現状レポート

(更新日:2012年5月8日)

利根川流域市民委員会

利根川水系河川整備計画の策定に関する公開質問書(その2)の提出について
(2007年3月5日)

2007年3月5日

国土交通省河川局長 門松  武 様
関東地方整備局長  中島 威夫 様

利根川流域市民委員会
共同代表 佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
吉田正人(江戸川大学教授)
連絡先  深澤洋子 TEL&FAX 042-341-7524
〒187-0001 東京都小平市大沼町1-106-19
高橋盛男 TEL&FAX 047-367-2857

利根川水系河川整備計画の策定に関する公開質問書(その2)の提出について

 去る1月9日に提出した公開質問書に対して1月16日に貴局から書面で回答をいただきました。書面で回答を出されたことは評価しますが、こちらが項目を上げて具体的に質問したことに対する回答はなく、内容が乏しいものでした。その回答を要約すれば、次のようなものでした。

1 住民の意見を反映させる方法の改善について
 公平性を確保する観点から誰でも参加でき、かつ、意見を言うことが出来る方法として、今回の公聴会及び意見募集を行うこととした。

2 有識者会議の傍聴者の処遇の改善について
 指摘の点等を踏まえ、今後の有識者会議に向け改善を検討していく。

3 意見を述べるにあたって必要な基本的な事柄について
 有識者会議資料にある主要メニュー等は検討途上のもので、今後の検討によって変わりうるものである。(だから、現段階ではその元データを公表することはできない。)
 私たちの質問に対して一応の答えになっているのは2だけです。1も3も具体性のないものでした。また、2月22日の全体有識者会議と全体公聴会、23日以降のブロック別公聴会を傍聴して、これらの運営のあり方にもいくつかの疑問がでてきました。そこで、前回の質問書に対して答えていないことと新たに出てきた疑問点をまとめて再度、公開質問書を提出することにしました。
 公開質問書(その2)の内容は下記のとおりです。今回は具体的にお答えくださるよう、お願いします。
 回答は連絡先の深澤の方へ、3月19日(月)までにお送りくだされば幸いです。
 なお、前回の質問項目2「有識者会議の傍聴者の処遇」については貴局の回答「改善を検討していく」を信じて再度質問しないことにしますが、傍聴者の処遇を環境省並みまで改善することを強く要望しておきます。

利根川水系河川整備計画の策定に関する公開質問書(その2)
1 今回の公聴会及び有識者会議を傍聴して生じた疑問点について

 2月22日の全体有識者会議と全体公聴会、23日以降のブロック別公聴会を傍聴したところ、これらの運営のあり方にもいくつか疑問がでてきましたので、下記5点の質問にお答えください。

(1)公聴会を聴く行政の責任者は誰なのか。

 2月22日の全体公聴会では、公述を聞く行政の責任者が誰なのか、責任者が顔を見せるようにという意見が会場から出ました。それに対して、司会役の渡邉泰也河川専門官が、行政の総体として聞いていると答えるだけで、誰が責任者なのか、また、その責任者が出席しているのかどうかもわかりませんでした。しかし、このような公聴会を開く場合、行政の責任者が最初に挨拶をし、最後まで公述を聞くのが常識的な運営方法だと思います。そうでなければ、公述人は誰に向かって公述しているのか分からなくなります。そのようなものは、公聴会ではなく、弁論大会に過ぎません。全体公聴会及び各ブロック別公聴会における行政の責任者がそれぞれ誰なのかを明らかにしてください。

(2)公聴会における利根川の概要説明について

 全体公聴会でもブロック別公聴会でも関東地方整備局がビデオを使って利根川の概要説明をしました。休憩時間を入れると、これに45分の時間が使われました。しかし、その内容はその後の公述には不要なものであって、そこで大事な時間を消費することの意味が理解できませんでした。その時間を公述に当てれば、全体公聴会ではあと3人の人が公述することができました。全体公聴会では公募したけれども、人数枠で公述できない人が17人もいました。このような事前説明をやめて、公述人の枠を広げる考えがないかどうかを明らかにしてください。

(3)公聴会で町長と前町長が公述したことについて

 2月22日の全体公聴会では板倉町長と前長野原町長が公述しました。しかし、今回の公聴会は広く住民の意見を聴く場であって、自治体の首長等が意見を述べる場ではありません。関東地方整備局が自治体の首長等の意見を聞く場は別に設けることができるのであって、住民を対象とした公聴会で首長等が公述するのは理解できません。首長等の公述のために、公募した住民2人が公述の機会を奪われました。まず、板倉町長と前長野原町長がどのような経緯で全体公聴会において公述することになったのか(本人の応募なのか、あるいは関東地方整備局からの依頼なのか、あるいは他の経緯なのか)を明らかにしてください。そして、首長等(少なくとも現職の首長)が、住民を対象とした公聴会で公述することが妥当なのかどうか、貴局の見解を明らかにしてください。

