八ッ場ダム事業の問題点

ダム建設の目的

(更新日:2016年5月16日)

首都圏の水あまり

グラフ作成:嶋津暉之

図1 利根川流域6都県の上水道の一日最大給水量実績と国の予測

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利根川流域6都県(茨城・東京・千葉・埼玉・群馬・栃木)の上水道の一日最大給水量は、図1のとおり、1990年代に入ってからほぼ減少の一途を辿るようになり、1992年度から2013年度までの21年間に232万㎥/日も減りました。この減少量は八ッ場ダムの開発水量143万㎥/日(通年換算量)の1.6倍にもなります。
ところが、国交省は同図のとおり、第5次利根川荒川フルプラン(水資源開発基本計画)で水道用水は実績の傾向とは逆方向に急速に増加し続けるという架空予測を行って、八ッ場ダム等の新規水源開発が必要だとしています。

図2 利根川流域6都県の一人あたり水道用水の推移

図2

6都県の水道用水が最近約20年間、減少の一途を辿ってきた要因は、一人当たり給水量が年々減ってきたことにあります。図2のとおり、1992年度の491リットル/日から2013年度の364リットル/日へと、26%も減りました。一人一日最大給水量の減少要因は、①節水型機器の普及等による節水の進行、②漏水防止対策による漏水の減少、③一年を通しての生活様式の平準化による給水量の変動幅の縮小です。今後も節水型機器の開発と普及が進んでいきますので、一人一日最大給水量の減少傾向が続きます。

一方、人口については6都県全体としてはわずかに増加傾向にありますが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、図3のとおり、2015年以降は減少傾向に変わります。このように、今後は一人当たり水量だけではなく、人口も減少傾向に向かいますので、水道用水の需要が縮小の一途を辿っていくことは確実です。
工業用水も図4のとおり1990年代から減少の一途を辿っています。

図3 利根川流域6都県の総人口の実績と推計

図3

図4 利根川流域6都県の工業用水の動向

図4

東京都の場合

水道用水の減少傾向は、人口の一極集中が進む東京都で最も顕著です。図5のとおり、東京都水道の一日最大給水量は617万m3/日から2015年度の470万m3/日へと、24%も減りました。これも一人当たり給水量が大きく減少したことによるものです。図6のとおり、東京都の一人一日最大給水量は1992年度から現在まで34%も減りました。しかし、水需要の実績がこのように大きく減少してきているにもかかわらず、東京都は今後は水需要が急増していくという架空予測を行っています(図5、図6)。

図5 東京都水道の一日最大給水量の実績と予測

図5

図6 東京都水道の一人一日最大給水量の実績と予測

図6

一方で、利根川・荒川水系ではダム等の水源開発事業が次々と完成したことにより、各都県は十分な水源を保有するようになりました。
東京都水道を例にとれば、図7のとおり、使用実績を踏まえて保有水源量を評価すれば、694万m3/日もあります。2015年度の一日最大給水量470万m3/日に対して224万m3/日という大量の余裕水源を東京都は抱えています。
今後は水需要の規模縮小でこの水余り現象が一層進行していくのですから、八ッ場ダムなどの新規水源開発が今や無用のものになっていることは明白です。

図7 東京都水道の保有水源と一日最大給水量の推移

図7

千葉県の場合

1990年頃まで上昇を続けてきた千葉県の都市用水も、10年ほど前から横ばいです。
現在は一日約50万m3の余剰水源を抱えているというのが実態です。

豊かな地下水を抱える県内の佐倉市、習志野市、船橋市、四街道市では、大事な自己水源である地下水を切り捨てて八ッ場ダムの水を押しつけられるのは納得がいかないと、2003年、各市議会で「八ッ場ダム事業の見直しを求める意見書」を採択しました。

千葉県の上水道給水量

図6 千葉県の上水道給水量

千葉県の上水道・工業用水道の水需給

図7 千葉県の上水道・工業用水道の水需給

千葉県水道の保有水源と給水量の推移

図8 千葉県水道の保有水源と給水量の推移

埼玉県の場合

人口の流入が続き、八ッ場ダムの水に頼らなければ水不足になると言われた埼玉県の水道用水も、10年前からはほぼ横ばい。 現在、給水量を大幅に上回る水源が確保されつつありますので、埼玉県も八ッ場ダム事業への参加の必要性がなくなっています。

埼玉水道の給水量

図9 埼玉水道の給水量

埼玉水道の保有水源と給水量の推移

図10 埼玉水道の保有水源と給水量の推移

群馬県の場合

関東平野北端の扇状地にあたる群馬県の平野部は、200~300mの砂礫層があり、水質のよい地下水に恵まれています。県庁所在地、前橋市をはじめ、県南部の主要都市は、豊かな伏流水の恩恵を受けて発展してきたと言っても過言ではありません。しかも県民人口は、2005年に減少に転じました。

利根川の水源県である群馬県が、八ッ場ダムによって水源開発をする必要性は、データ上でもみとめられません。

群馬県平野部の地下水の現況については、和田信彦技術士(群馬県玉村町)が高崎市・前橋市・玉村町等の地下水源データを総合的に解析した資料(2005年9月19日、地下水学習会in前橋にて講演)が下記HPよりダウンロードできますのでご参照ください。

「安全で安心な地下水こそ生活用水源に!-前橋・高崎の地下水-」資料

参考:「水余り」値上げは難題―動き出す20万都市 新太田市の課題(朝日新聞群馬版より)

参考:群馬裁判の主な争点(利水)

群馬県の上水道・工業用水道の給水量

図11 群馬県の上水道・工業用水道の給水量


群馬県水道の給水量の実績と予測

図12 群馬県水道の給水量の実績と予測

茨城県の場合

茨城県の2005年度の一日最大給水量は171万m3ですが、都市用水の保有水源はすでに一日251万m3もあり、余剰水源は80万m3に上ります。茨城県は八ッ場ダム以外にも、霞ヶ浦導水事業、思川開発、湯西川ダムの水源開発事業に参加しており、新たに62.16万m3を開発する予定ですが、県民人口は既に2000年にピークを打っています。

参考:茨城裁判の主な争点(利水)

茨城県の上水道+工業用水道の水需給

図13 茨城県の上水道+工業用水道の水需給

利根水系水道の一日最大給水量の実績と予測(茨城県)

図14 利根水系水道の一日最大給水量の実績と予測(茨城県)