八ッ場ダム事業の問題点

八ッ場ダムがもたらす災い

(更新日:2014年2月13日)

もろい地質

浅間山の噴火と八ッ場ダム

国土交通省では過去の浅間山の大噴火の状況から、八ッ場ダムに与える影響を検討した結果、安全性に問題はないとしていますが、その検討内容を調べたところ、非常に杜撰なものであることが判明しました。
1 浅間山噴火の八ッ場ダムへの影響に関する国土交通省の報告
asama
(中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1783 天明浅間山噴火 平成18年3月」)

2011年12月7日の国土交通省「今後の治水のあり方に関する有識者会議」は八ッ場ダムに関する2回目の会議を開いた。そこで、浅間山が噴火した場合の八ッ場ダムへの影響について国交省から次の報告があった。

2)八ッ場ダムヘの影響
浅間山報告書によれば、天明泥流の際の八ッ場地点の波高は50m程度と読み取れることから、八ッ場ダムの堤高116mに対して5割程度の高さをもつ泥流が八ッ場ダムに到達すると推測される。
また、八ッ場ダムから10km程度の距離の原町地点における天明泥流の総流量は約1億m3規模と推計されており、八ッ場ダム地点でも概ね同規模の泥流が流下したものと推測される。
八ッ場ダムの総貯水容量は1億750万m3であるが、さらに常時満水位からダム天端まで約1000万m3の容量があることから、天端までの容量は約1億1750万m3程度となる。
したがって、天明泥流規模の泥流(総流量約1億m3程度)の場合、貯水位を事前に下げておくことによって、泥流の大半は八ッ場ダムの貯水池内で捕捉されると考えられる。
なお、天明泥流規模の泥流の流人に対する八ッ場ダムの安定性について検討を行った報告書では、八ッ場ダムが破壊することには結びつかないという結論に達している。
「3.11震災を踏まえた今後の治水システムに関連する知見・情報の整理」27ページ
 国土交通省タスクフォース 平成23年12月
2 国土交通省の報告の非科学性

この報告は、浅間山が噴火した場合は、八ッ場ダムが役立つという結論が先にあるものであって、とても科学的と言える内容ではない。

① 泥流の総流量を過小想定

国交省は1783年の浅間山噴火の泥流の総量を約1億m3規模としているけれども、約1億m3は八ッ場ダムから10km程度の原町地点の数字で、これは吾妻渓谷で泥流が遮られて貯留された後の量であるから、明らかに過小である。
中央防災会議の報告書(次の2で引用)では「吾妻渓谷がスリットダム的な働きをし、天明泥流の洪水調節を行った(200~150×103m3/secから50~30×103m3/secにピーク流量が低下)といえる。」と書かれており、泥流の総量も吾妻渓谷の上と下で大きく違うはずである。天明3年の遺跡は泥流が吾妻渓谷で遮られ、渓谷の直上流域に厚く堆積したことによるものである。
天明3年の浅間山噴火のことを詳しく述べている「噴火の土砂洪水災害」(井上公夫著、2009年、古今書院)では、泥流総量1~4億m3とした場合の計算結果が史料の記載とほぼ一致すると書かれている。
八ッ場ダムへの影響を真剣に考えるならば、1億m3よりももっと大きな泥流量を考えて検討しなければならない。さらに、ここでは天明泥流だけを取り上げているが、将来への備えとしては、平安末期の大噴火など、過去に天明大噴火より大きな噴火があったことも考慮に入れるべきである。

② 泥流到達前に八ッ場ダムの事前放流が可能という安易な想定

上記の報告は泥流が八ッ場ダムに到達する前に、八ッ場ダムの事前放流を行って貯水池を空にすることが前提になっているが、浅間山の大噴火が突然起きた場合、事前放流が間に合うとは限らない。
天明3年の大噴火では8月4日から5日朝にかけてクライマックスを迎え、5日午前10時過ぎに岩屑なだれが流出した(「噴火の土砂洪水災害」14ページ)。
一方、八ッ場ダムは、洪水吐ゲートの放流能力が1500m3/秒あるものの、水位が下がるにつれて放流量が低下せざるを得ないから、満水の貯水池を空にするのは1~数日かかるのではないだろうか。
ダムが満水に近い状態であれば、流下する泥流によってダムの貯水が一挙に放流され、直下流の東吾妻町などが洪水に見舞われることを恐れなければならない。

③ 堆砂容量1750万m3も空にできるという素人想定

上記の国交省の検討はずいぶん杜撰なものである。天端までの容量は約1億1750万m3と書いてあるが、八ッ場ダムの放流ゲートは堆砂容量の水を放流できるような低い位置には設置されていないから、堆砂容量1750万m3の水を抜くことができない。事前放流を完全に行っても、八ッ場ダムの天端までの空容量は1億m3である。ダムの構造のことも理解していない人間が報告を書いているのであるから、この報告の信ぴょう性はないと言わざるを得ない。

④ 根拠も示さずに八ッ場ダムの崩壊を否定

「天明泥流規模の泥流の流入に対する八ッ場ダムの安定性について検討を行った報告書では、八ッ場ダムが破壊することには結びつかない」と結論づけているが、その根拠はこの報告では何も示されていない。結論だけが先にある報告なのである。

3 天明3年浅間山噴火による泥流の流下
八ッ場ダム想定洪水の50~67倍の流量が30分で到達

天明3年の浅間山噴火については中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1783 天明浅間山噴火 平成18年3月」に、泥流の流下速度、流量等の計算結果が下記のとおり示されている。
これを読むと、天明泥流を八ッ場ダムで捕捉できると考える上述の国交省の検討はあまりにも安易であることが分かる。まず、浅間山から八ッ場までの天明泥流の流下速度は時速72㎞で、距離は約35㎞であるから、到達時間は30分以内である。噴火して泥流が流れ出してから、わずか30分で八ッ場ダムに到達するのであるから、噴火の予兆の段階で、八ッ場ダムの事前放流を完了しておかない限り、ダム湖の水が泥流の流入で一挙にダムから溢れ出すことになる。
そして、もう一つ重要な事実は天明泥流の流量の規模が毎秒15~20万m3にもなったことである。八ッ場ダムの洪水調節で想定されている最大洪水流量は毎秒3,000m3〔注〕であるから、その50~67倍の規模の泥流が一挙に押し寄せることになる。八ッ場ダム湖の水位が急上昇して、周辺の代替地を洪水が襲い、ダム下流部にも大きな洪水をもたらし、氾濫を引き起こすことが予想される。

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さらに、このような桁違いの流量の泥流が八ッ場ダムに一挙に押し寄せた時にダム堤体とその岩盤がその凄まじい圧力に耐えられるのかを心配せざるを得ない。

〔注〕八ッ場ダム基本計画では想定最大洪水流量は毎秒3,900m3であったが、2013年の基本計画変更で毎秒3,000m3になった。

八ッ場ダムが建設されれば、ダム湖には上流から流れて来る土砂が次第に堆積していく。
ひとたびダムが建設されれば、その撤去は容易ではない。
将来、浅間山大噴火の際、取り返しのつかない大惨事が起きる危険性がある。