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淀川水系の天ヶ瀬ダム再開発事業も計画変更

 淀川水系の天ケ瀬ダム再開発事業が計画変更になる見通しを国が発表しました。
 天ヶ瀬ダム再開発事業は平成7年に基本計画が策定されました。当初計画では事業費は約330億円、事業完了は平成13年度でしたが、平成23年に一回目の計画変更(事業費→約430億円、工期→平成27年度)の後、平成26年に再度、計画変更(工期→平成30年度)を行っています。
 今回3度目の計画変更で、事業費は590億円に、工期は平成33年度になります。当初計画とくらべると、事業費は260億円、工期は20年も延びることになります。
(参照:国交省近畿地方整備局 事業評価監視委員会配布資料12ページ 「事業の経緯」 平成26年7月) 

 計画変更の原因は、八ッ場ダムと同様、地質の見通しが甘かったことによるもののようです。
 http://www.kkr.mlit.go.jp/scripts/cms/river/infoset1/data/pdf/info_2/20161007_01.pdf

 関連記事を転載します。
 天ヶ瀬ダム再開発事業の計画変更は、同じ淀川水系の「大戸川ダムの着工にも影響を与えそうだ」と書かれています。

◆2016年10月7日 京都新聞
 http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20161007000190 
ー京都・天ケ瀬ダム再開発、総事業費160億円増 工期3年延長ー

 国土交通省近畿地方整備局は7日、京都府宇治市の天ケ瀬ダムで、放流能力向上のため実施している再開発事業について、総事業費が当初より160億円増の590億円になり、工期も3年延び、2021年度にずれこむ見通しを明らかにした。

 事業費の京都府負担分は、当初計画の84億円から31億円増の115億円になる見通し。

 整備局によると、事業は天ケ瀬ダムの放流能力を毎秒900トンから同1500トンに引き上げるため、13年度に着工した。長さ617メートルの放流用トンネルでダム湖と宇治川をつなぐ計画になっている。

 昨年夏、水路を通す地層で想定の1・5倍規模の「脆弱(ぜいじゃく)層(破砕帯)」が見つかり、施工方法を見直す必要が生じた。掘削工事の安全確保やトンネルの安定を図るため、鉄筋コンクリート製の構造物を造ることになったという。

 天ケ瀬ダムと同じ淀川水系では大津市の大戸川ダム計画について整備局は6月末、「継続が妥当」とする対応方針原案をまとめたが、天ケ瀬ダムの再開発事業の計画変更は大戸川ダムの着工にも影響を与えそうだ。

 近畿地方整備局河川部は「今後、計画変更に必要な手続きを進めていく」とコメントしている。

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*追記10/15 天ヶ瀬ダム再開発事業の増額について、比較的詳しい記事が日経コンストラクションに掲載されました。
 総事業費160億円増の内訳は、地質がもろい破砕帯対策59億円、掘削土から見つかったヒ素などの重金属の処理費用40億円、地盤が想定よりも硬く施工単価が高くなったことなどによる増額34億円、工期延長に伴う諸経費など27億円ということです。

◆2016年10月14日 日経コンストラクション
 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntnews/15/101300559/?P=2
ー天ケ瀬ダムの放水路トンネル、事業費160億円増ー

 京都府宇治市の天ケ瀬ダムにトンネル式放流設備などを設ける再開発事業で、事業費が当初より160億円増えて590億円に、工期が3年延びて2021年度までになることが分かった。地中の破砕帯が事前調査より広範囲にわたっていて、対策工法の追加が必要になったことなどが理由だ。国土交通省近畿地方整備局が10月7日に公表した。

 天ケ瀬ダムの再開発事業は、トンネル式放流設備の増設によって洪水調節機能を強化し、揚水発電に利用できる水量を増やすのが目的。トンネルの一部は、高さ26m、幅23m、断面積500m2と国内最大級の減勢池部とする。

 減勢池部の先進導坑の掘削によって、破砕帯が想定よりも広がっていることが分かった。事前調査で、破砕帯は延長方向に対して奥行き9mとみられていたが、実際は14mにまで及んでいた。そこで、仮設の支保工を立て込むなどして先進導坑の掘削を進めた。

 今後、減勢池部の本坑掘削に先立って、破砕帯付近に先進導坑の底面から下方に直径3mの鉄筋コンクリート製の円柱支保工を深さ18mほど打設し、本坑の側壁背後の地盤を補強する。円柱支保工は、左岸側の先進導坑に2基、右岸側の先進導坑に4基構築する。

 先進導坑の掘削などで得られた地質情報を反映し、破砕帯以外の部分も構造を見直した。例えば本坑では、当初の予定になかった鋼製支保工を1~1.2m間隔で立て込むように変更した。設置する支保工が増えるので、掘進延長は1日当たり平均2mから1.2mへと低下する。

 本坑の覆工もアーチ部の鉄筋量を当初の117tから230tへ、機械式継ぎ手を2221カ所から1万4127カ所へと増やす。

 破砕帯対策によって事業費は59億円増える見込みだ。そのほか、掘削土から見つかったヒ素などの重金属を処理する費用として40億円、地盤が想定よりも硬く施工単価が高くなったことなどによる増額34億円、工期延長に伴う諸経費など27億円が加わり、計160億円の増額となった。