淀川水系の大戸川ダム(滋賀県大津市)は起業者である国交省近畿地方整備局が2005年に中止方針を発表したダムですが、同局は2月8日、「関係地方公共団体からなる検討の場」を開催し、推進方針を打ち出しました。

 わが国の河川行政は、1997年の河川法改正によって、流域住民の意見を取り入れ、環境を重視する新たな時代を迎える筈でした。国交省関東地方整備局が八ッ場ダムをはじめとする時代遅れのダム事業を旧来通り進める中、国交省近畿地方整備局は淀川水系流域委員会を諮問機関として設置し、これまでのダム事業の再検討を行いました。2005年、同委員会の答申を受けて近畿地方整備局は大戸川ダムの中止方針を発表。2008年には滋賀、京都、大阪、三重の4府県知事が凍結を求める共同見解を公表しました。

 こうした淀川水系における先進的な動きの背景には、改革派官僚と環境問題を重視する嘉田由紀子滋賀県・前知事の存在がありました。しかし、嘉田知事は2014年に引退、国交省では改革派は締め出され、近畿地方整備局ではそれまでの反動が次第に顕著になってきました。

 現在の滋賀県知事である三日月大造氏は、嘉田由紀子氏の路線を踏襲することを公約して2014年の知事選を制したのですが、民主党政権下ではダム担当の国交政務官、副大臣として無力であったという前歴があります。当時、国民世論はムダな公共事業として批判の多い八ッ場ダムをはじめとする全国のダム事業の中止政策を支持したのですが、組織を挙げてダム事業の中止阻止を図った河川官僚に主導権をとられ(*)、民主党政権による八ッ場ダム等の中止政策は看板倒れに終わりました。
*国交省は「ダム事業の検証」を行うためとして、旧来の河川行政を支持してきた、いわゆる”御用学者”が大半を占める非公開の有識者会議を2009年11月に設置。この会議において、起業者みずからが既存のダム事業の効果を認めつつ、新たな代替案と比較するというダム検証の枠組みを国交省の「事務局案」として提示し、「有識者会議」のお墨付きを得て、全国のダム事業の検証を2010年9月より開始。その結果、八ッ場ダムは起業者である国交省関東地方整備局が他のどの代替案より有利であるという「検証結果」を国交省本省に報告し、2011年12月、「建設再開」が決定。
 
 国交省の方針を覆すためには、流域知事らと連携し、粘り腰でこの問題に取り組む必要がありますが、2月8日の報道が伝える同氏の発言からは、その覚悟は不明です。また、2/9付けの読売新聞の報道を見ると、大阪府の松井知事も橋本前知事よりかなり後退しています。河川行政逆流の現象は、近畿地方でも一層強まってきました。

★国交省近畿地方整備局の公式サイトより
「国土交通省 近畿地方整備局河川部 検証対象ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」
http://www.kkr.mlit.go.jp/river/kensyou/kaigisiryou.html

「大戸川ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場 第1回検討の場・第3回幹事会」の配布資料(平成28年2月8日開催)の資料
http://www.kkr.mlit.go.jp/river/kensyou/siryou160208.html

「淀川水系・大戸川ダムの検証に関する関係自治体の検討会議の資料」のうちの「参考資料-4 パブリックコメントに寄せられた全ての意見」には、河川行政の改革を目指してきた今本博健京大名誉教授(河川工学)の優れたご意見も掲載されています。⑩番目ですので是非お読みください。
http://www.kkr.mlit.go.jp/river/kensyou/pdf/daido/siryou/160208_daido_sankousiryou04.pdf

 関連記事を転載します。

◆2016年2月8日 毎日新聞大阪夕刊
 http://mainichi.jp/articles/20160208/ddf/041/010/008000c
ー大津・大戸川ダム 凍結解除も 近畿地整「治水、建設が有利」ー

