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地質のもろさ浅間山の噴火と八ッ場
八ッ場は地すべり多発地帯川が元の姿を取り戻した後も、吾妻渓谷上流の両岸傾斜地には、数十メートルの厚さで岩屑なだれの堆積物が残されました。問題は、この場所がちょうどダム予定地に当たることです。 ![]() 図1:『群馬評論・夏・No87(2001年)』に発表された中村庄八氏の “八ッ場ダム「湖水域」の地形と表層地質”から図形化 岩屑なだれが堆積した場所に大雨が降ると、土が水を含み、しばしば地すべりを起こします。土地の人たちは、地すべり跡のくぼみが人の足跡に似ていることから、伝説の巨人“ダイダラボッチ”の足跡と呼び習わしてきました。この地域はまさに地すべり多発地帯なのです。 現在ダム予定地周辺では、吾妻川に注ぐ沢の一つ一つに幾重にも防災ダムを設け、山を切り崩した場所にアンカーを大量に打ち込むなどの付帯工事が進められていますが、もろい地質というこの地域の特殊性が、予想をはるかに上回る事業費増額の一大要因となっています。 ダム湖の両岸が崩落していく![]() 図2:林集落の表層地質断面
地すべり対策でコスト縮減 !?2003年11月、国土交通省は八ッ場ダム建設の計画変更案を発表しました。事業費は2110億円から5160億円に引き上げられる筈でしたが、約560億円のコスト縮減を見込んで4600億円とされました。 例えば図2の林地区の場合、土砂がダム湖に流れ込まないように、ダム本体を造るときに発生する土を押さえ盛土として有効活用することによってコスト縮減を図ると説明されています。しかしダムに水がはられれば地すべり地形の所まで水がのるので、完璧な護岸工事をしない限り水が土に染み込みます。実際に地すべりが起こればダムに土砂が流れこんでダムの寿命が短くなるだけでなく、中腹に家屋のある住民の生活も脅かされます。コスト縮減によって地すべりの危険度が増す、むしろコストを度外視してもきちんとした地すべり対策をとるべきだと警告する声さえあります。 国は、22ヵ所の地区について地すべりの評価を行っています。 下表の評価結果で、重要度と精査の優先度が両方ともAの評価に なった横壁、勝沼、二社平地区の三ヵ所だけで対策を実施することになって います。 ![]() 土石流危険渓流の指定地に追いやられる住民
砂防ダム直下の小学校は危険 ~長野原第一小学校~矢部俊介(土木技術者)
ダムサイトの岩盤崩壊の危険性■ダムサイト予定地は岩盤に亀裂
■情報開示資料-H14ダムサイト地質解析業務報告書(平成15年3月)ダムサイト岩盤を走る無数の亀裂 水平の亀裂が無数に走り、高さ100メートル以上に及ぶ鉛直亀裂が3本も入って岩盤がブロック化している。岩盤が一体化しておらず、ダムの基礎地盤として非常に危ない状態にある。
吾妻川の河床低下(浸食)によるダムサイトの低角度割れ目の形成
八ッ場ダム本体は大丈夫かダムサイト予定地の吾妻渓谷では、2008年、仮排水トンネルの工事(吾妻川のバイパスを造る本体工事の準備工)が始まり、2009年に終了の予定です。 (1)ダム本体の規模を大幅縮小
ダム本体の設計変更
![]() 国土交通省資料【ダム本体の設計の変更】図 (2)ダム本体の基礎はわずか3メートル
なお、八ッ場ダム住民訴訟弁護団は、情報開示と現地踏査による八ッ場ダム予定地地質の徹底分析を進めており、その成果が蓄積されつつあります。 ダムが災害を引き起こすダム推進の旧政権下、ダムによる災害の危険性がマスコミで取り上げられることは稀でした。2009年10月25日、テレビ朝日のサンデープロジェクト「“危ないダム” ~ そして地すべり災害は起きた」が動画サイトで見られます。災害を防ぐはずのダムが、逆に災害を引き起こした事例として、大滝ダム(奈良県)、太田川ダム(静岡県)、二瀬ダム(埼玉県)の問題を取り上げています。 この番組に登場する専門家、奥西一夫氏(京都大学名誉教授)は、大滝ダムをはじめ全国のダムを調査した経験を踏まえ、八ッ場ダム建設によりダム湖周辺で地すべりが起こる可能性が高いとしています。 総選挙後、前原大臣によるダム見直し政策について、様々な議論が起きている状況の中で、奥西一夫氏は災害を引き起こしてきたダムと八ッ場ダムには共通点があるとして、ダム建設中止の必要性について述べています。 ↓ br> ~一部転載~(カッコ内で補足説明を付け加えてあります。) (大滝ダムにおいては)地すべりが発生する前にも,地すべりが発生した後でも,このように不可解な言動がおこなわれたのはなぜであろうか。わたしはこれを,自らの過ちを認めれば失脚して再び回復できないという上級官僚の恐怖心が,過ちを糊塗して問題をごまかしつつ,前へ前へと物事を進行させて行く原動力になっているのではないかと考える。「公共事業は一旦決めたら後戻りできない」とよく言われるのも多くはこのような原因によっているのかも知れない。論語に「過則勿憚改」(過ちては改むるに憚ることなかれ)という警句があり,しばしば引用されるのであるが,これまでの日本社会が過ちを悔い改めた人に対して極めて非寛容であったこともこのような恐怖心をあおり立て,誤った政策や事業が止めどもなく継続されるという結果を生んでいるのかも知れない。しかし,これからの日本は,いつまでもそのような欠陥社会であり続けるとは思いたくない。ここから我々が学ぶべきことは,おかしいと思ったら引き返す勇気を持つことである。 私は八ッ場ダムに関する訴訟(八ツ場ダム建設にかかわる利水負担金と治水負担金の支出の差し止め請求)に関わって,地すべり危険度と地すべり対策に関する鑑定意見書(http://www.yamba.jpn.org/shiryo/ikensho/ikensho_okunishi.pdf) を提出した。事業者(国と関係都府県)は概査によって地すべり危険度が高いと考えられる22の斜面を抽出しているが,このように地すべり危険度の高い斜面が多い事例は稀である。しかし,事業者はここでも「初生地すべりは予見できないから対策もできない」と称して,自らを免罪し,過去に地すべりが起きたことがわかっている斜面についても,「すべり面となる地層を確定できなかった」として調査範囲から外したり,地すべり対策を実施したくない区域ではわざと調査をしないで,地すべり対策区域を狭く設定したりして,計画段階での事業費を低く抑えようとしている。そして,ダム計画期間中に,地すべり履歴が明確でない斜面で地すべりが発生すると,その斜面だけについて地すべり対策をおこない,それと同じ条件下にあると考えられる他の斜面は一顧だにしていない。このような状態のままダム着工に突き進むと,第2 第3 の白屋地すべり(大滝ダム周辺)が発生してしまうおそれがあって,各種の対策費のために事業費が大きく膨れあがってしまうことは避けられないのではないかと考えられる。大滝ダムでは幸いバイオントダム型の災害にはならなかったが,八ッ場ダムの湛水域ではバイオント型の地すべり性崩壊が危惧される斜面が多い。ここでも,おかしいと思ったら一旦立ち止まり,必要なら引き返す勇気を持つことが肝心である。
2010年3月16日 衆議院国土交通委員会にて
八ッ場ダム問題に関する意見聴取における参考人の陳述資料として提出した資料 奥西一夫氏(京都大学名誉教授)の資料 「八ッ場ダム湛水域の地すべり危険度について」
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