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関東地方整備局長へ八ッ場ダム本体関連工事に関する入札公告の中止を要請

 7月30日に国交省関東地方整備局が入札公告を行った八ッ場ダム本体関連工事に疑問があることから、以下の要請書を昨日、同局にファックス、郵送で送付しました。
 わが国のかけがえのない名勝・吾妻渓谷において、なし崩しで八ッ場ダム本体工事が行われようとしていることについて、強い危惧を抱くものです。

2013年8月5日
国土交通省関東地方整備局長 深澤 淳志 様
八ッ場あしたの会代表世話人 野田知佑ほか
                
「八ッ場ダム本体左岸上部掘削・造成工事」の入札公告の中止を求めます。 

 国土交通省関東地方整備局は7月30日に「八ッ場ダム本体左岸上部掘削・造成工事」の入札公告を行いました。この入札公告は現段階では実施できないはずの本体工事の一部を水面下で進めようとするものであり、このように国民に真実を覆い隠すやり方を看過することはできません。
 「八ッ場ダム本体左岸上部掘削・造成工事」の入札公告を直ちに中止することを求めます。
 中止を求める理由は以下に述べるとおりです。

1  本体左岸掘削工約100,500㎥は本体工事の一部である。
 この工事は、名勝・吾妻渓谷の中にある八ッ場ダム本体工事予定地の左岸上部を約100,500㎥も掘削するものであり、本体工事そのものです。約100,500㎥は例えば100メートル四方の土地を10メートルの深さで掘削するというきわめて規模の大きい掘削工事であり、それも本体工事予定地の左岸を掘削するのですから、本体工事の一部であることは明らかです。
また、この工事予定地の下をJR吾妻線と国道が通っていますので、現段階で本体工事を行うことは、落石防止網工を行うことになっているとはいえ、果たして安全が確保されるのか、安全面の問題も懸念されます。

2  5月17日の入札公告「八ッ場ダム本体左岸上部掘削工事」は記者発表では「作業ヤード造成」に偽装されていた。
 八ッ場ダム本体左岸上部掘削工事は5月17日にも入札公告が行われましたが、なぜか入札予定業者一社が辞退し、入札が不成立になりました。この入札公告は掘削工約66,000㎥でしたが、今回は約100,500㎥に拡大して入札公告を再度行ったものです。しかし、5月16日の関東地方整備局の記者発表ではこの工事は「作業ヤード造成」の名称になっていて、契約手続きを進める「八ッ場ダム本体関連工事」3件の一つとされていました。
 この工事の入札公告には「作業ヤード」という言葉は一切なく、工事名はあくまで「八ッ場ダム本体左岸上部掘削工事」でした。すなわち、実際は本体工事であるけれども、記者発表では「作業ヤード造成」という本体関連工事に偽装されていました。

3 八ッ場ダム工期延長の基本計画の変更がされなければ、本体工事を始めることができない。
 八ッ場ダムの本体工事は受注企業と数年以上に及ぶ契約を結ぶため、翌年度以降も国が支払いを保証する国庫債務負担行為が必要です。2009年1月の本体工事(第一期)の入札公告は2009~13年度の5年間の工事として行われました。本体工事全体の期間は7年間でしたが、国庫債務負担行為は最長5年間ですので、本体工事は第一期と第二期に分かれていました。なお、同年9月の政権交代により、この本体工事(第一期)の入札は中止になりました。
 現時点で同様に本体工事に直ちに入るとすれば、第一期分として2017年度までの国庫債務負担行為が必要になります。国庫債務負担行為は国会の議決と財務大臣の承認が必要で、八ッ場ダム建設基本計画の工期の範囲で行うことが求められます。
 しかし、八ッ場ダム建設基本計画の工期は2015年度までですから、現計画のままでは5年の期間に及ぶ本体工事第一期の契約を結ぶことができません。
すなわち、八ッ場ダムの本体工事は、基本計画の変更により工期延長がなされなければ始めることができません。「作業ヤード造成」という本体関連工事に偽装して、本体左岸上部掘削工事という本体工事をひそかに進めようとする理由は、正式には本体工事を進めることができないからに他なりません。

 以上のように、工期延長の基本計画変更がされていない現状で、本体工事の一部である「八ッ場ダム本体左岸上部掘削工事」を本体関連工事の一部であるかのように偽装して進めることは国民を欺くものですので、その入札公告を直ちに中止することを求めます。 以上

 八ッ場ダム本体左岸上部掘削工事の概要
 〇 入札公告:平成25年7月30日 
 〇 工事名:八ッ場ダム本体左岸上部掘削・造成工事
 〇 工事場所:群馬県吾妻郡長野原町大字川原畑地先
 〇 工事内容:本工事は、八ッ場ダム本体建設工事に伴い、群馬県吾妻郡長野原町大字川原畑地先において掘削・造成工事を行うものである。
 〇 工事概算数量:掘削・造成工1式
   掘削工約100,500㎥、法面整形工約4,300㎡、落石防止網工約4,300㎡、仮設工1式
 〇 工期:契約締結の翌日から平成26年10月31日まで
 〇 開札:平成25年9月30日 

《参考資料》(画像をクリックすると、拡大して表示されます。)

 八ッ場ダム本体左岸上部掘削・造成工事の入札公告 7月30日
 7月30日入札公告

 八ッ場ダム本体左岸上部掘削工事 入札公告5月17日
 5月17日入札公告

 

 関東地方整備局の本体関連工事の記者発表資料
 記者発表資料