10月3日、群馬県議会・産経土木委員会で加賀谷富士子議員(リベラル群馬)が八ッ場ダム本体工事現場を抱える川原畑地区の発掘調査について質問しました。
 八ッ場ダム予定地には数多くの遺跡があり、八ッ場ダム事業の現計画では発掘調査費用として約165億円が予定されています。(当初計画では約66億円だったが2008年の計画変更で約98億円に増額され、昨年の計画変更でさらに約67億円増額)
 
 質疑の概略をお伝えします。

◆石畑Ⅰ岩陰遺跡の発掘調査について

ダム本体左岸・本体のライン 縄文時代の貴重な遺跡として注目される石畑岩陰Ⅰ遺跡は、名勝・吾妻峡にあります。現在は八ッ場ダム本体工事現場となっており、2年後(2019年10月)に開始される予定の試験湛水が始まると水没します。しかし、遺跡の主要部分である岩陰のある岩山には、現在、本体工事のベルトコンベヤーが設置されており、発掘調査を行うことができません。(写真右)
 遺跡は岩陰だけでなく、岩山に隣接した旧吾妻線の軌道部分、旧国道145号線、旧国道を挟んで吾妻川の谷側にある駐車場部分に広がっています。旧国道は現在、本体工事用車両の専用道路となっており、名勝・吾妻峡十勝の一つ「白糸の滝」の駐車場跡も工事車両の駐車場として使われていますが、水没する遺跡の発掘調査期間は限られています。
キャプチャ 群馬県埋蔵文化財調査事業団が今年6月から7月にかけて、駐車場跡の発掘調査を行ったところ、岩々に囲まれたわずかな緩斜面の土地に、天明三年(1873)の浅間山噴火で発生した泥流に埋没した畑が出土し、その下層から土師器や縄文土器、石鏃などの遺物も検出されたということです。
(写真右=群馬県埋蔵文化財調査事業団ホームページ 平成29年6月調査より)

今回の質疑で確認されたこと
*石畑Ⅰ岩陰遺跡では、今年6月、7月に岩陰に近い本体工事用車両の駐車場部分で発掘調査を行ったが、調査状況と今後の予定についての質問に対して、県は具体的なことは何も答えず、試験湛水までに調査を完了予定であると説明するのみであった。
(写真=旧国道の左側に現在発掘調査を行っている駐車場部分が見える。右手の岩山に遺跡の中心部分の岩陰がある。2014年11月撮影)

〇加賀谷議員
「八ッ場ダム水没予定地域の遺跡は、縄文時代から江戸時代にかけて、様々な時代の遺跡が重層的にある。
 発掘調査の現場で県の埋蔵文化財調査事業団の担当者に説明を受けたが、江戸時代・天明3年の遺跡は、浅間山の噴火によって突然発生した泥流に埋もれたものだという。泥流が流れ下った吾妻川流域のこの地域では、泥流下に当時の人々の生活の跡がそのまま残されており、本当に貴重であるという話を聞いた。
 八ッ場ダム本体工事現場には縄文時代の石畑Ⅰ岩陰遺跡がある。この遺跡には縄文人が煮炊きしたあとにできた灰層が4mもあり、群馬県史にも取り上げられている。
 考古学会でも発掘調査の行方が注目されているというが、調査状況と今後の予定はどうなっているのか?」

白糸の滝の脇の線路〇飯島・特定ダム対策課生活再建対策主監
 「石畑Ⅰ岩陰遺跡については、国より今年6月から発掘調査を開始して、現在、鋭意調査中であると聞いている。また、発掘調査は試験湛水までには完了予定であると聞いている。」

