10月12日の群馬県議会本会議では、国交省による八ッ場ダムの5度目の計画変更案(事業費の再増額)への同意案(148号議案)や、ムダな大型公共事業として疑問視されている高崎のコンベンション施設の予算(139号議案)などについての採決が行われました。

 いずれも自民党、公明党などの賛成多数により可決されましたが、リベラル群馬(民進党議員が主体)、共産党の議員らは両議案に反対しました。
 八ッ場ダムの計画変更同意案に反対した議員は、リベラル群馬の7議員(黒沢孝行、角倉邦良、あべともよ、後藤克己、小川晶、本郷高明、加賀谷富士子)と共産党の2議員(伊藤祐司、酒井宏明)でした。採決に参加した議員は48議員でした。

 リベラル群馬は同意案の修正案として、群馬県が国に八ッ場ダムの今回の計画変更案への同意を伝える際は、今後の八ッ場ダム基本計画の変更による事業費の増額やダム完成後の追加工事費については、法律改正等により全額を国の負担で行うよう求めるなどの付帯意見を追加することを提案しましたが、共産党は同意を前提とした修正案には応じられないとして、自民党などと共に修正案を否決しました。また、リベラル群馬の井田泰彦議員は計画変更の同意案とリベラル群馬による修正案のいずれにも賛成しました。

 これらの議案についての討論は、群馬県議会ホームページのインターネット録画で視聴できます。
 http://www.gunma-pref.stream.jfit.co.jp/?tpl=gikai_result&gikai_day_id=281&category_id=12&inquiry_id=3772

 両議案についての討論の要旨をお伝えします。

◆八ッ場ダム計画変更同意案の修正案についての提案説明ー角倉邦良議員(リベラル群馬)
 私たちリベラル群馬は、八ッ場ダムに様々な問題があることを指摘し続けてきました。
 一つは水余りの現実、そして洪水にはダムより堤防強化をと訴えてまいりました。八ッ場ダムにおける水没住民の代替地の安全性についてもたびたび指摘させていただいてきました。
 148号議案は、八ッ場ダム建設のため、720億円の更なる増額を求めるものとなっております。群馬県の負担増は33億8,000万円余とされ、(これとは別に)藤岡市は3億6千万円の増額です。
 八ッ場ダムは2004年に2110億円から4600億円に増額され、大きな論議を呼びました。また前回の基本計画変更(2013年、工期の3度目の延長)の際には、大沢知事も増額は認められないとの発言をしておりました。
 今回、知事は、「熟慮に熟慮を重ねた結果」、国交省の提案を受け入れたのだとの説明がありました。しかし、本会議や委員会での質疑を聴いていると、今後さらなる増額があった場合には、本県は増額を拒否する論拠がないように受け止められる答弁でありました。
 生活再建のため、ダムの早期完成を望む住民がおります。群馬県は今回も含め、更なる増額要請があった場合に、増額を認めないとの立場を本当にとれるのでしょうか。さらに、代替地の安全性の問題であります。今後ダムの試験湛水により、地すべりが生じたり、あるいはダム完成後に地すべりが生じた場合の負担は、(地すべり対策により)利益を受ける地元県に大きな負担がかかってくる、そういった可能性があることが県議会の質疑でも明らかになってきています。
 そこで、私たちリベラル群馬としては、今回の増額も含め、増額負担が生じた場合には、国が全額負担すべきとの修正案を提案させていただきます。第148号議案に4項と5項を追加いたします。
 4項―今回の変更も含め、今後の八ッ場ダム基本計画の変更による事業費の増額や事業完了後の追加工事等における追加事業費が生じた場合には、法律改正等により全額国の負担責任で行い、各都県に負担を強いないようにすること。
 5項―今後、どのような状況が生じても、更なる県費負担が生じる計画変更には本県は同意しないことを申し添える。以上です。

