八ッ場ダムについて一般の人々が知る情報の多くは、マスコミ報道によるものです。
報道の中で大きな位置を占めるのが八ッ場ダム事業の起業者である国交省や、共同事業者である首都圏一都五県(東京都・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県)の記者発表に基づくものです。
2009年、民主党政権が「八ッ場ダムの中止」を政策に掲げた時、多くのマスコミは“現場”である八ッ場ダム予定地に殺到しました。そこで取材に応えるのは、行政の主張に同調する住民がほとんどで、当時、ダム事業の継続を望む声が洪水のようにメディアを通して全国に流れました。
土地を追われ、故郷をダムに沈められる地元で、なぜダム事業を推進する行政に同調する意見ばかりが聞かれるのか、現場の複雑な状況は八ッ場ダム問題の本質に関わるものですが、この問題を正面から捉えた報道はほとんど見受けられませんでした。
また、八ッ場ダムは首都圏の「治水」と「利水」を目的としたダムですから、現地の住民だけではなく、利根川下流域の首都圏の住民も当事者なのですが、都市住民の声を取り上げるメディアもほとんどありませんでした。
このため、報道は全体としてバランスを欠き、表面的な事象を追う内容にとどまりました。
ここでは、一般の人々が八ッ場ダム問題を知る上でネックとなっているマスコミと行政、そして河川ムラといわれる利権の問題を取り上げています。