八ッ場ダム事業の問題点

ダム建設の目的

(更新日:2013年10月16日)

河川流量の維持

1 八ッ場ダムの目的の一つ「吾妻川の流量維持」

2004年の八ッ場ダム基本計画変更で新たに「ダム下流で毎秒2.4m3の流量を維持する」という目的が追加されました。

八ッ場ダム建設事業の目的別負担額(億円)
治水 2,413
利水 2,086
吾妻川の流量維持 97
群馬県発電 5
4,600

しかし、吾妻川の流量が少ない原因は2で述べるように東電発電所の過剰取水にありますので、その是正によって流量を増やすべきであり、「吾妻川の流量維持」は八ッ場ダムで対応しなければならないことではありません。

当時、この目的が追加されたのには別の事情がありました。群馬県水道の参画水量が毎秒3.02m3/秒から2.0m3/秒になり、そのことによって八ッ場ダム事業費に対する負担の空白部(群馬県水道の負担割合が4.1%から2.0%に減り、その減小分2.1%)ができて、その埋め合わせが必要になりました。
群馬県では豊富な地下水を水道水源に利用している自治体が少なくありません。これらの自治体は八ッ場ダムの水を本当は必要とはしていなかったため、2004年の計画変更の際に八ッ場ダムに参画する群馬県水道からの受水予定量を減らしました。このため、群馬県水道は八ッ場ダム事業への参画水量を減らさざるをえなくなったのです。
群馬県水道の負担割合の減少分の埋め合わせとなったのが、「吾妻川の流量維持」という目的でした。
しかし、この目的は3で述べる理由により、間もなく目的そのものが消えることになります。

2 吾妻川はなぜ流量が乏しいのか—水力発電所に水をとりつくされた川

八ッ場ダム予定地を流れる吾妻川(2012年9月17日撮影)

八ッ場ダム予定地を流れる吾妻川(2012年9月17日撮影)

吾妻川は大雨が降らない限り、いつも流量が乏しい川です。吾妻川上流域は新しい地層(新生代)であって、本来は水持ちがよく、晴天日の流量が多いはずです。流量が少ない原因は水力発電所にあります。吾妻川は上流から下流まで、多くの水力発電所が張り付いていて、川に流れるべき水の大半が発電所への送水管の中を流れています。発電に使った水は吾妻川にほとんど戻ることなく、下流側の発電所に順繰りに送水管で送られています。
吾妻川の水力発電所は古く、そのほとんどは大正から昭和10年代に設置されました。八ッ場ダム予定地付近では東京電力(株)松谷発電所があって、吾妻川の流量の大半が松谷発電所への送水管の中を流れています。

吾妻川の水力発電所

3 東京電力(株)松谷発電所の水利権更新による吾妻川の流量維持

1988年に建設省と通産省は通達「発電用水利権の期間更新時における河川維持流量の確保について」(発電ガイドライン)を出しました。
それまでは、発電水利権は根こそぎ取水が認められていましたが、このガイドラインにより、1988年以降に更新される発電水利権は下流への河川維持流量の放流が義務付けられるようになりました。
発電水利権の許可期間は30年です。東京電力(株)は松谷発電所(長野原取水堰と白砂取水堰)の許可期限(2012年3月)が近づいてきたので、2012年2月24日に水利権許可申請書を関東地方整備局河川部水政課に提出しました。
そのあと、関東地方整備局と東電の間でやり取りがあり、現在は関東地方整備局で審査中です。
東電は2013年4月26日に「松谷発電所水利権更新申請における河川維持流量の再検討について」を提出しました。

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「松谷発電所水利権更新申請における河川維持流量の再検討について」
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これを読むと、吾妻川取水ダム(長野原取水堰)から毎秒1.727m3を放流し、八ッ場ダムまでの残流域からの流入量0.673m3/秒を合わせて、八ッ場ダムサイト予定地点で毎秒2.4m3を確保することになっています。
 
以上のように、松谷発電所の水利権更新が終われば、八ッ場ダムなしで、ダムサイト予定地点で毎秒2.4m3/秒の流量が確保されることになりますので、八ッ場ダムの目的の一つ「吾妻川の流量維持」は消えることになります。