2011年10月6日

国土交通大臣 前田武志 様

八ッ場ダムの再検証と住民支援策を求める要請書

八ッ場あしたの会(代表世話人 野田知佑ほか)

1.八ッ場ダム事業の真に科学的・客観的な再検証を求めます。

 去る9月13日、国土交通省関東地方整備局は「関係地方公共団体からなる検討の場」で6都県知事たちに八ッ場ダムの検証結果の案を示しました。その案は利水・治水の両面で、八ッ場ダム案が他の対策案と比べて事業費が圧倒的に安く、最適案として八ッ場ダムが選択されるべきであるというものでした。しかし、その検証の中身をみると、八ッ場ダム推進の結論が先にある、まことに恣意的な検証であって、国民に約束していた「予断なき検証」、科学的・客観的な検証とはかけ離れたものでした。
 利水に関しては「水需要が減り続け、水がますます余っていく状況で、これ以上の水源開発が必要なのか」を徹底的に問い直さなければならないにもかかわらず、そのことを不問にし、各利水予定者の過大な要求水量をそのまま認めて、大量の水源確保を前提とした非現実的な代替案、例えば、静岡県の富士川から導水する荒唐無稽な案との比較しか行われませんでした。
 治水面でも、八ッ場ダムの治水効果についての科学的な検証は行われず、検証の中身は八ッ場ダムの効果を従前の公表値より格段に大きくして、その代替案の事業費が大きく膨らむようにした上での代替案との比較だけでした。利根川流域住民の命を守るために真に必要な治水対策が何かを求めることなく、流域住民の安全確保を置き去りにした検証でした。
 八ッ場ダムが治水利水の両面で本当に必要なのか、真に科学的・客観的な検証を改めて実施することを求めます。

2. 自然の猛威を踏まえた利根川治水対策の抜本的な見直しと、八ッ場ダムがもたらす災害誘発の危険性の徹底検証を求めます。

 前田大臣は、八ッ場ダムに関して「東日本大震災は国土の在り方について痛切な問題を提起した。自然の猛威をどう受け止め、対応するかの議論が欠かせない。」と述べました。自然の猛威はまことに凄まじく、9月初旬の台風12号でも、記録的な豪雨が各地で降り、紀伊半島を中心に各地で甚大な被害がありました。
 このような自然の猛威を踏まえて、八ッ場ダムについて次の二点の検証を行うことが必要です。
 一つは、計画想定を超えた超過洪水が来た時に、利根川の洪水被害軽減に八ッ場ダムが本当に役に立つのか、超過洪水到来時に人命を守るために必要とされる治水対策とは何かを明らかにすることです。台風12号で和歌山県下のダムは満杯になり、治水機能を失いました。また、雨の降り方はさまざまです。同台風では群馬県南部でも記録的な降雨があり、伊勢崎市などで浸水被害がありましたが、それは利根川からの越流ではなく、内水氾濫でしたから、仮に八ッ場ダムがあっても、何の役にも立ちませんでした。
 もう一つは、東北地方太平洋沖地震の最大級の地震動が起きた場合の八ッ場ダムによる災害誘発の危険性に関する検証です。八ッ場ダムのダム本体は最大級の地震動も考慮して設計されているのでしょうか。また、貯水池予定地周辺は地質が脆弱で、湛水後の地すべりが心配されていますが、最大級の地震動によって地すべりが誘発される危険性はないのでしょうか。さらに、八ッ場ダムの代替地は民間の宅地造成では例がない超高盛り土の造成が行われていますが、最大級の地震動によって崩落の危険性はないのでしょうか。

3.現在の河川行政に批判的な専門家を入れた第三者機関による公開の場での検証を求めます。

 以上述べた、真に科学的・客観的な八ッ場ダムの検証、自然の猛威を踏まえた利根川の治水対策の抜本的な見直しと八ッ場ダムによる災害誘発の危険性の徹底検証を可能とするために、現在の河川行政に批判的な専門家を入れた第三者機関を設置し、公開の場で検証することを要請します。

4.ダム予定地の住民への支援策の早急な実施とダム中止後の生活再建支援法の早急な制定を求めます。

 ダム予定地の住民は長年の間、ダム計画でがんじがらめの状態におかれ、生活設計が立てられず、苦しみの日々を送っています。水没予定地にある川原湯温泉は、ダムの関連工事により観光業に大きな支障をきたしているとされています。ダムの検証と切り離して、地元住民への支援策を早急に具体化するよう求めます。
 2年前の政権交代後に国交大臣が制定を約束した、いわゆる「ダム中止後の生活再建支援法案」はその後、国会への上程もされていません。ダム予定地の住民はダムが中止になった場合はそのまま放置されるのではないかと、大きな不安を抱えています。「ダム中止後の生活再建支援法案」を早急に制定することを要請します。

以上