八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

都知事選候補者への八ッ場ダムに関する公開質問

 東京都知事選挙を控え、八ッ場あしたの会では八ッ場ダムをストップさせる東京の会と連名で各候補者に公開質問書を送ることになりました。八ッ場ダム事業は国土交通省関東地方整備局が事業主体ですが、東京都をはじめとする利根川流域一都五県は八ッ場ダムの共同事業者です。このため、関東地方整備局は八ッ場ダムの事業費を増額したり工期を延長するための計画変更を行う際には、関係都県の同意を得なければなりません。東京都知事の姿勢は八ッ場ダム事業に大きく影響することになります。
 公開質問の内容と添付資料を転載します。
各候補者からの回答結果は、こちらに掲載しています。⇒https://yamba-net.org/wp/?p=6783

2014年1月17日

八ッ場ダムをストップさせる東京の会
八ッ場あしたの会

東京都の八ッ場ダム事業への参画に関する公開質問書

時下、ますますご清栄のことと存じます。
私たちは八ッ場ダム事業の見直しを求めて活動している市民団体です。

東京都は国土交通省関東地方整備局が1967年以来進めてきた八ッ場ダム事業の共同事業者です。八ッ場ダム建設の目的は、東京都を中心とする首都圏の利水(都市用水の供給)と治水(利根川の洪水対策)であり、このために東京都は八ッ場ダム建設事業と関連事業に852億円(起債の利息も含めると1,278億円)の負担金を支払うこととなっています。

政府は来年度、八ッ場ダムの本体工事に着手するとしており、2019年度の完成を目指しています。
一方、国土交通省関東地方整備局は2011年の八ッ場ダムの検証で、地すべり対策などで更に183億円の増額が必要と試算しています。ダム予定地の脆弱な地質、消費税増税、人件費・資材の高騰などを考えれば、これ以上の増額が必至であり、工期の更なる延長の可能性もあります。このように、八ッ場ダム事業の今後は混沌とした状況にあります。

東京都知事の姿勢は八ッ場ダム事業の今後に大きく影響しますので、以下7点について候補者の皆様にご見解を明らかにしていただければと思います。お手数をおかけしますが、1月23日(木曜日)までにファックスまたはメールでご回答くださいますよう、お願い申しあげます。

質問事項とご回答内容、ご回答の有無は当会のホームページなどで公開するとともに、マスコミにも告知させていただく予定です。

Q1 八ッ場ダム本体工事についてのお考えに該当する番号を○で囲んでください。

(1)速やかに着手すべき 
(2)着手を見合わせるべき
(3)どちらともいえない/分からない
(4)その他(具体的に)

Q2 Q1で「速やかに着手すべき」と答えた方にお尋ねします。
着手すべき理由を○で囲んでください。(複数回答可)

(1) 水道水源は多ければ多いほどよい。
(2) 利根川の氾濫防止のために八ッ場ダムが必要。
(3) その他(具体的に)

Q3 Q1で「着手を見合わせるべき」と答えた方にお尋ねします。
見合わせるべきとする理由を○で囲んでください。(複数回答可)

(1) 東京都は大量の余剰水源を抱えており、水需要は減り続けている。
(2) 八ッ場ダムができると、これまで水道に使ってきた地下水を切り捨てなけ
ればならないが、震災対策としても貴重な自己水源は保全すべき。
(3) 利根川の治水には、八ッ場ダムより効果の高い対策を選択すべき。
(4) 東京都における水害は内水氾濫が最も多いので、この対策を優先すべき。
(5) 八ッ場ダムが災害を誘発する危険性があり、 その対策のために東京都の
負担金も増える可能性が高い。  
(6) その他(具体的に)
                               
Q4 八ッ場ダムの事業費を増額するためには、共同事業者である関係都県の同意が必要です。八ッ場ダムの事業費は2004年に当初の2100億円から現在の4600億円に増額されました。東京都はこの増額を了承するにあたり、「これ以上の増額は認められない」と文書で明らかにしています。今後、国交省関東地方整備局が事業費再増額への同意を東京都に求めた場合、これを認めますか?

(1)認める。
(2)認められない。
(3)その他(具体的に)

Q5 八ッ場ダムは昨年11月、3度目の工期延長が決定し、2019年度完成をめざすことになりました。しかし、本体工事や安全対策に多くの問題を抱えており、さらに工期が延長される可能性があります。一方、東京都でも2020年代には人口減少が始まり、水需要はさらに減少すると予測されています。関東地方整備局が工期の更なる延長への同意を東京都に求めた場合、これを認めますか?