◆東宮遺跡の発掘調査について
 石畑Ⅰ岩陰遺跡の上流側にある東宮遺跡は、川原畑地区の住民の居住地であったところにあります。江戸時代・天明の浅間山大噴火によって発生した泥流に埋もれた東宮からは、当時の村人の住居跡や生活用具などがきわめて良好な形で出土しており、注目されてきました。
 発掘調査は現在、天明の遺跡の下層に埋もれていた縄文時代の遺構・遺物を対象に進められ、重要な発見が相次いでいるとのことです。
 本体工事現場に近い川原湯地区、川原畑地区の水没住民は昨年度中にすべて移転を余儀なくされ、今春から両地区の水没予定地は立ち入り禁止になっています。川原畑地区の吾妻川沿いには旧国道があり、2014年11月に一般車両通行止めの措置が取られて以来、工事車両専用道路となっています。

写真下=湖面橋・八ッ場大橋から上流を望むと、吾妻川(左手)に沿って走る旧国道の右手に、表土が剥き出しになっている東宮遺跡が見える。吾妻線の廃線跡に八ッ場ダム本体工事の骨材を運ぶ茶色いベルトコンベヤーが設置され、遺跡の周辺で弧を描いている。東宮遺跡はベルトコンベヤーの両側に広がっており、右下方に発掘調査のプレハブ事務所や多くの作業員の駐車場が見える。
東宮遺跡の発掘調査

今回の質疑で確認されたこと
東宮遺跡*国交省は東宮遺跡の見学を議員にも地元住民にも許可していない。加賀谷議員は、群馬県が国と交渉して見学会を開いてほしいと県に強く要望したが、県からの回答はなかった。
*国交省が東宮遺跡の見学を許可しない理由は「ダム本体工事用の大型車両が頻繁に通行しているため、安全確保の観点から」と説明されているが、大型車両が頻繁に通行しているわけではない。また、大型車両が通行しているのは旧国道であり、発掘調査現場ではない。遺跡へ行くにも旧国道を利用する必要はなく、町道を使うので、見学禁止の本当の理由は安全確保ではないと考えられるが、群馬県は国の説明を繰り返すのみであった。

〇加賀谷議員
 「東宮遺跡では縄文時代の住居や土器などが出土しているということだが、発掘調査の成果はどうか?」

キャプチャ〇飯島生活再建対策主監
 「東宮遺跡については、国より、平成19年11月から発掘調査を開始して、現在鋭意調査中と聞いている。県教育委員会・文化財保護課によれば、これまでの調査で天明三年の浅間山噴火で埋没した建物や畑跡などが発見されている。今年度は、縄文時代後期の列石遺構、配石遺構、住居等を調査していると聞いている。」
(写真右=群馬県埋蔵文化財調査事業団HPより、平成29年9月調査群馬県埋蔵文化財調査事業団HPより、平成29年9月調査)

〇加賀谷議員
 「東宮遺跡は貴重な遺跡であるが、国交省が遺跡のある水没予定地をを立ち入り禁止にしているので、地元議員ですら見学できない。県が国と交渉して、見学会を開いたらどうか。」

〇飯島生活再建対策主監
 「県・文化財保護課より、東宮遺跡のある所は八ッ場ダム建設工事の”立入禁止区域内”であり、ダム本体工事用の大型車両が頻繁に通行しているため、安全確保の観点から、一般者の見学はできないと聞いている。」

〇加賀谷議員
 「水没予定地の上流側にある縄文遺跡(居家以岩陰遺跡)では、國學院大學が八ッ場ダム事業とは別に発掘調査を行っている。この遺跡では昨年、埋葬人骨が6体見つかり、今年に入ってさらに4体出土したという。約8,300年前の日本最古級の埋葬人骨であるという。
 そこからあまり離れていない東宮遺跡であれば、文化財に興味のある方はぜひ見てみたいだろう。地元の方も、貴重なものが地元にあれば見てみたいと思うだろう。
 私が視察で東宮遺跡の近くに行った時は、たまたまなのかわからないが、ダンプトラックが通っていなかった。工事車両が通る合間でもよいので、ぜひ見学会を開いていただきたい。東宮遺跡も水没すると見られなくなってしまうので、文化財保護課と連携して、国交省に見学会ができるように要望してほしい。」