グラフ作成:嶋津暉之
各地で進められているダム事業の多くは、「都市用水の供給」を主目的としています。半世紀以上前に計画された八ッ場ダムも、首都圏の水需要の増大を前提としています。しかし、この間、水需要は右肩下がりへと大きく変化しました。
東京都への情報公開請求および水道統計、工業統計表の最新資料によって、全国、利根川流域6都県、東京都の水道の一日最大給水量、一人一日最大給水量の動向および全国、利根川流域6都県の工業用水の動向をグラフ化しました。
全国、利根川流域は2016年度まで、東京都水道は2019年度までのデータが入っています。
★東京都の水道の一日最大給水量、一人一日最大給水量の動向
一極集中が進む東京都ですが、水需要は大きく減少してきました。
東京都水道の一日最大給水量は、最も多かった1992年度には617万㎥/日もありましたが、2019年度(8月までの最大値)は459万m3/日に減少しています。
給水人口は増加し続けてきているのですが、一方で、一人当たり一日最大給水量が最も多かった1992年度には522リットル/日もあったのが、340リットル/日程度まで減ってきたことによるものです。一人当たり一日最大給水量の減少率は約35%にもなります。凄まじい減り方です。
しかし、東京都水道局は八ッ場ダム事業と霞ヶ浦導水事業に参画する理由をつくるため、水需要の架空予測を続けています。
★利根川流域6都県の水道用水の動向
★利根川流域6都県の工業用水の動向
★全国の水道用水の動向
★全国の工業用水の動向
いずれのグラフも右肩下がりとなっており、水あまりの傾向が年を追うごとに顕著になっていることがよくわかります。
ちなみに全国の水道の一日最大給水量は1994年度から2016年度までの22年間に1日当たり約1150万リットルも減っています。一人一日最大給水量を400リットル/日と仮定すると、22年間で約2880万人分の水道給水量が減ったことになります。
一人一日最大給水量の急速な減少には主に三つの要因があります。一つは節水型機器の普及等による節水の進行、一つは漏水防止対策によって有収率が上昇してきたことです。今一つは一年を通しての生活様式の平準化で、使用水量が突出して大きくなる度合いが小さくなってきたことです。
工業用水の使用量は、水を大量に使用する用水型工場の減少と、水使用合理化(節水)の進行によって1970年代から減少の一途をたどってきました。