わが国では、巨大開発事業が各地で大きな自然破壊をもたらしてきました。
 公共事業による自然破壊を食い止めることを目的に、1997年に環境影響評価法(環境アセスメント法)が導入されましたが、この法律には多くの問題があり、本来の目的を叶える手段とはなりえていないのが実情です。
 八ッ場ダムの本体工事は2015年になってようやく着手されましたが、1997年以前にダム基本計画が策定されていた(1986年)ことを理由に、1997年に制定された環境影響評価法に基づく環境アセスメントの対象外とされています。

 【参考】環境影響評価法の抱える問題を指摘した論考です。
     「NGO から見た環境アセスメントの問題点」
                    日本自然保護協会 理事 吉田正人

八ッ場ダム事業による環境破壊は甚大です。報道等で八ッ場ダムが取り上げられるときは、事業者の記者発表がそのまま流されることが殆どで、凄まじい地形改変、自然破壊が伝えられることはめったにありませんが、取り返しのつかない損失がいずれは知られることになるでしょう。

 八ッ場ダム事業では1985年12月に建設省の通達(1978年)に基づく環境アセスメントを行っただけです。
 環境影響評価法案は1981年に国会に提出されましたが、1983年に廃案となり、1984年、法律の代わりに政府内部の申し合わせにより統一的なルールを設けることとなり、「環境影響評価の実施について」が閣議決定されました(この閣議決定による制度を「閣議アセス」といいます)。1985年12月時点では閣議アセスがすでに動き出していましたが、八ッ場ダムは閣議アセスも行わず、1978年の通達アセスで終わらせています。

 ただ、八ッ場ダム事業は事業費がふんだんにあるので、環境調査に多額の予算を付けて、調査会社に大量の仕事を発注してきました。

 国交省八ッ場ダム工事事務所ではこうした環境調査に基づいて、昨年4月、「八ッ場ダム 環境保全への取り組み」と題する報告書を公表しています。
 目次に見られるように、八ッ場ダム事業による環境影響を多くの面から調査した結果をまとめたものです。名勝・吾妻渓谷の水没をはじめとして、いずれも取り返しのつかない損失でありながら、「記録保存」等による「対策」で済ませると結論づけており、環境保全という観点から見るときわめて問題のある報告書ではありますが、八ッ場ダム事業による環境破壊の大きさを知る上で参考になります。

☆国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所ホームページより
 「八ッ場ダム 環境保全への取り組み」
 http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/yanba_kankyou08.html
表紙、目次[PDF:120KB]
第1章 八ッ場ダム建設事業の経緯[PDF:322KB]
第2章 八ッ場ダム建設事業の目的及び内容[PDF:5407KB]
第3章 八ッ場ダム周辺の概況[PDF:10350KB]
第4章 調査、予測及び評価の項目[PDF:220KB]
第5章  環境保全への取り組み(調査、予測及び評価の結果)
第5章1  大気質(粉じん等)[PDF:3333KB]
第5章2  騒音[PDF:3362KB]
第5章3  振動[PDF:3331KB]
第5章4  水環境[PDF:13065KB]
第5章5  地形及び地質[PDF:1927KB]
第5章6  動物[PDF:1398KB]
第5章7  植物[PDF:925KB]
第5章8  生態系[PDF:15344KB]
第5章9  景観[PDF:4428KB]
第5章10 人と自然との触れ合いの活動の場[PDF:3119KB]
第5章11 廃棄物等[PDF:1268KB]
第5章12 まとめ[PDF:383KB]
第6章 参考資料[PDF:399KB]

写真=国の名勝・吾妻渓谷で進められている八ッ場ダムの本体工事(基礎岩盤の掘削)左岸作業ヤード 
   2016年5月26日 対岸の川原湯地区より撮影
ダム本体左岸 (2)

写真=八ッ場ダムの水没予定地、川原湯地区の農村、上湯原。更地の場所では発掘調査が行われている。
   中央の山は林地区の天狗山。山裾を吾妻川が流れている。2016年5月26日
不動大橋より水没予定地