 建設が凍結されている大戸(だいど)川ダム(大津市)計画の検証を進めている国土交通省近畿地方整備局は8日、コストや環境影響などを検討した結果、ダム建設がそれ以外の治水対策よりも有利とする評価案を大阪市内であった会合で明らかにした。今後、関係自治体などに意見を聞き、内容次第では建設凍結解除に結びつく可能性がある。建設着手時期は淀川上流にある木津川、桂川の堤防整備状況などを見て決める方針。【衛藤達生】

 大戸川ダムは国が1968年に予備計画調査に着手したが、2008年に整備局の諮問機関「淀川水系流域委員会」が「効果が限定的」として建設見直しを求めた。嘉田由紀子・滋賀県知事や橋下徹・大阪府知事(いずれも当時)らも建設凍結を求める共同見解を発表し、国交省が09年に事業の凍結を決めた。

 一方、国は全国のダム事業の検証作業をスタート。大戸川ダムでは、ダムを建設する現行計画や、ダムを建設せずに河道の掘削や雨水貯留施設を設置するなどの手法を組み合わせた計9案を、コストや環境への影響など七つの評価項目で比較してきた。

 会合で整備局側は、代替案のコストがダム建設の現行計画より少なくとも310億?2630億円上回ったと発表。他の評価項目も含めて総合的に検討した結果、ダム案が有利と結論付けた。事業継続の最終的な結論は、関係自治体や住民、学識者などに意見を聞き、国交省の有識者会議の議論を踏まえて判断する。

ダムの検証作業は全国の83事業を対象に行われ、既に71事業が終了。事業継続は八ッ場(やんば)ダム(群馬県)など47事業で、中止は北川ダム(滋賀県)など24事業、検証中は大戸川ダムを含めて12事業となっている。

「茶番だ」「歓迎」
 ダム建設が有利とする案に、関係者からは賛否の声が上がった。
 2001~07年に淀川水系流域委員会の委員を務めた水工技術研究所代表、今本博健・京都大名誉教授はこの日、会合を傍聴。

 終了後の取材に「茶番劇だ。『大戸川ダムは必要だ』との前提で議論している」と憤り、「これまでは治水専用ダムだと経済的に不利としていた。条件は何も変わっていないのになぜ有利になるのか。ダムの方が安いという積算根拠も示されていない」と指摘した。

 ダム建設計画に伴って集団移転した大津市大鳥居地区の青木洋治さん(62)は「ダム案が有利というのは素直に歓迎したいが、計画が二転三転してきた経緯を考えると、凍結が解除されるまで安心できない」といい、「住民の高齢化が進んでいる。国や自治体は今回の評価を重く受け止め、一刻も早く建設を進めてほしい」と話した。【山下貴史、田中将隆】

容認「別の議論」 三日月・滋賀知事
 三日月大造・滋賀県知事は「国が予断なく検証した一つの結果と受けとめている」としたうえで、ダム建設を認めるかどうかについては「今後、また別の議論だ」と述べた。

◆大戸川ダム建設を巡る経緯◆
1968年 国が予備計画調査を開始
  78年 国が実施計画調査を開始
  89年 5月 建設事業着手
  98年 3月 地元の大鳥居地区で住民移転完了

2003年 1月 国土交通省の諮問機関「淀川水系流域委員会」が「原則建設すべきでない」と提言
     12月 流域委が「中止も選択肢の一つ」との意見書提出

  05年 7月 国が建設凍結の方針示す
  07年 8月 国が凍結方針を撤回、治水専用ダムを計画
  08年 4月 流域委が「ダム建設は不適切」との中間意見書を提出
     11月 滋賀、京都、大阪、三重の4府県知事が凍結を求める共同見解を公表

  09年 3月 国交省が凍結を発表
  16年 2月 国交省がダム建設有利との検討結果を公表

 ■ことば

大戸川ダム
 大津市南東部に国が計画している治水専用ダム。総貯水容量は約2200万立方メートルで、総事業費約3500億円のうち3分の1は滋賀、京都、大阪の3府県が負担する。用地取得は84%終了しているが、国土交通省近畿地方整備局が2011年から建設について検証していた。

