さる7月12日、FM東京の「タイムライン」に当会運営委員の嶋津暉之さんが出演し、利根川の渇水を引き起こしている上流ダムの過剰放流について説明しました。

 7月12日(火)古谷経衡●過剰放水が引き起こす利根川の渇水
 首都圏の水がめとなる利根川水系のダム貯水率の低さが連日伝えられています。利根川渇水の実態とは? 

 放送の文字起こしを掲載します。一部要約し、補足説明を括弧に入れています。

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 首都圏の水がめとなる利根川水系のダムの貯水率が下がって、先月6月16日以降、利根川流域では10パーセントの取水制限が行われています。その原因は暖冬による雪不足であったり、雨の少なさと言われておりますけれども、このような中で、必要のないダム建設問題に取り組む、水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之さんは、実は毎秒平均80トンという大量の水が海に流れ出ていると言います。
 この時間は首都圏の水資源利用の実状を取り上げます。

古谷「嶋津さん、よろしくお願いします。今日は渇水問題について、専門家の嶋津さんにお話を伺うということでお越しいただいたんですが、まず、嶋津さん、民主党政権の時、にわかに話題となった八ッ場ダムの問題について提言しておられたということですが、これまで様々なダム問題について提言されてきたこと、初めて聴くリスナーのためにも、経歴というか、どういうことをやられてきたのか、説明していただきたいのですが。」

嶋津「私は1966年に東京大学の工学部を卒業し、その後大学院に進んで、1972年に東京都の環境局に入りまして、地下水行政に携わりました。当時、東京都は地盤沈下が進行しておりましたので、その原因の一つである工場の地下水汲み上げをどうやって減らしていくかということで、工場の水使用合理化ー水節約を徹底させるという技術的な指導を行いました。これは一定の成果をあげまして、工場で汲み上げる地下水をかなり減らすことができました。その後、1984年、同じ東京都の環境科学研究所に移りまして、様々な視点から水問題の研究を進めてきました。2004年に東京都を退職しています。
 こうした仕事の傍ら、長年ダム問題に関わってきております。ダムというのはやはり、自然に対して大きな影響を与えるものでありますし、ダム予定地に住んでいる人々の生活を根底から覆してしまうものです。」

古谷「水没した村の人々のドキュメントなどを見ると、こちらも涙を禁じ得ないところがありますよね。」

嶋津「ですから、本当に必要かということですよね。必要最小限のダム建設にしなければならないにも関わらず、水需要の過大予測ーこんなにも水が必要だという架空の予測が作り上げられているのではないかと。また、治水上必要と言われるけれど、決してそうではないだろうということで、ダムをなるべく造らせない方向で考えることができないかと、ダム問題に長年関わってきました。」

古谷「今、都内でも関東圏でも、今年は酷暑になるし雨も降っていないから、10%の取水制限に頑張って協力させてくださいみたいなことが盛んに色々なところで言われているのを見るんですけど、これはちょっと違うんじゃないかというご提言を色々なウェブ媒体とか、ハーバードビジネスオンラインでもされていますけれど、これはどういうことなんでしょう?」

嶋津「節水に協力することは必要だと思います。今年の利根川上流のダムは急減したわけです。確かに暖冬で雪が少なかった、5月の降雨量が少なかったという理由は色々ありますけれど、貯水量の変化を見てみますと、利根川水系には8基のダムがありますが、5月15日頃は8ダム全体で4億トンを超える貯水量があったんです。ところがその後、ダムの貯水量が急減していき、6月15日頃には1億7千万トンまで減ってしまうんですね。その後は(雨が降ったため)横這いなんですけれど、つまり、一か月の間に2億3千万トンもの貯水量が急減してしまったんですね。これを平均しますと、毎秒90トンの水が8ダムから下流に放流されたということです。これほど大量の放流が本当に必要だったのかということを考えなければならないということです。」

