「消える砂浜、対症療法は限界 変化予測し先手の対策を」(朝日新聞)

 第二次大戦後、わが国では、沿岸の開発、ダム建設や砂利採取により、上流から海に流れ込む土砂が減少し、急速に砂浜が失われてきました。朝日新聞がこの問題を取り上げましたので、記事を紹介します。

 この記事には、国土交通省の有識者懇談会が提言をまとめたことが伝えられています。この有識者懇談会は「津波防災地域づくりと砂浜保全のあり方に関する懇談会」という名称です。国土交通省のホームページで懇談会の配布資料を見ることができます。 
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tsunamiKondankai/index.html 

 今年6月20日の【参考資料】「砂浜保全に関する中間とりまとめ」に、ダムからの排砂、堰堤のスリット化、ダムからの養浜など、砂浜保全に関するいろいろな情報が掲載されています。
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tsunamiKondankai/sunahamasanko.pdf

◆2019年7月18日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASM7D74SKM7DULZU011.html?iref=pc_ss_date
ー消える砂浜、対症療法は限界 変化予測し先手の対策をー

 海水浴客が減っている。1985年は3790万人いたのが、2017年は660万人で、海外旅行の1100万人よりも少ない(レジャー白書)。余暇の過ごし方が多様になったとはいえ、各地の砂浜が消失したことも無縁ではないだろう。

 砂浜は戦後、急速に失われてきた。沿岸の開発、ダム建設や砂利採取により、上流から海に流れ込む土砂が減ったことなどが背景にある。東北大の有働恵子准教授(海岸工学)らの研究では、1900年ごろの砂浜の幅は全国平均で70メートル。50年ごろは66メートルだったが、90年ごろには43メートルまで減った。

 地球温暖化の影響も今後懸念される。海面が上がれば、波打ち際は上昇量以上に大きく後退する。今世紀末の予測を踏まえると、砂浜面積の40~90%が失われる計算になるという。巨大台風の激しい波も脅威になる。「砂浜は運ばれてくる砂と失われる砂の収支で成り立っている。一度大きく失われると回復させるのは難しい」と有働さんは言う。

 砂浜は美しい景観や人々の憩いの場をもたらし、ウミガメの産卵の場になるなど豊かな生態系を育んできた。遠浅の海は波の勢いを和らげ、防災面の恩恵もある。

 一方で、海の流れや土砂の量に左右され、日々姿を変えるところに難しさがある。砂を投入したり、構造物でとどめたりする対策を取っている海岸もあるが、局所的な対症療法には限界があり、費用も膨らむ。

 後追い的な対策から、予測を重視した順応的管理へ――。国土交通省の有識者懇談会は6月、こんな提言をまとめた。砂浜がどう変化し、何が要因になっているのか定期的に「健康診断」。変化を予測しつつ先手を打ち、それぞれの地域にとって必要な幅を保ち続けられるようにする考え方を打ち出した。

 99年の海岸法改正で、堤防などの防災だけでなく、環境や利用も重視した海岸管理が求められるようになった。しかし、20年を経ても各地の砂浜の状態すら把握しきれていない現状がある。上流も含めて広く状況を見渡し、予防策を繰り返し検討するよう提言は求めている。

 「このまま部分的な対策を続けていても先がない。道のりは長いが、できる地域から実行に移していかなければ」。委員の一人、清野聡子・九州大准教授(生態工学)はこう話す。地域での検討や関係組織の連携が鍵を握る。

 この懇談会は1年前、津波防災の提言もまとめている。防潮堤だけに頼らない避難対策や地域づくりの考え方を示した。現実を踏まえて地域の目標を議論し、対策を組み合わせていく点は二つの課題に共通する。

 東日本大震災の被災地では、住民の意向にそぐわない防潮堤の整備が批判を浴びた。環境も、防災も、海辺の魅力も。いずれも成り立つよう、縦割りにとらわれず知恵を絞っていく時期に来ている。(編集委員・佐々木英輔)