八ッ場ダムによって水没する吾妻川沿いの国道145号線は、地域の重要な幹線道路でした。しかし、国道は昨年11月にダム本体工事のための専用道路にするという理由で、吾妻渓谷のダムサイト予定地~「長野原第一小」信号までの区間が廃線となりました。
 ダムサイト予定地下流の吾妻渓谷の国道も、現在は全面通行止めとなっています。
 吾妻川の左岸側(川原畑地区)では、2010年より吾妻渓谷上流側で付替国道が開通していますが、道路の路面や法面、路肩に変形が生じています。
 右岸側(川原湯地区)には川原湯温泉街の坂道(県道川原湯川原湯停車場線)の水没補償として付替県道を建設中です。
 これら、八ッ場ダム事業に関連する道路の問題について、群馬県議会の委員会質疑で取り上げられましたので、要旨をお伝えします。

2015年3月5日 産経土木委員会(県土整備部)質疑の要旨

角倉邦良県議(リベラル群馬)=角  道路管理課長=道  特定ダム対策課長=特

八ッ場ダム事業によってつくられた付替国道145号線の変形について
亀裂が広がっているshuku
角倉邦良県議:この県土整備の委員会では、新たな付替国道を国がつくって県に移管する時は、危ない状況で群馬県に引き渡されて維持管理も含めて県が負担するような事態はくれぐれも避けるよう、安全をしっかり確認してほしいと要望してきた。
今、付替国道が県に移管され(注1)、色々な安全上の問題、ひび割れが起こったり、要は地すべりが起きているのではないかということも心配されている。県として調査を依頼して、確認の作業を進めているところということである。(注2)
引き渡しの際に、安全上の問題、あるいは問題が起こった時の経費を含めて、どういう話し合いが国と県でなされたのか? 
(写真右=川原畑地区を走る付替国道。)

道路管理課長:国が八ッ場の関係でつくった国道、県道を県が引き継ぐ場合は、県が国に法面の点検を全部させ、安全対策を講ずべきところは講じさせて、国と県で現地で立ち会って、これなら大丈夫だろうということで引き継ぎをする。145号についてもそのような手続きで四年前にやっている。お金に関しては、ある一定期間を過ぎるまでは施工者の負担だが、その期間を過ぎると県の負担。未来永劫つくったところが負担することにはなっていない。

角倉:今回の事案については、補修費は国が出すのか?

道:今回については、たとえば道路の盛り上がっているところを補修したりすることに関しては県がやっている。

角:そうすると、ある一定期間をもう過ぎてしまったということか?

道:そういうことになる。

角:コンクリートの補修の様子を見ると、相当怖いなと。法面のところがずれて、70mも亀裂ができている。こういう事例は他の国道や県道でもあるのか?

川原畑穴山沢付け替え国道工事s2 - コピー
道:すべてを承知しているわけではないが、こういう状況は時々あるとは思う。
(写真右=建設中の付替国道 川原畑地区 2010年6月撮影)

角:問題発生の理由について、本会議において、県土整備部長は酒井県議の質問に対して、「道路の下部の地山の一部が変質したためと考えている」と答弁されている。「変質」というのは具体的にどういうことか?

道:現地を見ると、法面の小段の部分は若干盛り上がっており、構造物は少し前に押しているように見え、道路は盛り上がっているという状況をトータルで現地踏査等を踏まえて考えると、法面がずれているということではなくて、地盤の中に含まれている黄鉄鉱が酸化して石膏化したことによって体積が増えて、もわっと動いたということで、地すべり的な動きではないと考えている。

角:そうすると、地すべりではなくて、要は酸化したと。しかし、引き渡しの前から茶色い水が出て、現地へ行けば真っ茶色なわけだから、こうなることは素人でも引き渡しの前から十分予測できたのではないか?

地すべり法面shuku
道:地質の専門家の話によれば、酸化したところが体積が増えるかどうかは、現地の状況によっても異なり、酸化=体積膨張にはならないということなので、そのようなことを予見するのは非常に難しいと考えている。(注3)

角:これから、あの箇所はずっと変質し続ける。そうすると、その都度こういう工事を群馬県としてはやらざるをえないという認識でよろしいか?
(写真右=付替え国道の法面が変形している箇所) 

道:日々の変状については、道路パトロールをしながら現地の状況を確認する。異常があれば他の道路と同様、それを正して通行の安全を確保するのが我々の使命。そのような状況になった時には対処していく。

角:「地すべりではない」ということだが、同じような地質の場所で本体工事をやっていくわけだ。埼玉・秩父の滝沢ダムのように、湛水試験で地すべりを起こしてしまうのではないかと心配している、それで地すべりかどうか、しつこく聞かせてもらっている。今回のこの事案については、群馬県の見解として地すべりではないということでよろしいんですね。