古谷「(ダムからの)放流は、人為的にやっているわけですね。何のためにやるのですか?」

嶋津「利根川の中流や下流で、東京、埼玉などの都市用水や農業用水を取水しております。雨が時折降っている時は、利根川の流量に十分な余裕があるのですが、雨が降らなくなると流量が落ち込みます。これを補うために放流するということなのですが、その放流が過剰ではなかったかということですね。」

古谷「なるほど。では、普段は放流しないわけですね?」

嶋津「はい。放流量について具体的に申しますと、利根川の最下流に利根川河口堰があります。河口堰から海に流すべき流量を河川維持用水といいますが、毎秒30トンとなっているんですね。ところが、ダムからどんどん放流した5月後半から6月前半、平均すると河口堰から海に80トン以上の水が流れているのです。本来30トンでよい筈のものが50トンも多いということです。」

古谷「ムダに流してしまっているんですね。」

嶋津「ええ、このダムからの過剰放流によって、利根川上流ダムの貯水量が5月中旬から6月中旬にかけて急減したということですね。」

古谷「テレビの報道とか新聞の写真を見ていると、ダムの水位がどんどん減ってくると、(ダムに沈められた)木とか、時には車なども見えたりして、これはとんでもないことだと視覚的なイメージを与えますでしょう。もしかして、それを意図してやっているのかな~、と」

嶋津「そうですね。よく取り上げられるのは矢木沢ダム(群馬県)ですね。湖底が露わになっているような映像が流れて、こんなひどいことになっているのかと思いますよね」

古谷「実際、ショックを受けますよね」

嶋津「これもカラクリがありまして、矢木沢ダムというのは”隠し水源”があるんです。普段見ている貯水量の他に3,800万トンぐらいの発電専用貯水量があるんです。ですから、万が一の場合はそれを使えばよいのですが、これを見せないで、これだけしか貯水量がないと言っているわけです。」

古谷「なるほど。安倍内閣でもそうですし、小泉内閣でも、民主党政権の時もそうでしたが、要するにダムは造りすぎじゃないかと。もともとは土建国家批判とかあって、公共事業の予算は冷や飯を食ってきたということがありますよね。それが反転攻勢というか、やっぱり震災もあったし、渇水や異常気象、地球の温暖化もあるし、予算をつけてもらわなくては困るという官僚の思惑があるように思いますが、どうでしょうか?」

嶋津「私たちはそう考えます。ダムからの過剰放流は、これを促すような放流ルールが作られているのです。ルールを変えればいいのですが、改めようとしないんです。逆に時折渇水が起きてくれた方が、今、事業中の八ッ場ダム(事業主体・国交省関東地方整備局、ダム予定地:群馬県)、あるいは同じ利根川水系では南摩ダム(事業主体:独立行政法人・水資源機構、ダム予定地:栃木県)の必要性をアピールすることができますので。」

古谷「ダムを造らなければならないという話になりますよね。」

嶋津「ですから、たまには渇水が起きてくれた方が国交省の河川官僚にとっては望ましいことなんです。ですから、過剰放流を促すようなダム放流のルールがだいぶ前から問題にされていながら、一向に改められる気配がないということです。」

古谷「ダムと言えば、日本の戦後の電力需要を補うために黒部ダムとか造って役に立った面があったと思いますが、その後どんどんどんどん造っていきましたけれど、高度成長が終わって一段落してもまだ造り続けてきた面があると思うんですが、どうでしょう?」

嶋津「そうですね、もう時代が変わっているんですね。高度成長時代は確かに都市用水の需要が伸びて、ダムで水源を確保しなければならないという面もあったかもしれませんが、しかし高度成長時代はとっくに終わって、利根川流域の都市用水の需要は、1990年代からこの20年間、水道の給水量は全体として減る一方なんです。」

古谷「それはどうしてなんですか? (利根川流域の)人口はまだ増えていますよね?」

嶋津「人口は若干増えていますが、一人当たりの給水量がどんどん減ってきているんです。」

古谷「それは水道水を使わなくなってきたということですか? 」

嶋津「節水を心掛けてきたということですね。漏水防止対策(、節水機器の普及)などいくつか要因があります。」

古谷「漏水は多かったのですか?」

嶋津「結構多かったんですよ。水道給水管から外に漏れ出てしまうと料金収入になりませんので、各自治体の水道局が一生懸命取り組んで、漏水が減ってきたというのも一つの要因ですね。」

