「水は足りない? 石木ダム推進、佐世保市の根拠は」(朝日新聞)

 石木ダム事業を長崎県とともに推進する佐世保市が石木ダムが必要だとする根拠は、以下の二つの虚構を前提としています。

 ①水需要が今後大幅に増加するという予測
 ②水源は現状でも不足している

 佐世保市では水需要の実績が確実な減少傾向にあるにもかかわらず、市水需要が大幅に増加していくという架空予測を行っています。
 もう一つの問題、保有水源について、佐世保市は安定水源が許可水利権の77,000㎥/日しかないとしていますが、実際には渇水時にも十分に使われている慣行水利権22,500㎥/日があります。
 この佐世保市の水需給計画に疑問を投げかける記事をお送りします。

◆2020年2月25日 朝日新聞長崎版
https://digital.asahi.com/articles/ASN2S6S7NN1ZTOLB00Q.html?_requesturl=articles%2FASN2S6S7NN1ZTOLB00Q.html&pn=4
ー水は足りない? 石木ダム推進、佐世保市の根拠はー

  本当に水は足りないのか――。長崎県と佐世保市が、川棚町で計画する石木ダムの建設目的の一つが佐世保市への水道水の供給だ。ダム反対住民が不信感を募らせる同市の水需要の積算根拠に迫った。

 急な斜面が海岸近くまで迫る佐世保。急勾配の小さな川しかなく、雨はたちまち海に流れ出す。

 市中心部から北へ約4キロ、川の流れを一部せき止めた四条橋取水場がある。肝心の水は、両岸からせり出した巨岩の間を縫うように心もとなく流れる。上流の三本木取水場も同様だ。

 昔から慣例で利用してきたこれらの水源は、山中の湧水(ゆうすい)と合わせて日に最大2万8500トン取水できる能力がある。だが、普段は流量が少なく、水道法の基準を満たさないとして、市は「不安定水源」と呼ぶ。

 一方、市が「安定水源」とみなすのが、市内六つのダムと近隣の3河川からの日量計7万7千トンだ。

 この30年、年間で最も水が使われた日の給水(1日最大給水量)実績は、寒波で水道管が破裂して大規模な漏水が起きた15年度を除くと約8万~10万トンで推移してきた。つまりピーク時にも「不安定水源」が全体としては「安定的」に機能し、安定水源で足りない分を補ってきたことになる。

 しかも人口減が進み、16年以降の1日最大給水量は、安定水源の能力と同レベルの7万7千トン台を推移。今年度は、この水準を割り込む見通しになった。ダム反対住民が「今後も人口は減る。ダムはますます不要になる」と主張するゆえんだ。

 だが、市はまだ水は足りず、ダム建設が不可欠だとの立場を崩さない。強調するのは、渇水の脅威だ。

 ダム事業着手の1975年以降、市では給水制限が計4回(平成で3回)あった。戦後最悪の94~95年度は制限が9カ月に及んだ。周辺の自治体から緊急の支援水を輸送するなどして対策費に約50億円を要した。水道局の担当者は「渇水対策費は国の補助がないため全額、市の負担。給水制限による減収もあって水道料金を2度値上げした。渇水は絶対起こしてはいけない」と力説する。

 では、市はどれだけの水が必要と考えるのか。具体的にみる。

 水需要の6割を占めるのが生活用水だ。少子高齢化が進んでも、市は横ばいで推移すると予測する。

 なぜか? 渇水を経験してきた市民は、水使用を我慢しているというのが市水道局の見方だ。実際、1人当たりの使用量は全国平均と比べ、日に40リットルも少ないという。渇水を知らない世代へと入れ替わり、意識が他都市並みになれば、人口が減っても必要な水量は横ばいになると見立てた。

 水需要の3割は業務・営業用水だ。大口需要は、自衛隊(海自・陸自)と米海軍。防衛省に将来の利用見通しを市が尋ねたところ「国際情勢が複雑化し、見通しが困難」といった回答だったため、市は過去実績の1日最大値を採用した。

 工場用水は水需要全体の1割。大口の佐世保重工業(SSK)は、船の修繕の際に使う日量の変動が大きく、ここ数年で最も多い年には平均値の7・4倍あった。そこで市はこの値を採用。ハウステンボスについても同様に平均の4・5倍とした。市は「企業の利用量を見誤れば市民にしわよせがいく」と主張する。

 こうした各用途の需要予測の総計を積み上げた上で市は、これらのピークが重なっても対応できるよう気象や渇水などによる変動を「負荷率」として加味。さらに、水道管の漏水などによる10%の「安全率」を見込んで日量予測を導く。

 ダム反対住民からすれば盛り続けた末に、もうひと盛りしたように映る。

 今年1月、利水面での事業再評価をする第三者委員会の場で、市は、計画取水量を従来から約1400トン増の計11万8388トンとする予測を提示した。

 この計画取水量と、安定水源(6ダム・3河川)がもつ7万7千トンとの差の約4万トンを新たに造る石木ダムに担わせる。この算定では、安定水源と同様に機能してきた取水場など四つの「不安定水源」を戦力外にしている点も一般には分かりにくい。

 「水道事業の最大の責務は、安定供給だ」「算定のルールにのっとり、ルールのない場合は可能な限り少なく見積もった」と、市は恣意(しい)的な算定を否定する。

 だが、一般に理解されにくい、こうした主張の論拠を述べるのは、法廷でのみだ。反対住民が求める市民向けの公開討論会は不要との立場を崩していない。(原口晋也、小川直樹)