◆2016年2月9日 京都新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160209-00000001-kyt-l25
ー滋賀知事、是非明言せず 大戸川ダム継続方針ー

 2009年に国が「凍結」方針とした大戸川ダム(大津市)について、国土交通省近畿地方整備局が8日、事業を検証した結果、他の治水対策と比べてダム建設が「最も有利」とする評価を公表した。滋賀県の三日月大造知事は同日、取材に対して「国が予断なく検証した結果」と受け入れたが、08年に滋賀や京都など4府県知事が事実上のダム中止を求めた合意文書については、「現時点では変更する段階にはない」と述べ、着工を急がない考えを示した。

 大阪市内であった関係自治体との検証会議で、同整備局はダム建設を中心とする洪水対策の事業費が約3510億円で、他の治水対策8案の概算事業費は3820億円以上と説明。整備の効果や実現の可能性では大きな差がなく、コストを最重視してダムが最も有利との評価を示した。出席した3府県、4市が了承した。

 今後、同整備局が有識者や住民の意見を聞き、ダム事業「継続」の方針を決めるための手続きを進める。方針決定の後にダム本体工事を始める場合は、大戸川ダムを「当面実施しない」としている淀川水系河川整備計画の変更が必要で、流域の府県の同意が条件となる。今回の検証結果では着工時期は示していない。

 会議で三日月知事は、河川整備計画が変更される段階で「県の意見を出す」との意向を示し、現時点でのダム建設の是非は明言しなかった。併せて県道付け替え工事の継続と、ダム工事が与える自然環境への影響を十分検討するよう要望した。

 ダム検証は09年に民主党政権で始まり、全国83カ所が対象。これまで71事業の検証を終え、47事業の継続、24事業の中止が決まっている。

◆2016年2月9日 11時47分 京都新聞
http://www.kyoto-np.co.jp/shiga/article/20160209000058
ー二転三転に評価と反発 大戸川ダム、住民や研究者ー

 地元住民からは早期着工を強く望む声の一方、ダム不要を訴える研究者らは事業主体自らの検証結果に厳しい目を向けた。
 検証会議には滋賀県の三日月大造知事が出席した以外に首長の姿はなかった。大阪府の担当者は「総合評価が示されたのは一歩前進」と淡々と話し、京都府は「滋賀や大阪で治水効果があるのは理解するが、府内でどれぐらいあるか、近年の気象状況も踏まえて説明を」と注文を付けた。

 大戸川上流の滋賀県甲賀市は「コスト面を考えるとダム案を進めるのがいい」とし、京都府宇治市も「本体工事の早期着手を」と強調した。地元の大津市は「大戸川流域の治水の安全度を最優先に考え、県と連携したい」と述べるにとどめた。三日月知事は会議後、「河川整備計画をどうするかは今回の検証とは別のステージ(議論)」と慎重な構えをみせた。

 地元住民は結果を評価する。大戸川ダム対策協議会会長の元持吉治さん(65)は「長年の要望が実を結び、洪水に苦しんできた地域に寄り添ってくれた。早期着工されるよう国と県が連携するように求めたい」と話した。ダム湖に沈む予定地から集団移転した住民でつくる大鳥居地域開発協議会会長の青木洋治さん(62)は「計画が二転三転しており、今回も本当に凍結解除されるのか疑問」としつつ、「しっかり建設を進めてほしい」と願った。

 一方で、かつて整備局が設けた淀川水系流域委員会で委員長を務め、ダム不要を主張してきた京都大名誉教授の今本博健さん(78)は「流域委や知事意見を無視し、建設ありきの結論」と憤った。05年に整備局が治水単独のダムは経済的に不利として凍結した経過に触れ「当時と条件は変わっていないはずなのにコスト面で有利に変わることが信じられない」と指摘した。

