八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

11/17の高崎集会の配布資料

 さる11/17、高崎市シティギャラリーで集会「八ッ場ダム 七つの大罪」を開催しました。
 集会の配布資料をご希望の方は、以下のメールフォームでご連絡ください。A4サイズ60ページ、送料込み500円です。
 https://yamba-net.org/wp/contact/

 配布資料の目次は以下の通りです。(敬称略)

〇八ッ場ダム七つの大罪
Ⅰ 八ッ場ダム基本計画の変更とその問題点
Ⅱ 八ッ場ダム本体工事が進むことによる問題
Ⅲ ダム本体工事完了後の問題-試験湛水中の地すべり発生の危険性
Ⅳ 八ッ場ダムが完成したら、吾妻渓谷は?八ッ場ダム湖は?
Ⅴ 川原湯温泉街はどうなるのか
Ⅵ 完成後の八ッ場ダムはどうなるのか「堆砂問題」
Ⅶ 浅間山の噴火と八ッ場ダム

〇サクラマスのふるさとサンル川を子どもたちのために残そう! (小野有五)
〇利根川の治水のあり方について ―利根川・江戸川有識者会議の争点とダムに頼らない治水(大熊孝)
〇科学的検証抜きの八ッ場ダム建設は反対です(関口茂樹)
〇八ッ場ダム予定地の歴史遺産
〇八ッ場ダム予定地域における遺跡群の保存に関する要望書
【補足1】八ッ場ダムと利根川河川整備計画をめぐる経過、これからの課題
【補足2】減り続ける利根川流域の水道用水

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「八ッ場ダム 七つの大罪」配布資料1~30ページの要旨 
 (2013年11月17日(日)高崎シティギャラリー)

Ⅰ 2019年度に八ッ場ダムは本当に完成するのか? (資料1~3ページ)
☆付替鉄道の「川原湯温泉」新駅の駅前整備工事はひどく遅れており、その影響でダム本体工事が遅れることも予想される。

☆仮にダム本体工事が予定通り、2019年秋に完了したとしても、その後の半年間の試験湛水で地すべりが起きれば、ダム完成は大幅に遅れることになる。

☆八ッ場ダムは事業費再増額の5度目の基本計画変更が行われることは必至。増額要因を踏まえれば、事業費増額の規模は500億円を超えると予想される。

☆八ッ場ダム事業がこのまま進められても、混迷の様相を呈していく。

Ⅱ 八ッ場ダム本体工事の進行とともに失われていくかけがえのない自然 (資料4~5ページ)
☆吾妻渓谷上流部は、渓谷の中でも最も景観が美しい場所の一つであるが、ダムに水を貯めれば永遠に失われる。

☆本体工事予定地周辺は急峻であるため、植林がされず、群馬県で有数の自然林が残っているところである。かつて、若山牧水はこの林を永遠に守ってほしいと願ったが、牧水の願いはダム事業によって踏みにじられようとしている。

Ⅲ ダム本体工事完了後の問題-試験湛水中の地すべり発生の危険性  (資料6~9ページ)
☆国交省の10年以上前の調査でも、貯水池予定地周辺は地すべりの可能性がある地区が22か所もあり、地質が脆弱なところばかりである。現基本計画ではわずか3地区だけ対策を行うことになっている。地すべり対策費は全部でわずか6億円(うち、4億円は支出済み)である。

☆八ッ場ダムが危ないという指摘、報道が相次いだので、2011年の八ッ場ダムの検証では対策箇所数を大幅に増やし、地すべりと代替地の安全の追加対策に150億円が必要だということが示された。しかし、今回の基本計画変更では関係都県の同意を得ることが困難と見て、見送られた。それゆえ、実施されるかどうかも分からない。

☆この追加対策の内容を地すべり問題の専門家が検討したところ、多くの基本的な問題があり、追加対策を講じても、試験湛水中に地すべりが発生する危険性がまだまだ残される。その場合は、ダム本体が2019年秋にできても、ダムの完成は2020年代中頃、あるいは後半になることも予想される。

