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八ッ場ダム事業の進捗状況(2015年3月末現在、国交省資料)

現状レポート

(更新日:2015年8月12日)

八ッ場ダム事業の進捗状況

八ッ場ダム事業の進捗状況(2015年3月末現在、国交省資料)

 八ッ場ダムの本体工事は2015年に始まりましたが、八ッ場ダム事業の予算の9割はダム関連事業に費やされます。ここに掲載する国交省資料では、八ッ場ダムの関連事業の中でも最も重視されてきた鉄道や道路の付替え工事の進捗状況、代替地への住民の移転状況が示されています。

 ※図表と写真はクリックすると大きく表示されます。

基幹施設の進捗状況

基幹施設の進捗状況

八ッ場ダムの工事の進捗状況

八ッ場ダムの工事の進捗状況

八ッ場ダム予定地の用地取得・移転状況

八ッ場ダム予定地の用地取得・移転状況

代替地の分譲状況

代替地の分譲状況

代替地分譲面積状況

代替地分譲面積状況

代替地の進捗状況

代替地の進捗状況

新駅に入っていく吾妻線普通列車 2014年10月4日撮影

新駅に入っていく吾妻線普通列車
2014年10月4日撮影


 JR吾妻線の付替えは、新しい川原湯温泉駅周辺の整備に時間がかかり、予定の2010年度より4年遅れて昨年10月に完了しました。しかし、駅前周辺整備事業はまだ未完成の部分が多く、川原湯温泉の移転地である打越代替地と新駅のできた上湯原代替地を結ぶ予定の町道は、駅前で工事が止まっています。

付け替え県道の山側の砂防工事
2014年12月5日撮影


 また、町道と並行して走る付け替え県道は2010年度に完成の予定でしたが、山側の砂防工事が延々と続いており、完成のメドが立っていません。現在、付け替え県道は、川原湯温泉駅の周辺区間で一時停止、一方通行の措置が取られており、大型車両の通行は許可されていません。このため大型車以外の車両も含め、殆どの車が対岸の付け替え国道を利用しています。
酸性熱水変質帯の影響で、付け替え国道の縁石やのり面は赤茶けて亀裂が入っている。2015年2月3日撮影

酸性熱水変質帯の影響で、付け替え国道の縁石やのり面は赤茶けて亀裂が入っている。2015年2月3日撮影

 一方、付け替え国道は2012年度に完成しましたが、その後、周辺の酸性熱水変質帯の影響を受けて国道が変形してきました。昨年9月より、付け替え国道を管理する群馬県が地すべり調査を実施しており、調査結果を踏まえて対策を講じることになっています。地形・地質の悪条件をおして造られた、これら八ッ場ダム事業によるライフラインは、今後の維持管理費が重い負担となることが懸念されます。

 「八ッ場ダム予定地の用地取得・移転状況」を示す表は、昨年までの国交省資料では水没予定地の用地面積が318ヘクタールでしたが、今回の資料では302ヘクタールに改められました。また、水没予定地の補償対象世帯は昨年までの資料では340世帯でしたが、今回の資料では290世帯と、50世帯も減少しています。
 国交省の説明によれば、今回の資料の数字は、「今年4月10日に国交省関東地方整備局が国交省本省に提出したに事業認定申請との整合を図ったもの」とのことです。
 事業認定申請書25ページには、確かに今回の国交省資料と同じ面積と戸数が「事業に必要な土地の面積」、「起業地内にある主な物件の数量」として記されています。
これまで使ってきた数字を強制収用を可能とする事業認定の申請に際して見直したものと考えられます。

事業認定申請書

 水没世帯数は1979年の群馬県調査で340世帯と確認されて以来、長年この数字が使われてきました。水没予定地の人々は集落ごとにダム湖畔となる場所に国交省が造成する代替地に移転することを希望してきたのですが、2001年の補償基準、2004年の代替地分譲基準が調印されて以来、代替地計画に見切りをつけた多くの住民が転出。代替地の移転希望世帯は2005年に国交省が住民を対象に実施した「八ッ場ダム建設事業に係る意向調査」により134世帯と確認されました。
 昨年度の資料では、そのうち84世帯が移転済みでしたが、今回の資料では僅か2世帯増えて86世帯となりました。水没予定地に残るのは4世帯となっていますので、残りの全世帯が代替地に移転したとしても134世帯よりはるかに少ない世帯数になります。
 多くの住民が代替地計画をあきらめざるをえなかった理由については、昨年度の国交省資料の解説で説明しています。
 八ッ場ダム事業の進捗状況(2014年3月末現在、国交省資料)

川原湯温泉が移転しつつある打越代替地と水没予定地(2015年5月15日撮影)

川原湯温泉が移転しつつある打越代替地と水没予定地
2015年5月15日撮影

本体工事を受注した清水建設JVの事務所が並ぶ川原湯の打越代替地。背後に旅館、手前で地すべり調査。(2015年1月26日撮影)

本体工事を受注した清水建設JVの事務所が並ぶ川原湯の打越代替地。背後に旅館、手前で地すべり調査。
2015年1月26日撮影