(4)有識者会議の運営方法について

 2月22日の全体有識者会議では、1時間にわたり、貴局の各事務所が住民から寄せられた意見の要約を説明しました。しかし、その内容は配布資料を見ればすぐにわかることであって、あえて説明を要しないものばかりでした。その結果、42人の委員が出席したにもかかわらず、委員の発言時間は延べ15分程度、意見を述べたのはわずか5人だけで、それもそれぞれひどく短い時間でした。委員が意見を出し合って議論することに有識者会議の意味があるはずなのに、意見を述べる時間を極端に短くして議論の時間も設けないのは、会議の運営の仕方として異様な感じがしました。貴局はこのような会議の運営方法をどのように考えているのか、その考えを明らかにしてください。

(5)公述人・意見募集の周知について

 今回の公聴会の公述人および意見の募集が行われることを流域住民のほとんどが知ることができませんでした。関東地方整備局と各事務所のホームページに募集案内が掲載されているとはいっても、そのホームページを見る人はきわめて限られています。ブロック別の公聴会への応募は大幅に定員割れですし、傍聴者も多くはありません。
(1) 貴局は今回の公聴会の公述人および意見の募集を周知するために、ホームページへの掲載および記者発表以外にとった手段があれば、具体的にどこでどのような手段をとったのかを明らかにしてください。
(2) 貴局は、地方紙を使って自ら推進しようとしている事業を宣伝する全面広告をたびたび行っています。そのような予算があるのなら、今回の公聴会開催、公述人募集、意見募集を新聞で周知宣伝するためにこそ、税金を使うべきです。このような重要な問題について意見を言える機会があることを、ほとんどの流域住民は知ることができませんでした。国民の知る権利の侵害とも言えます。事業を宣伝するときと同様に新聞広告の手段を用いて公述人募集・意見募集を周知する考えがないかどうか、お答え下さい。それができないということならば、その理由をお聞かせ下さい。

2 住民の意見を反映させる方法の改善について

 前回の質問書では、(1)有識者会議に住民が委員として参加すること、(2)有識者会議において住民やNGOと意見交換を行う場を設けること、(3)公聴会を一方通行の意見表明の場ではなく、双方向に意見交換のできる公聴会に改善すること、(4)住民と国交省が議論をする場を設けること という4種類の方式のいずれかで住民の意見を反映させることを求めました。それに対する貴局の回答は「公平性を確保する観点から誰でも参加でき、かつ、意見を言うことが出来る方法として、今回の公聴会及び意見募集を行うこととした。」というもので、要するに一部の住民だけを選んで意見を聴くのは公平ではないというものでした。
 しかし、公平性に関してむしろ問題すべきことは、貴局が有識者会議の委員を何ら第三者の意見を聞くことなく、貴局の判断だけで選定したことです。貴局のやり方は、第三者が公募も行った上で委員を選定した淀川水系流域委員会方式と比べると、雲泥の差があります。公平性に関してはむしろ、それをないがしろにしている貴局に反省を求めたいと思いますが、そのことはさておき、貴局の回答が関係するのは(1)だけです。(2)は有識者会議において淀川水系流域委員会のように傍聴席から発言できるようにすれば、傍聴に参加した住民の全員が対象になるので、一部の住民を選ぶということになりません。また、(3)の公聴会を双方向性の公聴会にすることも同様です。(4)も意見交換を求める住民の要望に貴局が真摯に応じればよいのであって、公平性を欠くという話とは無縁ものです。
 そこで、上記の(2)、(3)、(4)について再度質問しますので、「公平性を欠く」という回答ではなく、住民の意見を反映させるそれぞれの方式を実現できないかどうかを具体的にお答えください。

(1) 有識者会議において傍聴者が発言する場および傍聴者との意見交換を行う場を設けることについて

 他省庁の会議、たとえば、環境省の「生物多様性国家戦略の見直しに関する懇談会」では、毎回、傍聴者の発言の機会が設けられ、また何回かの会議のうち1回はNGOと委員が意見交換を行う機会としています。
 利根川水系河川整備計画の策定に係る有識者会議において、傍聴者の発言の機会を設ける考えがないかどうか、さらに意見交換も行えるようにする考えがないかどうかを明らかにしてください(もしその考えがなければ、その理由を示してください)。

