八ッ場は名勝・吾妻渓谷の最上流に位置し、急峻なV字谷の地形です。この風変わりな地名については、“谷場”が転じたもの、谷間に獲物を追いこんだ“矢場”が転じたもの、アイヌ語由来など諸説あります。
昭和40年代の新聞では、八ッ場ダムを吾妻ダムと報道している紙面もありました。ダム予定地は国の名勝・吾妻渓谷の中にあります。群馬県内で子どもたちに親しまれてきた上毛かるたには、「耶馬渓しのぐ吾妻峡」という札があり、大分県の名勝地にも劣らないと、その景観が讃えられました。八ッ場ダムが吾妻ダムという名であったなら、類い稀な自然を破壊するダムだと一目でわかったことでしょう。
八ッ場には八ッ場沢という大きな沢があります。もとは流量の豊かな水質の良い沢でしたが、ダムの砂防工事で今は見る影もありません。ダム湖予定地に注ぐ沢は、どの沢も八ッ場沢と同じように砂防工事が行われてきました。