ダムの現場でとりわけ好評だったのは、安全性の向上だという。「自動化で安全性が高まることは、業界のイメージアップの効果もある。新しい技術が建設業の入職者の増加につながってくれると嬉しい」(岡山部長)  (日経コンストラクション 夏目貴之)