マスコミ・行政の問題

マスコミ報道の誤り

(2009年9月17日)

VI.ダム予定地の生活再建と地域の再生について

1.地元の町とダム予定地からの反発

八ッ場ダムの中止に対して、地元の町とダム予定地から次のように強い反発が出されている。

「地元はダム事業に多大な犠牲を払って協力してきた。ダムの完成は地元との約束である。中止となれば、地元住民は途方に暮れ、観光再建計画でも再度ゼロからの再考を余儀なくされ、ダメージは計り知れない。」

ダム予定地では、多くの人々が代替地への移転、補償金など、ダムを前提として生活設計を立てざるをえない状況が長く続いてきたため、ダムの中止はその生活設計を白紙に戻し、地元の人たちを苦境に追い込みかねず、この反発は当然のことである。3で述べるように八ッ場ダムの中止に当たっては、水没予定地の人たちの生活を立て直し、地域を再生させるため、政治の真摯な取り組みが求められる。

2.ダム事業を進めても地元の活気は取り戻せない

ただ、留意すべきは、このままダム事業を進めても、人口の激減で活性が大きく失われてきているダム予定地が再び活気を取り戻すことはきわめて困難だということである。

(1)八ッ場ダム湖は観光資源にならない。

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国と県は、八ッ場ダム湖を観光資源としてダム予定地周辺を一大リゾート地にする地域振興構想を示しているが、八ッ場ダム湖は観光資源になるような代物ではない。夏期は洪水調節のため、満水位から28mも水位が下がり、渇水時にはさらに10mも下がるダム湖である(末尾のグラフ参照)。しかも、上流の観光地や牧場等から多量の栄養物が流入してくるダム湖であるから、浮遊性藻類の増殖による水質悪化が避けられない。貯水池の底の方に汚れた水がたまっているダム湖が観光資源になるはずがない。

(2)美しい吾妻渓谷の喪失

吾妻渓谷は八ッ場ダムができると、その上流部は破壊されるか、ダム湖の底に沈んでしまうが、残される中下流部の渓谷も今の美しさを失ってしまう。岩肌の美しさは時折洪水が起こることによってその表面が洗われ、現在の景観が維持されているから、ダムが洪水を貯留するようになると、下久保ダム(群馬県藤岡市)直下の三波(さんば)石峡(せききょう)のように岩肌をコケが覆い、草木が生い茂って様相が大きく変わってしまう。

(3)ダム湖による地すべり発生の危険性

八ッ場ダム予定地の周辺は地質が脆弱なところが多いので、ダムができてダム湖から水が浸透し、湖水位が大きく上下すると、地すべりが起きることが予想される。川原湯の代替地の一つである上湯原地区(川原湯温泉新駅予定地周辺)は面積では最大の地すべり危険地区である。ダムができれば、ダム湖予定地周辺の住民は地すべり発生の危険性をいつも心配しなければならない日々を送る可能性が高い。

以上のことを考え合わせると、このままダム事業を進めても、ダム予定地が観光地として活気を取り戻し、人々が経済的にも精神的にも安定した生活を送ることはむずかしいと考えざるをえない。

3.ダム中止後こそ、真の地域再生を

(1)ダム中止後の生活再建支援法案の制定

ダム中止後は、今まで国土交通省や県が示してきた絵空事ではなく、吾妻渓谷などの自然を観光資源として活かして着実に地域を再生する道筋を考えなければならない。

生活再建と地域振興、それらを進めるためには、そのことを制度的に可能にする法律の制定が必要である。

民主党は今年5月20日に「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案(仮称)骨子案」を発表し、パブリックコメントの募集を行った。その骨子案では、国、都道府県、市町村、住民で地域振興協議会を組織した上で、そこでの協議を経て、都道府県が地域振興計画を作成し、その計画に基づく事業が国の交付金で実施されることになっている。今後の法案化の段階で具体的な内容が加えられていくであろうが、何よりも大事なことは地元住民の意向に基づいて生活再建・地域振興の計画が策定されなければならないということである。そのためには、地元住民の合意形成が必須条件であることが法律に明記される必要がある。

(2)生活再建、地域再生のためのきめ細かな取り組みを!

このような法律に基づき、老朽化した家屋・建物の新改築、生活再建のための物心両面の支援措置、衰退した地域の基幹産業を再生させる支援プログラムの推進、移転した人たちを呼び戻すための既買収地の譲渡など、地域を再生させるための様々な取り組みがされていかなければならない。それは、不要なダム計画の推進で地元を半世紀以上も苦しめてきた国と群馬県、さらに、ダム計画を後押ししてきた下流都県の責任の下に行われるべきものである。