 08年に4府県で事実上のダム中止の合意文書をまとめた嘉田由紀子前滋賀県知事は「ダムだけで下流の治水課題が全て解決できると効果を過大に見ている。建設ありきで予断だらけの検証結果」と批判。「三日月知事も4府県合意に言及し、整備計画を変更する段階にはないことを主張している。ダムだけに頼らない流域治水を基本とする滋賀県の治水政策方針に変更はないものと思う」と話した。

◆2016年2月9日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/ASJ284T0WJ28PTJB00J.html?rm=497#Continuation
ー大戸川ダム案「最も有利」 国交省が治水の費用比較ー

 国が建設を凍結した大津市の大戸川(だいどがわ)ダムをめぐり、国土交通省近畿地方整備局は8日、河川改修など他の治水対策案と比較して「ダム建設が最も有利」とする評価を滋賀県など流域自治体に提示した。国の淀川水系河川整備計画は同ダムについて「本体工事は当面実施しない」としており、計画変更と工事再開にはダム建設凍結を求めた各自治体の同意が必要となる。

 近畿地整が大阪市内であったダム事業検討会議で示した資料によると、ダム建設と、ダムを建設せず河川掘削や既存ダムのかさ上げなどを組み合わせた代替8案を比較検討。洪水時の被害軽減はいずれの案も目標を達成できるが、代替8案の総事業費が約3800億~6100億円超なのに対し、ダム建設は約3500億円とコスト面に優れ、他の評価項目も勘案して総合的に最も有利とした。

 大戸川ダムは2008年4月、近畿地整の諮問機関「淀川水系流域委員会」が「効果は限定的で建設は不適切」とする意見書をまとめ、嘉田由紀子・滋賀県知事や橋下徹・大阪府知事(いずれも当時)ら4府県の知事も同11月、計画凍結を求める共同見解を発表。これを受け国交省は09年3月に建設凍結を決めた。

 ログイン前の続きダムの検討会議は09年9月に誕生した民主党政権のダム建設見直しの方針を受け、当時本体工事が未着工だった全国83ダムが検証の対象となった。昨年9月時点で47事業が継続、24事業が中止になり、大戸川ダムなど12事業が検証を続けていた。

 近畿地整は現行計画に沿って淀川上流の木津川、桂川の河川改修を先行する方針で「直ちに計画を変更する状況にはない」としている。

 滋賀県の三日月大造知事は会議終了後の取材に「国が予断を持たずに検証された結果と受け止めている。現時点で4府県の知事合意を変更する段階ではないと思うが、関係者と議論しなければならない」と述べた。大阪府の松井一郎知事は記者団に「専門家がより有効とする案については、やはり真っ正面から受け止める必要があるのかな」と語る一方、「事業をいつの時点でどう進めるかについては、詳しく中身を見た上で判断させて頂きたい」と述べた。(佐藤常敬)

◆2016年2月9日 読売新聞関西版
 http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20160209-OYO1T50009.html
ー治水対策「大戸川ダム有利」、大阪府知事が評価ー

建設凍結中の大戸川ダム(大津市)を巡り、ダム建設案を他の治水対策より有利とした国土交通省近畿地方整備局の検証結果について、下流に位置する大阪府の松井一郎知事は8日、「専門家の意見は尊重しなければいけない」と前向きに評価する一方、可否については他府県と協議して判断する姿勢を示した。府庁で記者団に語った。

 同ダムを巡っては、2008年11月に当時の橋下徹知事らが国に白紙撤回を求め、本体工事が凍結された経緯がある。松井知事は評価の理由を、「局地豪雨による災害なども起こっており、住民の命と財産を守るため、専門家が有効とする案を真正面から受け止める必要がある」と説明した。

 一方で、「京都や滋賀の知事とも足並みをそろえなければならない」と述べるとともに、他の淀川水系の河川でもダム建設などの計画があることを念頭に、「(府にとって)大戸川事業が最優先かというと、それは違う」と強調した。

