ダム見直しの経緯に関する朝日新聞コラム記事

 ダム事業に関する朝日新聞のコラム記事を紹介します。

◆2020年9月24日 朝日新聞
ー(数字は語る)141 建設中止されたダムの数 想定外の大雨、揺れる治水対策ー

 21世紀を迎える前後、それまで見直されることはなかったダム事業が、次々と中止になった。

 水源開発問題全国連絡会(水源連)共同代表の嶋津暉之さん(76)は「1990年代の中ごろをピークに、日本の水道需要が減り始めたんです」と理由を話す。さらに、長良川河口堰(か・こう・ぜき)の建設反対運動をきっかけにダムへの関心が高まったことや、国の財政危機を背景とした無駄な公共事業批判の広がりもあって、ダム建設にブレーキがかかった。

 水源連によると、ダム事業中止は97年度の4件を皮切りに、2001年度には最多の47件に上った。09年には民主党政権で前原誠司国土交通相が「143のダム事業見直し」を宣言したが、実際に中止されたのは25事業だけ。政権内にも見直し反対論があり、八ツ場(や・ん・ば)ダム(群馬県)や石木ダム(長崎県)などは一転、中止リストから外れた。19年10月までの中止総数は141(国交省関係分)だ。

 あれから10年余。ダム見直しの動きが再燃した。今度は「水余り」論ではなく「ダム限界」論である。

 7月初め。国交省の社会資本整備審議会が「気候変動を踏まえた水災害対策のあり方」として「あらゆる関係者が流域全体で行う持続可能な『流域治水』への転換」を打ち出した。毎年のように豪雨が日本列島を襲い、堤防やダムだけでは対応しきれなくなったとして、ビルの地下などに貯水施設を整備したり、浸水エリアから住宅移転を促したりするものだ。

 ところが、国交省九州地方整備局は、7月の豪雨で氾濫(はん・らん)した球磨川(熊本県)流域で「川辺川ダムが完成していたら、下流の最大水量を4割削減できた」とする試算を、8月下旬に発表。12年前に熊本県知事が計画の白紙撤回を表明したダムについて、建設推進派の市町村長らが、建設計画復活へ動き出した。

 国交省(旧建設省)河川局内では、明治時代から「連続堤防派」と「流域治水派」の論争が続いてきた、と元国交省幹部の宮本博司さん(67)は言う。

 「想定外の大雨にダムは期待できない。山や農地、土地利用のあり方も含めて地域全体で住民の命を守る治水に方向転換しなければならない。そのためには住民との真摯(しん・し)な話し合いが不可欠だ」