☆その頃は、利根川流域の水道用水は減少の一途を辿り、人口も減少時代になって、減少傾向に拍車がかかり、八ッ場ダムの不要性がますます明白になる時代になっている。

Ⅳ 八ッ場ダムが完成したら、吾妻渓谷、八ッ場ダム湖はどうなるのか?(資料10~17ページ)
 ☆吾妻渓谷の下流部3/4は残るが、吾妻渓谷の最大の魅力はきれいな岩肌であり、ダムで洪水を貯留するようになると、岩肌をコケが覆い、草木が茂って、様相ががらりと変わり、吾妻渓谷の美しさ、魅力は永遠に失われてしまう。

☆下久保ダム直下の三波石峡はダム完成後、渓谷の魅力を失って、三波石峡の散策路は草が覆って、歩くこともできない状態になっている。吾妻渓谷も同じ運命を辿るであろう。

☆既設の利根川水系ダムは利根川本川・支川の最上流部または上流部にあるのに対して、八ッ場ダムは吾妻川の中流部にあるので、流域人口がはるかに大きい。さらに、八ッ場ダムの上流部は観光地が多く、また、酪農が盛んであるので、流入汚濁負荷を人口で換算すると、流域には合わせて20万人に相当する人口が住んでいるのに等しい。それだけ、他の利根川水系ダムとはけた違いの汚濁物が流れ込んでくるので、浮遊性藻類の異常増殖による水質悪化が避けられないダム湖になる。

☆八ッ場ダム予定地の上流では、毎日約60トンの石灰を投入して中和作業が続けられている。中和生物の沈澱池である品木ダムが満杯になりかけてきたので、底泥を浚渫して脱水し、品木ダム上流の処分場に入れているが、ヒ素混じりの脱水ケーキであるので、問題が起きている。この方式を続けることができなくなれば、八ッ場ダム湖に中和生成物が流れ込み、富栄養化と相俟って異様な色を呈するであろう。

☆さらに、八ッ場ダム湖は夏期は水位を大きく下げるので、観光資源には程遠いダム湖になる。

Ⅴ 川原湯温泉街はどうなるのか?(資料18~21ページ)
☆川原湯温泉街にはかつて20軒の旅館があったが、打越代替地で営業するのは5軒前後になる見通しである。

☆川原湯温泉街の今後は、温泉施設や地域振興施設の維持費用の負担問題、温泉の泉質、観光資源の問題、代替地の安全問題がある。

☆長い長い間、ダム計画に翻弄され、苦しめられ続けた地元の人たち、川原湯温泉街の人たちが生活再建を果たすことを願ってやまないが、これからの先行きは厳しい面がある。

Ⅵ 八ッ場ダムの堆砂問題 (資料22~24ページ)
☆八ッ場ダムは堆砂見込量が明らかに過小である。流域面積当たりの年間堆砂速度を比較すると、八ッ場ダムの堆砂見込量は利根川水系の既設ダムの堆砂実績の数分の一しかない。しかも、八ッ場ダムの流域は第4紀層で、地質が新しく、多くの土砂を供給しやすい条件にあるので、他の利根川水系ダムより早く堆砂が進行していくことは確実である。

☆同じような地質条件である近傍ダムとしては品木ダムがある。品木ダムには中和生成物以外に多量の土砂が流れ込んでいる。中和生成物を除外して計算すると、流域面積当たりの堆砂速度は八ッ場ダムの計画値の3.6倍もある。

☆近傍のダムと同様な速度で堆砂が進行していくとすると、八ッ場ダムは概ね50年後には夏期利水容量が半分になり、渇水時の補給機能が半減する。実際には堆砂はダム湖の上流部分の河床が浅いところから堆積していくので、利水機能の低下はもっと早く進行する。