古谷「それで水使用が減っていると。では、ますますダムは必要ありませんよね?」

嶋津「ですから、八ッ場ダムとか南摩ダムは必要性がなくなっているんです。だけれども今なお事業が進められていると。そういう状況で渇水が起きてくれた方がダムの必要性をアピールできるので、いまだに過剰放流をしていると我々は見ています」

古谷「ダム行政にかかわると、官僚の方が生命が危ないとか、危険であるとか、とんでもないことになるということを必ずフックにして・・ダム以外にもあらゆるところで見られるんですけれど、これもその一種と考えていいということですか?」

嶋津「そうですね。そういう意思のもとに水行政が進められているというのが現実ですね。」

古谷「なるほど。どうですか、今井さん」

今井「そうですね、まさに参議院選挙があったばかりで、今度は都知事選もありますし、衆議院選挙ももしかして近くあるという話の中で、こういうことを考えた上で自分たちの一票を考えたいというのがありますよね。」

古谷「嶋津さん、ダム利権とかに切り込む政党というと、今、どこなんですか?」

嶋津「もともと民主党は政権を取った時、八ッ場ダム中止を表明したんですけれども、河川官僚の巻き返しをくって、結局八ッ場ダムを推進してしまったわけですね。今は、共産党、社民党、生活の党もそうかなと思いますけれど。民進党の中でも、ダム反対を主張している議員さんもいらっしゃいます。」

古谷「自民党は参院選で勝って、無所属を入れれば2/3を取るところまでいったんですが、自民党の中にはそういう声はないのですか? 自民党の中にもダム利権と関係のない議員はいますよね?」

嶋津「そうですね、個人的にはそういう方を数人知っていますけれど、ほんの少数ですね。」

古谷「少数ですか・・・。難しいですね。これは、市民社会から外圧をかけていくしかないですよね?」

嶋津「ええ、ですから、今、時代が変わって、ダムを造る時代ではないんだということを我々は強く訴えていきたいですね。」

古谷「最後に一つ。1990年代に特に西日本で大渇水があったと思うんですが、あの時は本当にとんでもない渇水で、みんな困ったと思うんですけれど。もう一つは地球環境の激変というのがあって、いつ何時、大酷暑が、大熱波が襲うかわからないということも、(ダム建設の)一つの理由としてくるじゃないですか。それはどうなんですか?」

嶋津「そのへんは、地球温暖化で大渇水あるいは大洪水が来るかもしれないと言われるんですけれど、どこまでそれを信じてよいかわからないんですね。ダムを造る口実のために持ち出されている面が否定できないと思います。」

古谷「なるほど、地球環境などの問題はあるけれど、現状ではダムは過剰で余っているという認識で間違いないと。」

嶋津「そうです。ダムは造りすぎたということですね。」

古谷「ちなみに、一番これはひどすぎるというと、八ッ場ダムの他に何かありますか?」

嶋津「たとえば長崎県の石木ダムですね。これは長崎県が造るダムですけれど、今、(水没予定地に)13戸の人々が住んでいるんです。その人たちの土地、家屋を奪って無理やり造ろうとしているんです。」

古谷「それはひどい話ですね。かつて1950,60年代の高度成長時代にはそういうダムもたくさんありましたが、今も・・・それはひどい。」

今井「今日は嶋津暉之さんにお話を伺いました。嶋津さん、どうもありがとうございました。」

—文字起こし終わり—

 利根川上流ダムからの過剰放流について、嶋津さんの論考を以下のページに掲載しています。
 http://yamba-net.org/?p=15963
 「渇水報道」の真相ーつくられた渇水 ~利根川水系ダム貯水量急減の原因「ダムの過剰放流」(2016年)

 ハーバードビジネスオンラインの記事はこちらです。
 http://hbol.jp/99662
 利根川は本当に「渇水」しているのか?