6月8日、「川とダムの学習会」が慶応大学三田キャンパスで開かれた。会場は約50名の参加者で埋まった。
司会者挨拶の後、様々なNGO活動に関わっている田中優さんが「ダムが要る理由、要らない理由」をテーマに日本のダム事情を語る。
実は日本の水需要は増加していない。にも関わらず架空の需要増をもとに巨大ダムがいくつも造られ、余った水は放流されているのが現実だ。
田中さんは無駄なダム建設が止まらない元凶として、水道料金の算定方法を指摘。水道料金は施設建設費・人件費・減価償却費などを足して算定する「総括原価方式」によって決定される。つまり、水道事業は経営する費用をコストに転嫁することができる仕組みとなっている。このため、一般の民間事業であれば当然行われるはずの事業の精査が行われず、ムダなダムが造られ、水道料金が高騰するわけだ。
「日本の産業が国際競争力を失ったのは水道料金と電気料金の高いことが大きな原因」。巨大ダムの水を使っている地域は水道料金も高くなる。山形県の鶴岡市はこれまで、夏冷たく冬温かいおいしい地下水を利用していたが、月山ダムの水に切り替えたとたん、水がまずくなり水道料が月額6000円と2倍以上に跳ね上がった。 八ッ場ダムについては「周辺の山は火山灰が積もってできた不安定な地形。地震などでダムが崩壊すると大変な災害になる。かつて中国では地震によって62個のダムが次々に壊れ、流された土砂で3万人が亡くなったことがある」と危険性を指摘した。
続いて、運営委員の嶋津暉之さんが八ッ場ダムの概要を説明。総貯水量1億750万トンの巨大ダムでダム建設事業費4600億円。地元への関連事業や起債の利息をあわせると8800億円かかる。この費用を国および受益者とされる利根川流域の1都5県が負担する。
1952年に計画され、半世紀も過ぎたが未だダム本体工事は着工されていない。嶋津さんは「長年のダム計画が地元を疲弊させてきた」「水余りの時代になりダムの必要性は全く無い」と指摘。水没予定の川原湯温泉や景勝地の吾妻渓谷を守りたいと訴えた。
第2部では田中優さん、嶋津暉之さん、ノンフィクション作家の前田和男さんが座談会。冗談も交えながら今後の運動の方向性やアイデアが活発に議論された。「八ッ場の運動は裁判など主に理屈の運動が中心。これからはそれに加えて東京のイベントやグリーンTVの活用などで『八ッ場ダムってサイテーね!』の機運を作っていきたい」
若い参加者は「ダムをつくり続けるのはおかしいと思う。でもランチで友達とこの話をするのは重い。何か良い方法で皆に知らせられないか?」と質問。田中さんは「伝えかたは自分に合った方法でOK! 話し手は多いほどいい。話すことを硬く重く考えなくてよいのでは」と応えた。活発な質疑応答が続き、活気を感じた学習会だった。
(報告:O.N.)
以上「アクティオ」2008年7月10日号より転載