☆ダム湖上流側の堆砂の進行は、流入する吾妻川の河床を上昇させ、ダム湖上流に位置する長野原町中心部で氾濫が起きる可能性を生じさせることが危惧される。

Ⅶ 浅間山の噴火と八ッ場ダム (資料25~30ページ)
☆浅間山は常に大きな噴火が起きる危険性をはらんでいる。2004年、2009年にも小規模な噴火があった。八ッ場ダムの検証では国交省にタスクフォースというチームがつくられ、浅間山の噴火についても次の検討結果が示され、問題なしとなったが、きわめて非科学的な検討であった。
 「八ッ場ダムの総貯水容量は1億750万㎥であるが、さらに常時満水位からダム天端まで約1000万㎥の容量があることから、天端までの容量は約1億1750万㎥程度となる。したがって、天明泥流規模の泥流、総流量1億㎥程度の場合、貯水位を事前に下げておくことによって、泥流は八ッ場ダムの貯水池内で捕捉されると考えられる。」

☆この検討は、水を抜くことができない堆砂容量の1750万㎥まで空にできるとしており、ダムの構造を踏まえずに計算している。さらに次の基本的な問題がある。

☆第一の問題は、泥流が八ッ場ダムに到達する前に、八ッ場ダムから事前放流して貯水池を空にできるとしていることである。中央防災会議の報告書によれば、天明泥流は浅間山から八ッ場まで到達する時間はわずか30分以内である。八ッ場ダムの貯水池が満杯の場合、空にするのに1日以上かかるから、浅間山の大噴火が突然起きた場合、とても間に合わない。

☆第二に、天明3年の浅間山噴火の泥流の総量を国交省は約1億㎥程度としているけれども、これは八ッ場より下流の原町での数字である。天明泥流は吾妻渓谷が遮られ、その上流部に堆積したから、八ッ場での泥流の総量は1億㎥よりはるかに多いはずである。

☆第三に、天明泥流はピーク流量がけた違いに大きい。中央防災会議の報告書によれば、天明3年の泥流のピーク流量は毎秒13~17万㎥もある。八ッ場ダム基本計画による最大洪水流入量は毎秒3千㎥規模であるから、想定洪水の40~60倍もある。

☆上記3点を踏まえると、浅間山噴火で天明3年並みの泥流が流下した場合、貯水池の事前放流はとても間に合わず、1億㎥よりずっと大量の泥流が一挙に八ッ場ダム湖に流入し、八ッ場ダム湖の水位が急上昇して、周辺の代替地を洪水が襲い、ダム下流部にも大きな洪水をもたらし、氾濫を引き起こすことになる。

ダム本体の問題
☆桁違いの流量の泥流が流れ込んだ場合、ダム本体そのものが持つかどうかも心配せざるを得ない。もともと、現在の八ッ場ダム本体予定地は熱水変質帯があったり、断層等の影響で節理が非常に多く、1970年の国会答弁ではダムサイトとして不適な岩盤とされていたところで、当時の本体予定地は現予定地より600m下流にあった。その後、1973年に吾妻渓谷への影響範囲を小さくするため、現在の予定地に変わった。

☆ところが、2007年12月、予想より岩盤の質がよかったとして、コスト縮減のため、ダム本体の岩盤の掘削深さを18mから3mへと浅くして掘削量を149万㎥から68万㎥へと半分以下に落とし、ダムのコンクリート量も160万㎥から91万㎥へと、大幅に減らしてしまった。

☆その結果、ダム本体工事費も大幅に減って、現在の全事業費4600億円の約9%になった。八ッ場ダムは全事業費が日本一大きいダムであるが、ダム本体工事にかけるのはその1割未満でしかない。このようなダムは他には例がなく、まことにおかしなダムである。

☆八ッ場ダムは地すべり対策もそうであるが、安全確保のため、最も金を投じなければならないところのコストをカットしているダムである。将来、大地震や浅間山噴火が起きた時には取り返しがつかない大惨事を起こす危険性がある。