現状レポート

(更新日:2012年5月8日)

利根川流域市民委員会

利根川流域住民の皆さんへ(2006年2月13日)

利根川流域住民の皆さんへ

河川をめぐって、国と国民の攻防戦が最終段階を迎えようとしています。
水問題の専門家、嶋津暉之さんから利根川流域住民に大同団結を呼びかけるメッセージを掲載します。

利根川水系河川整備計画の策定に対して
利根川流域住民の声を結集しよう!

1 河川法による治水面でのダムの上位計画

 1997年に河川法が改正され、利根川等の各水系ごとに河川整備基本方針と河川整備計画を策定することになりました。また、この改正により、河川環境の整備と保全が河川法の目的に追加され、さらに、整備計画の策定において地域の意見を反映することが求められるようになりました。

  • 河川整備基本方針
     河川整備の長期的な目標を定める。ダム名は記載しない。
  • 河川整備計画
     今後20~30年間に行う河川整備の事業計画を定める。ダム名を記載する。

治水面でダム建設を位置づけ、ダムの上位計画となるのは河川整備計画です。
利根川水系ではこの河川整備計画の策定がこれから急ピッチで進められていきます。

旧河川法時代の工事実施基本計画

 旧河川法時代に策定されていたのは工事実施基本計画で、この計画には、河川整備の長期的な目標と河川整備の事業計画の両方が含まれていました。

 新河川法の経過措置として、河川整備基本方針と河川整備計画が策定されるまでは従来の工事実施基本計画をそれらの代わりとしてみなすことになっていますが、

 河川整備計画と工事実施基本計画は意味するところが全く違いますので、このみなし規定を長年の間、使い続けることは法の趣旨に反することです。

 工事実施基本計画は
  (1)環境の視点がない。
  (2)地域の意見を反映したものではない。
  (3)長期目標と事業計画が混在している。

2 利根川水系における動き

 河川法が改正されてから8年も経過したにもかかわらず、利根川水系においては河川整備計画が策定されておらず、八ッ場ダム等のダム事業は上位計画がないまま、法律を逸脱した状態で進められてきました。

(1) 河川整備基本方針

 つい最近まで河川整備基本方針の策定の動きさえ見られませんでしたが、昨年の10月になって急に利根川水系に関する審議会が開かれて、形だけの審議が行われてきました。審議終了ということで、2月中頃には基本方針が策定されることになっています。

 河川整備基本方針で最も重要な点は、基本高水流量、すなわち、想定洪水流量を何m3/秒にするかです。利根川の工事実施基本計画では、来るはずのない過大な洪水流量(八斗島地点で22,000m3/秒)が想定され、そのために八ッ場ダムの他に、数多くのダム建設が必要とされてきました。これから新たに数多くのダムを建設することは事実上不可能なことです。ところが、審議会は基本高水流量の是非について全く議論を行わずに、従前からの数字22,000m3/秒を踏襲した事務局案を承認してしまいました。

 そのため、利根川水系の河川整備基本方針は、従来の工事実施基本計画と同様、実現することが困難で、現実性がなく、意味のないものになりました。

(2)河川整備計画

 国土交通省関東地方整備局と各事務所(9事務所)が利根川水系河川整備計画の策定作業を始めました。平成18年度には河川整備計画の原案が示され、住民の意見を聴くなどの手続きが進められることになっています。

 上述のとおり、河川整備基本方針は現実性がなく、意味のないものですが、一方、河川整備計画は今後20~30年間に実施する河川事業の内容を書くものですから、現実的な意味を持ちます。

 河川整備計画は流域住民の安全と河川の環境を真に守ることができる計画でなければならないはずですが、官僚たちにまかしておくと、大規模工事を行うことを自己目的化した計画になってしまうでしょう。国は八ッ場ダムを河川整備計画に入れることを予定しています。

 河川整備計画の策定では住民の意見を反映することが求められています。この点で、住民に対して開かれた形で整備計画の策定作業を進めてきて、大いに参考になるのは、淀川水系です。一方で、形だけの流域委員会をつくって数回の会議で審議を終了し、型どおりの公聴会で住民の意見を聴いたことにする水系もあります。

淀川水系の場合

 2001年2月に流域委員会が発足し、さらに2005年2月に新たな流域委員会が発足しました。委員数は約50名で、その人選は一般からの一部公募も行った上で、有識者からなる準備会議で審議して決定しました。また、委員会の運営は委員が自主的に決定し、事務局を民間シンクタンクが担って、会議、会議資料、議事録等を原則としてすべて公開しています。さらに、委員会においては傍聴席からも意見を述べる時間がとられています。

3 利根川流域住民の声を結集しよう

 利根川水系においてこれからどのような流域委員会が設置されていくのか、また、住民の意見の反映がどのように行われるのか、全く予断を許しません。このままでは住民の意見を聴くポーズをとるだけで終わってしまうことが予想されます。そうならないようにするためには、私たち住民の意見を関東地方整備局に対してどしどしぶつけていくことが必要です。

 利根川流域の住民の声を結集して、住民の参加が保障される流域委員会を設置させる運動を展開していきましょう。

 流域委員会において科学的な議論が十分に行われるようになれば、利根川水系河川整備計画への八ッ場ダムの記載を阻止することができるに違いありません。

 流域住民の安全と河川の環境を本当に守ることができる利根川水系河川整備計画を策定させる運動に是非ご参加ください。