(2)公聴会を一方通行の意見表明の場ではなく、双方向に意見交換のできる公聴会に改善することについて

 日本では公聴会といえば、住民が一方的に意見を述べる場であって、行政側とディスカッションを行うことはまったくできません。しかし、欧米では公聴会といえば、通常は双方向性の公聴会であって、住民は意見を述べるとともに行政側と十分にディスカッションをすることができます。今後開かれる公聴会を双方向性の公聴会に改善し、住民と国交省が議論できる方式に変える考えがないかどうかを明らかにしてください(もしその考えがなければ、その理由を示してください)。

(3)住民と国交省が議論をする場について

 住民の申し入れに応じて、住民と国交省が議論する場を設ける考えがないかどうかを明らかにしてください。もしその考えがないならば、住民と国交省との議論の場を設けることを避ける理由、すなわち、議論の場を設けることによってどのような問題が生じると考えているのかを明らかにしてください。

3 河川整備計画の内容を考える上で必要な基本的な事柄について

 前回の質問書では、下記の6項目について質問しましたが、貴局の回答は、「検討途上のもので、今後の検討によって変わりうるものであるから、現段階では公表することはできない。」というものでした。しかし、下記の項目は河川整備計画の内容を考える上で、必須のデータであって、公表できないという話で済ませられるものではありません。そこで、再度質問しますので、今回は真摯にお答えくださるよう、お願いします。もし現段階では答えることができないというならば、いつ公表できるのか、公表時期を明らかにしてください。

(1)30年間の利根川水系の想定予算

 利根川水系河川整備基本方針の目標治水安全度は本川1/200、支川1/100ですが、河川整備計画では本川1/50、支川1/30となっています。30年間で実施する予定の整備計画で目標治水安全度を1/50などに下げるのは時間と予算の制約があるからですが、国交省は利根川水系に30年間で投じられる予算を何兆円と考えているのか、およその30年間の想定予算を明らかにしてください。

(2)本川1/200、支川1/100を達成するまでの年数と予算規模

 利根川水系河川整備基本方針の目標治水安全度、本川1/200、支川1/100を達成するまでにおよそ何年かかり、どれくらいの予算が必要だと考えているのか、この目標治水安全度を達成するまでのおよその年数とそれに要するおよその予算規模を明らかにしてください。

(3)河道目標流量と目標治水安全度との関係

 河川の治水計画を立てる場合はまず、目標治水安全度に対応する洪水ピーク流量を設定し、次にその設定流量をダム等の洪水調節施設で対応する分と河道で対応する分に振り分けます。ところが、利根川整備計画の上記の案では不可解なことに、先に河道で対応する目標流量がきまっています。河道の配分目標流量、八斗島13,000m3/秒、栗橋14,000m3/秒、取手8,500m3/秒は本川の目標治水安全度1/50からどのように導き出されたのか、これらの目標流量と目標治水安全度との関係を明らかにしてください。そして、八斗島、栗橋、取手の河道配分目標流量の計算根拠を明らかにしてください。

(4)洪水調節前の目標流量

 河川の治水計画を策定する上で最も重要なことは目標治水安全度に見合う洪水目標流量、すなわち、ダム等による洪水調節前の目標流量を何m3/秒に設定するかです。過大ではない必要十分な治水計画を策定するためには、この洪水調節前の目標流量が科学的に求められていなければなりません。整備計画の案では本川1/50に見合う八斗島地点の洪水調節前の目標流量を何m3/秒としているのかを明らかにしてください。そして、その計算根拠を明らかにしてください。

(5)現況河道能力との関係

 2005年11月9日に開催された国交省社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会の参考資料8の3ページ右上に利根川の「現況流下能力」が記されていますが、それによれば、八斗島から栗橋までの区間は14,000m3/秒程度以上の流下能力となっています。上記の整備計画案の概要では河道の配分目標流量は八斗島13,000m3/秒、栗橋14,000m3/秒ですので、八斗島から栗橋までは整備計画案の目標流量を上回る流下能力がすでに確保されていることになりますが、そのように考えてよいかどうかを明らかにしてください。

(6)目標治水安全度本川1/50と個別事業との関係

 上記の整備計画案の概要では八ッ場ダム、南摩ダム、湯西川ダム、渡良瀬遊水池の掘削、稲戸井調節池の掘削、印旛沼経由の新利根川放水路といった事業が記されています。しかし、これらのうち、前の五つの事業は目標治水安全度1/200の工事実施基本計画の時代に計画されたものであり、新利根川放水路はやはり目標治水安全度1/200の河川整備基本方針の中で浮上したものであって、本川1/50の目標治水安全度の計画で本当に必要なものかどうかはまったく明らかにされていません。本川1/50の目標治水安全度の治水計画でこれらの六つの事業がなぜ必要となるのか、その計算根拠を明らかにしてください。

以上