(1)認める。
(2)認められない。
(3)その他(具体的に)

Q6 八ッ場ダムの予定地には国の名勝・吾妻渓谷、自然湧出の川原湯温泉があり、上野駅から特急で直行できる観光地として、都民の憩いの場ともなっています。また、水没予定地には縄文時代から江戸天明期までの数多くの遺跡群があり、注目されています。現地の地域振興について、どうお考えになりますか?
(1)ダムを早期に完成させ、これまで通りダム湖観光による地域振興をめざ
す。
(2)自然景観、歴史遺産を活かし、地域本来の力を活かした地域振興を図る。
(3)その他(具体的に)

Q7 八ッ場ダム事業では、事業のために長年犠牲となってきた地元のために、地域振興事業、生活再建事業が行われており、東京都もその費用を負担していますが、地域の衰退に歯止めがかかっていません。この点について、どうお考えになりますか?
   
(1)これまで行ってきた地域振興事業、生活再建事業を進める。
(2)ダム建設を中止し、地域の自然景観、歴史遺産を活かした地域振興のために東京都も資金を負担する。
(3)その他(具体的に)

以上の他に、八ッ場ダム問題に関してご意見がありましたら、お書きください。

【添付資料】八ッ場ダム事業と東京都


1 八ッ場ダム事業の略年表

1952年 八ッ場ダム建設の構想が最初に浮上
1967年 八ッ場ダム事業始まる
1986年 八ッ場ダム事業の基本計画(総事業費2110億円、2000年度完成)を策定
2001年 第1回計画変更:工期を2010年度に延長
2004年 第2回計画変更:総事業費を2110億円から4600億円に増額
2008年 第3回計画変更:工期を2015年度に再延長
2013年 第4回計画変更:工期を2019年度末に3度目の延長

2 東京都の水需要予測

キャプチャグラフ 東京都水道の一日最大配水量は減少の一途を辿っており、最近20年間で24%も減少しています。しかし東京都は右図のとおり、実績と乖離した水需要急増の予測を行い、八ッ場ダム事業へ参画し続けています
 配水量の減少は漏水防止対策、節水型機器の普及等によるものですが、2020年以降、東京都も人口減少が始まるので、水需要の減少傾向は今後も続きます。

3 東京水道の貴重な自己水源「地下水」

 東京都多摩地域では現在、40万㎥/日の地下水が水道水源として利用されています。地下水は放射能汚染などの心配がない貴重な自己水源です。しかし、都水道局の水需給計画は地下水の代替水源として八ッ場ダムが必要だとしており、八ッ場ダムの完成とともに地下水が切り捨てられる可能性が高いとされています。

4 東京都の負担金

 八ッ場ダム事業は2100億円から4600億円へと事業費が倍増し、全国トップです。事業は上記の略年表にあるように迷走を続けており、今後、地すべり対策などによる再増額が必至とされています。東京都の負担割合は約14%と決められており、増額に合わせて負担金も自動的に膨らみます。
 さらに八ッ場ダムが完成すれば、維持管理費の負担も必要となります。ダム施設の管理費、堆砂対策のための浚渫費、ダム所在交付金を合わせると、年間40億円規模になると予想されますので、東京都は毎年、その14%を支払い続けなければなりません。その金額は50年間では280億円にもなります。

5 八ッ場ダム事業の今後

 八ッ場ダムの完成予定年度は現在、2019年度末となっています。しかしダム本体予定地を通るJR線の付け替えなどの関連工事が大幅に遅れており、また、試験湛水中に地すべりが発生すれば、奈良県の大滝ダム、埼玉県の滝沢ダムのように対策工事に何年もかかる可能性もありますので、予定通りに完成するかは不明です。さらに、今後は事業費大幅増額のための基本計画変更が必要ですが、それに対して関係都県が拒否反応を示しているので、先行きは混沌としています。

6 八ッ場ダム事業と東京都との関係

 八ッ場ダムの治水効果はわずかであり、大量の余剰水源を抱えている東京都にとって八ッ場ダムは不要です。来年度に始まる本体工事によって、水没予定地のかけがえのない自然景観や歴史遺産が破壊され、完成後は子孫に巨大な負の遺産となります。しかし東京都が事業から撤退すれば、国土交通省関東地方整備局は八ッ場ダム事業の見直しを迫られることになります。
 東京都知事は八ッ場ダム事業において重要な役目を担っています。