道:あくまで地盤の中の成分が酸化して体積が増えたということで捉えている。

(注1)工事完成後の平成22年12月17日に道路管理者である群馬県に引き渡し。(八ッ場あしたの会の公開質問書に対する国土交通省八ッ場ダム工事事務所の回答より)

(注2)付替国道の問題箇所への対応について、群馬県は委員会質疑とは別に文書で以下の回答を角倉県議に伝えているとのことです。
(1)付け替え国道145号茂四郎トンネル長野原側坑口付近の路面の変状について
質問:路面の変状を最初に発見したのはいつか?
回答:平成26年4月
(2)上記の変状を調査するため県が発注した委託業務について
質問:業務名、発注時期、請負業者について教えてほしい。
回答:業務名:単独道路維持修繕事業(道路災害防除)
       地質調査及び地すべり解析等業務委託(川原畑工区)
   契約日:平成26年9月5日
   請負業者:日本工営(株)群馬営業所

(注3)国から県に引き継ぐ前から起こっていた酸化によって、どのようなことが起こりうるかは、現地の熱水変質帯の状況を踏まえて対応すべきでしたが、ここで県が述べたとおりだとすると、現地の状況を踏まえてはいなかったとも受け取れます。
 当会に協力する専門家らは、国交省と群馬県が説明する「黄鉄鉱の酸化により生成される石膏による体積変化」だけで岩盤全体を膨張させることは困難であり,変形の形態も地すべりの進行を示唆しているという見解です。
【参照】「八ッ場ダムの付替国道の変形に関する公開質問への国交省回答について」
    http://yamba-net.org/?p=10726
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旧国道について
久森隧道上流から (2)shuku
角:水没予定地の国道145号線を廃道にするに当たっては、ダム本体工事のために道路の拡幅工事を円滑に行うため早くに国道を廃道にしたいということで、地元の地権者との話し合いを急いできたと説明を受けている。私は何度も、そこにまだ住んでいる地元の皆さんとのしっかりとした合意をとってほしいと言ってきた。しかし、結果的には合意がとれない形で、何人かの住民を置き去りにして廃道が決定されたということで、大変残念な事態になっている。
 廃道になった国道の拡幅工事は実際上、いつから行われるのか?
(写真右:旧国道の久森隧道)

特ダム課長:国からは、供用廃止区間について、工事専用道路として利用するため、利用廃止後すみやかにガードレール撤去などを開始し、その後、車道の拡幅などの必要な措置を順次行っているところと聞いている。

角:それでは、拡幅工事が始まっているという認識でよろしいのか?

特:そのように聞いている。

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付替県道について
砂防ダムの列と付け替え県道shuku
角:右岸側の付替県道(川原湯地区)はいつ頃完成する見通しか? (注4)

特:議員ご指摘の、県道林・岩下線の川原湯温泉のトンネルの長野原側の坑口付近400メートル区間の工事については、現在、国が施工しているところである。国からは工事を段階的に進めているところであり、早期の完成を目指して工事の進捗を図っていると聞いている。
(右写真=付替県道の工事区間)

角:そうすると、国交省は県に、いつ頃できるか明示できていないということなのか? 普通だったら道路工事は大体このくらいまでに完成の見通しと言えるはず。もし国交省から完成時期の見通しを示されていないとしたら、その理由はなぜか?

特:国からは、関係機関や地元の方々と調整のうえ、早期に道路を完成させるように工事を進めていると聞いている。

角:それでは、地元の皆さんにも、付替県道がいつ完成するのか、示されていないということか?
先ほど質問した左岸側の川原畑地区の付替国道の法面が崩落して通れなくなってしまうと、生活道路、観光用の道路も含めて、右岸側の付替県道しか使えなくなるということもあるので、安全上の問題も含めて、あるいは完成の日時も含めて、もう少し具体的に示していただいた方がよりよいのではないか、という思いで質問させていただいた。

(注4)付替県道は暫定供用されていますが、工事中の400m区間で一方通行、停止信号もあり、大型車両の通行はできません。

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吾妻渓谷内の国道(ダムサイト予定地下流側)の開放時期について
通行止め手前の標識shuku
角:吾妻渓谷内の国道が冬季期間ということで、全面通行止めとなっている。これについて、春には開放できるという理解でよろしいのか?
(写真右=吾妻渓谷の下流側入り口 全面通行止めの看板)

特:今後の交通開放の時期や交通方法について、現在、東吾妻町や警察等の関係機関と調整を行っているところであり、決まり次第、お知らせすることになるかと思っている。

角:吾妻渓谷ということで観光ゾーンでもある。春と言ったのは新緑の季節にはせめて間に合うよう開放してほしいと思っているのだが、見通しは如何?

特:吾妻渓谷の観光面もかんがみて、できるだけ早期の交通開放を目指して、繰り返しになるが、地元・東吾妻町と警察等の関係機関と調整を行っている。

角:そうすると、夏や秋になってしまう可能性もあるということか?

特:時期については、今、現在、調整を行っている。