八ッ場ダムの本体工事は2015年に始まりましたが、八ッ場ダム事業の予算の9割はダム関連事業に費やされます。ここに掲載する国交省資料では、八ッ場ダムの関連事業の中でも最も重視されてきた鉄道や道路の付替え工事の進捗状況、代替地への住民の移転状況が示されています。
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「八ッ場ダム予定地の用地取得・移転状況」を示す表は、昨年までの国交省資料では水没予定地の用地面積が318ヘクタールでしたが、今回の資料では302ヘクタールに改められました。また、水没予定地の補償対象世帯は昨年までの資料では340世帯でしたが、今回の資料では290世帯と、50世帯も減少しています。
国交省の説明によれば、今回の資料の数字は、「今年4月10日に国交省関東地方整備局が国交省本省に提出したに事業認定申請との整合を図ったもの」とのことです。
事業認定申請書25ページには、確かに今回の国交省資料と同じ面積と戸数が「事業に必要な土地の面積」、「起業地内にある主な物件の数量」として記されています。
これまで使ってきた数字を強制収用を可能とする事業認定の申請に際して見直したものと考えられます。
水没世帯数は1979年の群馬県調査で340世帯と確認されて以来、長年この数字が使われてきました。水没予定地の人々は集落ごとにダム湖畔となる場所に国交省が造成する代替地に移転することを希望してきたのですが、2001年の補償基準、2004年の代替地分譲基準が調印されて以来、代替地計画に見切りをつけた多くの住民が転出。代替地の移転希望世帯は2005年に国交省が住民を対象に実施した「八ッ場ダム建設事業に係る意向調査」により134世帯と確認されました。
昨年度の資料では、そのうち84世帯が移転済みでしたが、今回の資料では僅か2世帯増えて86世帯となりました。水没予定地に残るのは4世帯となっていますので、残りの全世帯が代替地に移転したとしても134世帯よりはるかに少ない世帯数になります。
多くの住民が代替地計画をあきらめざるをえなかった理由については、昨年度の国交省資料の解説で説明しています。
八ッ場ダム事業の進捗状況(2014年3月末現在、国交省資料)