◆コンベンション予算の修正案についての提案説明ー小川晶議員(リベラル群馬)
 139号議案の修正案を提案させていただきます。
 139号議案は、コンベンション推進費の中の施設設計の委託料1億7千500万円、および開発区域設計のための測量等の費用749万3千円を総務費の総務管理費に組み替え、さらには債務負担行為補正のうち、コンベンション施設実施設計業務委託契約の平成29年度分についても同時に減額修正をするものです。
 私たちリベラル群馬は、第一回定例会におきましても、コンベンション施設の基本設計に関して修正案を提出しておりますが、今議会においても修正案を提出するのは、依然としてコンベンション施設建設についての疑問が解けないからであります。
 そもそもこのコンベンション施設の建設に関して、県民の理解がどれだけ熟しているのでしょうか。平成21年度のアンケート調査では、コンベンションという選択肢は少数意見であったこと、またこれまでの経過の中で県内の自治体の首長からも慎重な意見が出ていること、そして県が行ったパブリックコメントにおいても相当数の反対や慎重意見が寄せられたこと、これらを踏まえると、県民の理解が十分深まったとは言えないと思います。
 280億円の税金が投入され、さらには維持管理費にも年間数億円がかかると言われているコンベンション施設の建設に当たっては、県民の声を丁寧に聴いて、県民の納得、理解を得られる努力をするべきであるにもかかわらず、残念ながら、県民アンケートを含め、より広く、より多く県民の率直な意見を聴くプロセスは、これまで行われてきませんでした。
 なぜコスト高のこの時期に建設を急がなければならないのか、採算は本当にとれるのか、県内に今ある施設へのコンベンション誘致の経験を積む方が先ではないのか、こういった部分に対する県民の理解が図られているのか、ということについては、いまだ不十分と言わざるをえません。
 更にはこの問題は、われわれ県議会のチェック機能が問われる問題であります。今まさに東京都においては豊洲市場、あるいはオリンピック施設の整備において、当初の予定より建設費用が何倍にも膨れ上がり、大きな問題となっております。公共施設の建設は往々にして費用が増加しがちであるということを踏まえた上で、税金の使い道について、多くの国民が関心を寄せている今こそ、われわれ群馬県議会としても、県民に対してしっかりと責任が果たせるように、更なる慎重な議論を重ねる必要があると考えます。
 コンベンション施設の基本計画には、この施設はこれから50年の群馬県をはばたかせる”都市装置”とうたわれておりますが、長期の使用が予定されている公共施設の運用コスト、維持管理費は建設コストの数倍かかると言われています。そして、そのすべての結果は地方自治体の住民、すなわち県民が負うことになります。このようなきわめて重要な意思決定は、単なる多数決によるのではなく、様々なデータを検証し、違う意見も取り入れて良識的に判断することが必要です。一度決めたことだから、既定路線だから何も考えなくてよいということではなくて、何度でも何度でも立ち止まって、本当に県民のためになるのかどうか、議会として問い続けることが求められているのではないでしょうか。
 今後の検討の中で、当初の建設費用の計画の280億円より建設費が増加するということになった場合には、計画そのものを容認できないということを改めて申し添えさせていただきます。

◆コンベンション、八ッ場ダム等についての討論ー伊藤祐司議員(日本共産党)
 日本経済はその6割を占める個人消費が戦後初めて2年連続のマイナス、家計消費も12カ月連続のマイナスが続いています。安倍総理が言い立てる、経済の好循環が生まれるどころか、アベノミクス不況とも言うべき状態です。政府の経済対策の中身は、リニア新幹線への巨額の公的資金投入をはじめ、大型開発へのばらまきによる失敗が証明済みの施策ばかりです。
 一般会計補正予算は、そのバラマキの受け皿となるものです。130億円余りの大型補正のうち、公共事業費が98億円、その中身も、わが党がかねてから批判してきた不要不急の幹線道路建設などが大半を占めます。このような旧態依然としたやり方では、県民の家計を温めることは到底できません。国の悪政下請けの、公共事業中心の補正に反対します。
 この補正予算には、赤城山の木質バイオマス発電に絡み、木質チップの移送車両2台分の2,200万円が計上されています。同計画には放射性物質の拡散や環境の悪化を心配する周辺住民からの広い反対の声があがり、1万2千人の反対署名も集まっています。事業体である東電の子会社は、住民への説明責任を果たしているとはとても言えません。住民からは県に対して、環境影響評価などで質問書がきているのに、係争中を理由に門前払いをしています。県は一体誰の味方なのか、少なくとも住民の納得のゆく説明が得られるか、妥協点が見いだされるまでは、そうした施設は造らせるべきではないし、補助金などは先延ばしにするのが当たり前ではないでしょうか。
 また同補正には、高崎競馬場跡地への、コンベンション施設実施設計の委託費が盛り込まれています。先日、千葉県にある幕張メッセが東京オリンピックに向けて160億円の大改修に入ることがニュースとして伝わりました。県と千葉市の事業だそうです。幕張メッセは東京ビッグサイトなどに需要を取られて、稼働率4割台、赤字の穴埋めのために県と千葉市が364億円も支出しています。高崎よりはるかに条件がよい場所でも苦戦しているんです。
 高崎市が8月に行ったコンベンション施設建設に伴う都市計画の変更の公聴会では、交通渋滞や環境への悪化を懸念して9人の市民が意見を述べましたが、全員がコンベンション施設反対の立場でした。そうした声に耳を貸さず、オリンピックまでに建設という件のやり方は拙速そのものです。施設建設に向けて闇雲に進むのではなく、一旦立ち止まり、県民の意見をよく聴き、経済情勢や需要をよく見極め、コンベンション誘致の経験をちゃんと積んで、本当に必要な施設なのかを検証する、それができる最後のチャンスが今です。実施設計を急ぐ補正には反対です。
 一方、リベラル群馬から出された、同設計の委託費を削り、総務管理費の中に組み入れる修正案は、わが意を得たり、大賛成であります。・・(中略)・・・

