2013年6月1日
嶋津暉之(利根川流域市民委員会共同代表)
国土交通省関東地方整備局はさる5月15日、八ッ場ダム事業を盛り込んだ利根川・江戸川河川整備計画を策定し、公表しました。
同局は4月24日に同計画(案)を公表し、関係都県知事の意見を聴いていましたが、異議なしの回答が揃ったとして計画を策定しました。策定された計画は文言等の加筆が多少あるものの、1月29日公表の同計画(原案)と基本的に変わっていません。原案に対して利根川・江戸川有識者会議、公聴会、パブリックコメントで基本的な問題点、疑問が数多く提起されたにもかかわらず、それらにまともに答えることなく、また、公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数の反対意見を無視して、同局は計画策定を強行しました。
拙速に計画を策定した理由は八ッ場ダム本体工事に早期に着手するため、同ダム事業を河川整備計画に位置づけることにあります。真っ当な議論を経ないまま策定したため、問題山積みで欠陥だらけの計画になっています。これからの時代は過去につくりすぎた社会資本の老朽化が進み、その維持と更新のため、新規の社会資本投資が先細りにならざるをえないのに、巨額の河川予算を利根川に投じ続けることが前提になっているため、実現性がない計画になっています。そして、大規模河川事業の推進を自己目的化しているため、利根川流域住民の安全を本当に守ることができる内容にはなっていません。また、過去の開発で失われた利根川の自然を回復する視点が皆無で、更なる大規模河川事業によって利根川の自然に一層の打撃を与えるものになっています。
しかし、河川整備計画は一度策定されたら終わりということではありません。河川法改正直後の建設省通達に「地域の意向等を適切に反映できるよう、適宜その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものである」と書かれています。私たちはあるべき利根川水系河川整備計画の市民案を提案して、利根川河川整備計画の再作成を求めてまいります。