◆2016年2月9日 建設通信新聞
http://www.kensetsunews.com/?p=60916
ー大戸川治水対策ダム案が有利/洪水調節、コスト評価/近畿整備局ー

 近畿地方整備局は8日、大阪市中央区の大阪合同庁舎で、淀川水系大戸川建設事業の「関係地方公共団体からなる検討の場」の初会合および第3回幹事会を開き=写真、大戸川ダム案を「最も有利な案」とする治水対策案の総合評価結果を報告した。今後は学識者や関係自治体、住民などへの意見聴取を経て、対応方針の原案を作成し、事業評価監視委員会の意見を聴きながら、対応方針案をまとめる。

 治水対策案の評価は、昨年11月に募集したパブリックコメントの意見も踏まえ、▽大戸川ダム(現行河川整備計画)▽河道掘削▽放水路▽遊水地▽瀬田川新堰▽既設ダムかさ上げ▽利水容量買い上げ▽流域を中心とした対策(水田の保全あり)▽同(同保全なし)の計9案で実施した。

 総合評価では、安全度(被害軽減効果)やコスト、実現性、持続性、柔軟性、地域社会への影響、環境への影響の各評価軸に沿って判断した。安全度を確保することを基本にした場合に、コスト面で最も有利な案が大戸川ダム案となったことが評価のポイントとなった。時間的な観点では、10年後に完全に効果を発現できる案はなかったものの、20年後に効果発現が見込める案として、「大戸川ダム」「瀬田川新堰」「既設ダムかさ上げ」「利水容量買い上げ」「流域対策の2案」を示した。

 そのほかの評価軸については、安全度およびコストの評価を覆す要素がないとして、事業が洪水調節を目的とする前提条件から、最も有利な案をダム案とすることを説明した。

 大戸川ダム事業は、1968年に予備計画調査を開始。73年に工事事務所を設置し実施計画調査に着手、99年に付帯県道大津信楽線の工事に着工した。今回の点検で総事業費は1163億円を試算、残事業費(16年度以降)は約478億円を見込む。

 2008年度に策定した淀川水系河川整備計画では、中・上流部の河川改修の進捗状況と、その影響を検証しながら、実施時期を検討する方針を打ち出していた。このため、ダム本体着工には同計画の変更が必要となる。

 ダム事業では、堤高67.5m、総貯水容量2190万m3、堤頂長200m、総貯水容量2210万m3の重力式コンクリートダムとして計画している。事業場所は大津市上田上牧町(左岸)および上田上桐生町(右岸)。

 15年3月末時点の事業の進捗率は、用地取得(163ha)が84%、移転補償(55戸)が100%、付替県道(9.5㎞)整備が60%となっている。 会合では、三日月大造滋賀県知事が「大戸川沿川への治水効果もあり、長年にわたり水害に苦しんできた地域の安全に貢献できる事業だ」と評価したほか、自然環境への影響についての検討なども同局に求めた。

 閉会に当たり、近畿整備局の山田邦博局長は「できるだけ早く検討を進め、対応方針案をまとめていきたい」とあいさつした。

◆2016年2月8日 産経新聞
http://www.sankei.com/west/news/160208/wst1602080038-n1.html
ー大戸川治水対策、ダム建設が最も有効…建設工事凍結見直しの可能性 近畿地方整備局ー

 建設工事が事実上凍結となった大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について、国土交通省近畿地方整備局は8日、河川掘削などほかの治水対策案と比べ「ダムが最も有利」との評価を自治体側に示した。自治体側の同意が得られれば、凍結見直しにつながる可能性もある。

 滋賀、京都、大阪の3府県や大津市など4市と、同日午前に大阪市内で開いた検証会議で提示。ダム10+ 件建設案に加え、河川の掘削や放水路の設置など代替策8案の検証結果を説明した。