 第148号議案は八ッ場ダム建設に関する基本計画変更の承認案です。3年前、前回の基本計画変更に当たって私たちは、現地の地質の脆弱性や東電への減電補償などに触れ、事業費の増額は必至の情勢であると指摘しました。今回の変更は私たちの指摘通りであります。知事は「熟慮に熟慮を重ねた」と言い、当局は1都5県で検証したと言いますが、検証になっていません。11箇所必要とされた地すべり対策が6箇所に減らされました。試験湛水ですべれば工期は数年単位で延び、莫大な事業費がまたかかるでしょう。東電・松谷発電所の水利権更新で八ッ場ダムの目的から外れたはずの「吾妻渓谷の流量維持」は宙に浮いたまま、東電の減電補償の金額はケタが違う等々、検証事項はいくつもあります。八ッ場ダムは治水面でも利水面でも必要性が薄れるばかりか、その建設費が他の治水事業の足かせとなり、水道料金値上げの原因となっています。そもそも災害を誘発させかねないダムです。計画変更には同意できません。
 なお、リベラル群馬からは、これ以上の県費負担は応じられない旨を記す変更案が出されています。国はこれまでも必要な工事を隠し、小出しに計画変更して参加自治体に負担を強いてきました。こうした変更案は許せない趣旨の修正案は理解できます。しかし、基本計画承諾を前提とした修正であり、ダム建設に反対する立場から残念ですが同意できません。(後略)

◆八ッ場ダム計画変更同意案についての賛成討論ー井田泉議員(自民)
 八ッ場ダム建設事業におきましては、平成21年、旧民主党に政権交代がなされ、当時の前原国交大臣による突然の中止発言により、ダム建設を受け入れ、生活再建事業に望みをつないできた地元住民は奈落の底に突き落とされました。その後の粘り強い交渉により、時の政権もダム建設の必要性を認識するに至り、再度ダム建設が決定するという経緯があったわけであります。あの騒動さえなければ、今般このような議案を審査することもなかったかと思うと、我々も大変複雑な思いがするわけです。(注1)
 今回の事業費増額については、貴重な本県の財源を使うわけですが、地域住民の皆様にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないとの大沢知事の苦渋の決断と受け止め、わが会派といたしましても、まことに遺憾ではありますが、賛成するものであります。

注)今回の計画変更(事業費の再増額)は、水没予定地の発掘調査による増額、本体工事費や地すべり対策など、八ッ場ダム予定地の地質への対策の必要性によって生じた増額、アベノミクスによる公共事業重視による労務単価の上昇などによるものであり、前原大臣の中止発言とは関係ない。
 なお、国交省は前原大臣の中止発言によって八ッ場ダム事業が遅れたと説明しているが、「中止発言」はあっても八ッ場ダム事業は中止されなかった。事業の遅れはダム事業そのものが抱える様々な問題に起因している。
 
◆八ッ場ダム計画変更同意案と修正案についての討論ー後藤克己議員(リベラル群馬)
 まず139号議案の一般会計補正予算に対する反対討論ですが、これはコンベンションの実施設計に反対するという趣旨です。ただ、その余の補正の部分についても、多額の借金をしてやる事業である以上、その中身についてこのままでいいのかという問題意識があります。
 今回の補正予算130億円、うち公共事業は約100億です。これは国の経済対策に、いわば追随する形になっているわけですが、国の経済対策が発表された翌日の新聞各紙の報道を読むと、各紙共通しているのは旧来型の公共事業頼みの経済対策が効果があるのかという疑問、そしてもう一点が財政が緩んでしまっていることへの懸念です。要は、一過性のカンフル剤で終わって、結果、借金だけは積みあがってしまうのではないかという認識です。これってよくよく考えてみますと、私が学生時代、今から20年くらい前によく言われていたことではないかなと思うわけです。そういう意味では、本当に古い時代の政治が復活してきてしまっているのではないかという危機感があります。
 もちろん、人への投資がまったくないわけではありません。でも、ウエイトとしては相当小さくなっている。これは優先順位が違うんではないか。
 148号議案(八ッ場ダム基本計画変更同意案)への反対討論ですが、やはり(県が提示した)この程度の付帯意見では(負担増への)なんの歯止めにもならないという懸念があります。「熟慮を重ねて増額を受け入れた」という知事の判断については、ここであえて触れませんが、思い起こせば三年前、第四回変更の時、あれだけ増額に対しては断固反対という群馬県としての姿勢を示していたにもかかわらず、あえなくこういう結果を招いたという事実を、やはりもっと重く受け止めるべきだと思います。
 この程度の(付帯)意見でみすみす増額を受け入れるということになれば、(この増額は)更なる負担を県民に強いるわけですから、県民に対する説明にはならないと思います。3年前あれだけ(増額断固反対と)言っていたのはなんだったのか、私共はやはり説明がつかないのではないかという思いです。委員会審査の中でも、他会派からも「これ以上の増額はあってはならない」というような指摘がございましたけれど、残念ながら執行部からの答弁を聞きますと、県として断固とした意志は感じられませんでした。このままでは同じことが繰り返されかねないという強い危機感の下、この議案に対して反対させていただきます。