マスコミ・行政の問題

マスコミ報道の誤り

(2009年9月17日)

V.八ッ場ダムは利根川の治水対策として重要という話の誤り

1.八ッ場ダムの治水効果はわずかで、治水対策として意味を持たない。

(1)カスリーン台風再来時の八ッ場ダムの治水効果はゼロ

朝日新聞 2008年6月11日記事

朝日新聞 2008年6月11日記事

利根川の治水計画のベースになっているのは1947年のカスリーン台風洪水であるが、同台風の再来に対して八ッ場ダムの治水効果がゼロであることが国土交通省の計算によって明らかになっている。2008年6月6日の政府答弁書は、カスリーン台風再来時の八斗島地点(群馬県伊勢崎市にある利根川の治水基準点)において、八ッ場ダムの治水効果がまったくないことを明らかにした。これは八ッ場ダム予定地上流域の雨の降り方が利根川本川流域と異なっていたからであるが、他の大きな洪水でもよく見られる現象である。

(2)過去50年間で最大の洪水における八ッ場ダムの治水効果はわずかなもの

最近50年間で最大の洪水は平成10年9月洪水で、八斗島地点のピーク流量は9,220m3/秒であった。昭和56年から八ッ場ダム予定地に近い岩島地点で流量観測が行われているので、実際の観測値から八ッ場ダムの治水効果を知ることができる。

同洪水について八ッ場ダムの効果が最も大きくなる条件で求めた結果が図1である。八斗島地点における八ッ場ダムの水位低減効果は最大13cmで(実際には8cm程度)、そのときの水位は堤防の天端から4m以上も下にあった。八ッ場ダムがあったとしても、この洪水においては何の意味もなかった。

また、図2は堤防の天端と同洪水の痕跡水位(最高水位の痕跡)を八斗島地点から栗橋地点(埼玉県)までの区間について示したものである。どの地点とも痕跡水位は堤防天端から約4m下にあるので、八ッ場ダムによるわずかな水位の低下が意味のないものであることは明らかである。

このように利根川はほとんどのところで大きな洪水を流下できる河道断面積がすでに確保されているから、八ッ場ダムのわずかな治水効果は意味を持たない。

図1 八斗島地点における八ッ場ダムの洪水調整効果

図1 八斗島地点における八ッ場ダムの洪水調整効果

図2 利根川・八斗島―栗橋の洪水痕跡水位(1998年9月16日洪水)

図2 利根川・八斗島―栗橋の洪水痕跡水位(1998年9月16日洪水)

2.ダム建設のために後回しにされる河川改修

(1)破堤の危険性をはらむ利根川の堤防

堤防は何度も改修を重ねてきたため、十分な強度が確保されているとは限らない。洪水時に河川の水位が高い状態が維持されると、水の浸透で堤体がゆるんで堤防が崩れたり(すべり破壊)、あるいは堤防にみず道が形成されて堤防が崩壊したりする(パイピング破壊)危険性がある。

国土交通省が利根川の堤防の安全度を調査した結果を情報公開請求で入手して、整理した結果の一例を図3に示す。利根川中上流部の右岸は、すべり破壊・パイピング破壊の安全度が1を大きく下回って破堤の危険性がある堤防が随所にあることがわかる。利根川の他の区間も同じような状況である。

図3 利根川上流右岸堤防のすべり破壊とパイピング破壊の安全度

図3 利根川上流右岸堤防のすべり破壊とパイピング破壊の安全度

(2)河川改修の事業費が急減

図4 利根川水系のダム建設と河川改修の事業費の推移

図4 利根川水系のダム建設と
河川改修の事業費の推移

このように、利根川は破堤の危険性がある堤防が各所にあるから、堤防の強化対策を早急に実施しなければならない。ところが、利根川水系の河川予算の推移を見ると、図4のとおり、八ッ場ダム等のダム建設費が増加する一方で、堤防の強化を含む河川改修の事業費は年々急速に減少してきている。堤防の強化対策を後回しにして、治水効果が希薄な八ッ場ダム等のダム建設に河川予算の大半が注ぎこまれている。

このように、治水に関しては、八ッ場ダムは必要性が希薄なだけでなく、利根川の真の治水対策を遅らせる重大な要因になっている。


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