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鬼怒川決壊から半年…懸命に生活再建 常総市、被災者転出で人口減

 東日本大震災から5年、そして、鬼怒川水害が起きてから半年が経ちます。被災地の現状を伝える記事を転載します。

◆2016年3月11日 東京新聞茨城版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201603/CK2016031002000163.html?ref=rank
ー鬼怒川決壊から半年…懸命に生活再建 常総市、被災者転出で人口減ー

昨年九月の関東・東北水害により、常総市で鬼怒川の堤防が決壊してから十日で半年がたつ。住宅五千棟以上が全半壊した市内では、市民が生活再建を懸命に進めるが、被災者の市外への転出による人口減や、地域のコミュニティーの中心となる公民館の再建など、新たな課題にも直面している。 (増井のぞみ)

 「あそこでは、家を取り壊して、子どもの所に身を寄せている」。同市水海道橋本町区長の古矢邦夫さん(75)は、広がる更地の一角を指さした。壁が泥で汚れたままの平屋を見やり「ここは修理しないようだ」。

 市役所にほど近い水海道橋本町は、かつて商業で栄えた。市内を流れる新八間堀(はちけんぼり)川の氾濫と鬼怒川の決壊で、洪水被害を二重に受けた。水害前、四百七十四世帯が町内会にいたが、大規模半壊した家屋が多く、二月末までに四十世帯が近隣市などに転居した。

 現在、市の人口は約六万四千人で、昨年九月~今年二月に約七百五十人減った。転出が転入を上回る社会減は六百三十人に上った。市は市内の旅館やホテルに開設した避難所を今月一日に閉鎖したが、つくば市などの公的住宅に九日現在、まだ百世帯二百六十九人が仮住まいする。

 市は昨年十二月、水害で損壊した集落公民館の修繕に対する補助率を二分の一から三分の二、補助限度額を百万円から三百万円に引き上げた。古矢さんは、補助金と保険を使い、被災した水海道橋本町民会館の修繕を、来月中にも終えたい考えで、「住民が集まれる場をつくり、早く日常生活を取り戻したい」と願う。

 約千世帯が住む大生(おおの)地区の大生公民館(同市平町)は、木造平屋の天井まで浸水し、窓ガラスは流されたままだ。住民らが話し合い、移転やかさ上げも考えたが、地区の中心部にあり、お年寄りも利用しやすいことから、市が二〇一七年度に現在地で建て替えることにした。近くに住む本橋美千代さん(79)は「地区住民が料理教室やフラダンスで、よく使っていた。早くいい公民館を建ててほしい」と切望する。

 市役所本庁舎前には、水害が発生した昨年九月十日以来、ずっと給水車が止まっている。最近では、最も多いときで日に二百リットルの需要がある。鬼怒川東側の井戸水が汚染されたためで、昨年十二月の市の検査では、一般細菌や大腸菌が検出されたため、三十五検体のうち二十五が飲用に不適合とされた。

 県生活衛生課は「水質が元に戻るには数カ月から数年かかる」と説明する。市は、水道を引くよう呼び掛けるとともに、今月いっぱいで給水車を撤去し、本庁舎の玄関脇にある蛇口を利用するよう促している。

 中妻町の橋本美子(よしこ)さん(61)は一月半ばまで給水車を利用していたが、結局、百四十万円をかけて水道を引いた。橋本さんは訴える。「長い水道管を通すために五百万円もかかる住民もいて、水道を引きたくても引けない住民もいる。命に関わる問題なので、市は実態を調べてほしい」