地元紙の上毛新聞では、毎年年末に連載されるその年の重大ニュースに、今年も八ッ場ダムが登場しました。
 記事タイトルも内容も国交省の広報に沿ったものですが、記事の最後は、ダム事業で人口減少が進む地域を維持するためにダムを活かすのが課題だと結ばれています。これは地元がダムを受け入れた1990年代以降、一貫して訴えられてきたことです。
 
◆2015年12月28日 上毛新聞一面より転載
 2015重大ニュース ⑭ 八ッ場ダム

 建設省(現国土交通省)が八ッ場ダムの調査を始めてから63年目の今年。長野原町の建設予定地では、ダム本体の設置場所の掘削工事が順調に進み、堤体を形成するコンクリート打設が来年6月に始まる見通しとなった。ダムを観光資源に位置付け、地域を活性化しようとする取り組みも盛んに行われた。

 地中に埋められた爆薬が「ドーン」と大きな音を立てて爆発すると、地面が一瞬盛り上がり、白煙を上げて崩れた。雪が舞う1月22日。爆薬を使って固い岩盤を取り除く発破が始まった。コンクリート製の堤体を造る前段階の作業で来年5月まで続く。取り除く予定の岩盤60万立方メートルの半分を11月中旬までに掘り終え、「作業は順調」(国交省八ッ場ダム工事事務所)だ。

 山を越えた南西側のから東吾妻町内では、プラントヤードを建設中だ。来年4月から総延長約10㌔のベルトコンベヤーでダム建設地近くまで骨材を運び、水やセメントと混ぜて堤体を形成する。2018年5月にも堤体が姿を現す。

 政府は16年度予算案に本体工事や代替地整備など生活再建事業の費用として222億3200万円を盛り込んだ。水没予定地の用地取得をスムーズにするため、強制収用を可能にする法的手続きにも着手した。

 人を呼び込んで地元を活性化しようと、さまざまな取り組みが盛んにおこなわれた。国交省は9月、工事現場を一望できる展望台を設置。水没予定地を散策するイベントを初めて開いたほか、工事現場を巡る見学会を行い、参加者は千人に上った。吾妻渓谷の紅葉を楽しむ無料シャトルバスも試験運行された。
 道の駅「八ッ場ふるさと館」は、周遊ツアーやダムカレーの販売など誘客作戦を展開。同館の篠原茂社長は「四季折々の魅力を知ってもらうため、行政と協力して情報発信したい」と意欲をみせ、萩原睦男長野原町長は「国や県と連携し、生活再建事業をしっかり進めたい」と力を込める。

 人口減少が避けられない中、地域の活力を維持する上で八ッ場ダムをどう生かしていくのか。19年度のダム事業の完成を見据え、官民がさらに知恵を絞る必要がありそうだ。

—転載終わり—

 山の中腹に見える人工造成地は、八ッ場ダムに水没する川原湯地区の打越代替地。川原湯地区はダムを受け入れる前は約200世帯と、水没予定地の中の最大の集落であったが、住民の多くは地区外に転出し、ダムとともに歩む現地再建を目指して故郷に残り、代替地へ移転した住民は四分の一以下となっている。
 打越代替地から水没予定地までの斜面では掘削工事が行われている。これは暫定のり面であり、ダム湛水までに最終のり面を造ることになっている。
 5つ並ぶ赤い屋根、黒い円筒形の設備は、ダム本体の骨材を貯蔵する骨材ビン。骨材ビンの左の空き地のあたりに、一年前まで川原湯温泉の駅舎があった。(2016年1月4日撮影)
打越代替地の抑え盛り土?

 水没予定地には今も住民の方々が住んでいるが、本体工事を理由に、ある日突然立ち入り禁止区域がつくられる。
 ものものしく「監視カメラ作動中」の看板がかかった鉄網には、この先の工事が「八ッ場ダム建設工事におけるベルトコンベヤ設備敷設」であることを示す看板もかかっている。ベルトコンベヤはダム本体の骨材を本体工事予定地の吾妻渓谷に運ぶために敷設される。吾妻渓谷に隣接した川原畑地区の水没予定地にて。(2016年1月4日撮影)
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 代替地に造られた新しい川原湯温泉駅は、周辺整備が遅れている。新たに造られた町道は駅前で途切れており、これから建設されることになっている。新しい町道は水没予定地の川原湯温泉の背後の山の中腹を通って、大沢を橋で渡り、打越代替地の王湯の前につながる予定。
 町道予定地に生えている紅梅がもう咲きだした。川原湯は例年1月は雪景色の季節。(2016年1月4日撮影)
紅梅