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HOME  > 八ッ場ダム計画の問題点  >  八ッ場ダム計画の問題点:自然環境の破壊

自然環境の破壊

八ッ場にダムが計画されるはるか以前、約80年前に現地を訪れた若山牧水は、詩人の直感で次の一文を書き残しています。

私はどうかこの渓間の林がいつまでもいつまでもこの寂びと深みとを湛えて永久に茂つてゐて呉れることを心から祈るものである。ほんとに土地の有志家といはず群馬縣の當局者といはず、どうか私と同じ心でこのさう廣大でもない森林のために永久の愛護者となつてほしいものである。
若しこの流を挟んだ森林が無くなるやうなことでもあれば、諸君が自慢して居るこの渓谷は水が涸(か)れたより悲惨なものになるに決つてゐるのだ。

「静かなる旅を行きつつ(1921年刊)」より

豊かな自然環境


「関東の耶馬溪」と称される名勝、吾妻渓谷の上流部1/4地点がダムサイト予定地です。渓谷上流部は八ッ場ダムによって完全に水没することになり、ダム下流も川の流れの変化によって大きく様相を変えることになります。

また、水没予定地周辺は、丸岩、堂岩、王城山などの山々が連なり、渓谷にすぐるとも劣らない美しい景観に恵まれた地域です。吾妻川が長い歳月の間に造り出した自然は、一度ダムによって破壊されてしまえば、二度と元に戻ることはありません。

環境省では絶滅の危機に瀕している動植物をレッドデータブックに記載していますが、吾妻渓谷にはリストに載っている貴重な動植物が 66種 (「八ッ場ダム建設事業」、平成11年8月、建設省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所)も確認されています。その中には、鳥類の生態系の頂点にあるイヌワシ、クマタカなどの猛禽類も含まれています。このことは吾妻渓谷周辺がいかに自然豊かな環境を保ってきたかを示していますが、現地では今、すさまじい騒音を立てて周辺工事が進められており、これら動植物の生存も危機に瀕しています。

ダムサイト予定地

水没予定地、丸岩遠望

クマタカ


環境アセスメント

現在では、環境影響評価法(通称:環境アセス法)により、ダムなどの大規模開発事業が環境に与える影響を調査・評価することが義務づけられています。しかし八ッ場ダムは、この法律が制定される1997年以前に事業が始まったため、環境アセス法に基づく環境影響評価が行われていません。

現在では、環境アセス法でさえ、わが国が直面している自然破壊を食い止めるには弱すぎるとして、環境省は環境アセス法をさらに一歩進めた戦略的環境アセスメント(SEA)(上位計画段階からの環境アセス)のガイドラインをつくりました。

一方、八ッ場ダムの環境影響評価は、環境アセス法に比べて手続きがはるかに簡単な約30年前の建設省環境評価技術指針(1978年)によって実施されただけです。この指針は住民の意見を聞くこともなく、ほとんど事業者の考えだけで進めるものですから、アセスと言えるものではありません。

水没予定地の森


吾妻渓谷

2004年の八ッ場ダム計画の変更により、八ッ場ダムの目的は、当初からの利水・治水のほか、吾妻渓谷の流量確保が新たに加わり、国と群馬県が97億円を負担することになりました(群馬県の負担割合は3割)。

これは、ダムによって堰き止められる吾妻川の水を人工的に放流することにより、名勝・吾妻渓谷の水枯れを防ぐというものです。

吾妻渓谷はダムがなければ水枯れにはなりません。
また、ダムからの人工的な放流は川の自然な流れとは異なります。
ダム直下の吾妻渓谷は、時折流れる洪水によって岩肌が洗われ、現在の美しい景観が保たれていますが、八ッ場ダムができれば、美しい岩肌にコケが生え、草木が生い茂って、下久保ダム(利根川水系・神流川)直下の三波石峡のように無残な姿になることが予想されます。
【参考】
八ッ場ダムによる吾妻渓谷の景観改善(事業評価の問題点)

吾妻渓谷・鹿飛橋(しかとびばし)

東京新聞2010年1月1日付
「吾妻川 変わる流域の自然 共生へ苦闘の歴史」
http://yamba-net.org/modules/news/index.php?page=article&storyid=793

~一部転載~

カザグルマ ◆営巣風景今も心に 日本野鳥の会吾妻支部長 堀込紀夫さん
 「ほら、あの丸い形の『丸岩』。あそこにイヌワシ(天然記念物、絶滅危惧(きぐ)種)が営巣していた」
 長野原町の吾妻川沿いに絶壁がそびえる。八ッ場ダムの計画地。工事現場を走るトラックの騒音に、日本野鳥の会吾妻支部長を務める堀込紀夫さん(69)の声がかき消された。
 堀込さんがイヌワシの営巣を確認したのは、ダム計画の一環として同町から鳥類の調査を委託された一九九〇年代。ところが、二〇〇〇年代に入ると、工事の進行状況に符合するように、営巣風景は姿を消した。

◆『絶滅』『準絶滅』の危惧63種 八ッ場ダム計画地一帯
 八ッ場ダム工事事務所は一九九九年に公表した「八ッ場ダム建設事業」の環境調査項目で、七〇~九〇年代に計画地一帯で現地調査や文献調査によって確認された貴重な動植物のリストを挙げている。このうち、環境省が二〇〇六年の段階で「絶滅危惧(きぐ)類」や「準絶滅危惧類」に認定した計六十三種を一覧表にした。  それによると、植物が五十一種を占める。県が発行した「絶滅のおそれのある野生生物 植物編」の責任者で、県自然環境調査研究会の須藤志成幸(しなゆき)副会長に見解を聞いた。

 計画地一帯で現地調査の経験もある須藤副会長によると、五十一種のうち、オキナグサやクマガイソウなど計約十種は既に県内で絶滅した可能性がある特に希少な植物。ほかにも、カザグルマは県内では計画地周辺の一カ所のみに自生し、絶滅の瀬戸際にある。マルバウマノスズクサも県内では、計画地一帯にしか残っていないという。
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