 概算事業費で最も安かったのは、ダム建設の約3500億円。一方、代替案は約3800億~6100億円超。整備局は洪水の被害軽減効果は各案に明確な差はないが、コスト面でダム建設が有利と結論づけた。

 大戸川ダムは、国交省が治水専用ダムとして計画。しかし、ダム凍結を公約とした嘉田由紀子・滋賀県前知事ら流域4府県知事の意見を受け、平成21年に「本体工事は当面実施しない」と計画を凍結した。

 その後発足した民主党政権で事業見直しの対象となり、23年1月から3府県・4市と検証会議を実施。今後、各知事や周辺住民らの賛同を得られれば、国交相が最終判断する。

 滋賀県の三日月大造知事は検証会議で「周辺環境への影響が懸念される。着工にあたっては河川整備計画の変更が必要で、その際は改めて県の意見を聞いてほしい」と述べた。

【大戸川ダム】 滋賀県南部を流れる淀川水系の大戸川に、国が計画している治水専用ダム。総貯水容量は2210万立方メートル。当初は多目的ダム10+ 件としていたが国は平成17年、水需要低下を理由にいったん建設中止を表明。19年に治水専用に変更して計画を再開した。しかし流域4府県の知事が建設中止を求める共同意見を発表し、国は21年に計画を凍結。事業見直し対象として、国交省近畿地方整備局が23年から建設の是非を検証している。総事業費は約3500億円で、3分の1は滋賀、京都、大阪の3府県が負担する。

◆2016年2月8日 
http://www.sankei.com/west/news/160208/wst1602080042-n1.html
ー「予断なく検証」大戸川ダム建設継続の“有効”評価受け三日月滋賀県知事ー

 滋賀県の三日月大造知事は8日、国土交通省近畿地方整備局が、治水策として大戸川ダム(大津市)の建設継続が最も有利とする評価を示したことに関し「予断を持たずに検証した結果と受け止めている」と述べた。大阪市内での検証会議終了後、記者団に語った。

「ダムの効果や費用、流域・環境への影響を総合的に見たい」と述べ、これらの点を考慮して県の対応方針を決定する考えを示した。その上で「仮にダムを建設したとしても(防ぎきれない)浸水被害についてハード・ソフトの両面で備えるべきだ」ともした。

◆2016年2月8日 京都新聞
 http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20160208000060
ー大戸川ダム「最も有利」 国交省、事業を継続へー

 国土交通省近畿地方整備局は8日、建設計画を凍結している大戸川ダム(大津市)について関係自治体と事業を検証する会議を大阪市内で開き、川底の掘削や他ダムのかさ上げなどを組み合わせる代替案に比べ、ダム建設が「総合的な評価として最も有利」とする検証結果を正式に提示した。今後、ダム事業を継続する方針が示される見通しで、関係自治体の受け止め次第で凍結の見直しにつながる可能性もある。

 会合では、同整備局がダム建設を中心とする洪水対策について、残事業費約478億円を含んだ総費用は3510億円と説明。市民意見を受けて追加した治水対策案を含む代替8案の概算事業費は3820億円以上で、「コスト面を最重視してダムが最も有利との評価になった」と結論を出した。環境への影響など他の項目については、「(コスト面の)評価を覆すほどの要素はない」とした。今後、有識者らの意見募集を経て、同省が大戸川ダム事業を継続する方針を決める。

 継続方針となった場合でも、ダム本体工事に取りかかるには、当面の着工を凍結した河川整備計画を変更する必要がある。同計画は2008年、滋賀、京都、大阪、三重の4府県知事が事実上の中止で合意し、提出した意見書を反映させて策定しているため、関係自治体が検証結果をどう受け止めるかが今後の動向を左右する。

 会議で滋賀県の三日月大造知事は「国が予断なく検証した結果。環境への影響は懸念されるので十分検討してほしい。着工には河川整備計画の変更も必要になるので、そのときにあらためて県の意見を出す」と述べた。出席した他の2府、4市からも異論は出ず、評価結果が了承された。