中和事業によって、吾妻川の水質は弱酸性となりました(八ッ場ダム予定地で、pH4.77~5.99)。しかし八ッ場ダムが完成した場合、品木ダムが満杯になれば、中和生成物は八ッ場ダムに流入し、八ッ場ダムは中和生成物の沈殿池を兼ねることになります。藻類の異常増殖と相まって、ダム湖は異様な色を呈し、地域にとってマイナスイメージとなることは確実です。
また、中和生成物の流入は、堆砂率の進行要因となり、ダムの寿命を一層短くすることにもつながります。
社会も科学技術も、ダム計画当初から大きく変容した今、将来にわたって持続可能な吾妻川と人々との関わり方を改めて考える時期にきているようです。
水温 ℃ |
pH | 全リン mg/L |
全窒素 mg/L |
COD mg/L |
硫酸イオン mg/L |
カルシウムイオン mg/L |
|
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品木ダム | 23.1 | 5.55 | 0.025 | 1.03 | 2.1 | 513 | 235 |
長野原取水堰 | 15.0 | 5.23 | 0.026 | 1.18 | 1.5 | 65 | 9 |
ダムサイト予定地 | 15.5 | 5.99 | 0.028 | 1.05 | 1.5 | 66 | 7 |
全リン mg/L | 全窒素 mg/L | |
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水道1、2、3級 | 0.01 | 0.2 |
水道3級で高度処理を行う場合 | 0.03 | 0.4 |
吾妻川流域には、吾妻鉱山、白根鉱山、石津鉱山、小串鉱山など、大きな硫黄鉱山がいくつもあった。
1973年にできた金属鉱業等鉱害対策特別措置法により、吾妻川流域の廃硫黄鉱山に対しても鉱害防止事業が実施されたことになっている。(義務者不在の場合は地方公共団体が代わりに実施)
一般的な対策としては、
坑口を塞ぐ坑道閉鎖法
雨水等が坑内に浸透するのを防ぐ外部遮断法
地上部分の採掘跡や廃滓を覆う覆土植栽法
酸性廃水を中和する処理法
などであるが、吾妻川流域の硫黄鉱山についてはは行われなかった。また、、、がどの程度実施されたのかも不明である。今なお、強酸性水が廃硫黄鉱山から流出しているとすれば、これらの対策をきちんと実施することが必要である。
品木ダムがいずれは満杯になることが予想されるので、国土交通省も一応はその対策を検討している。これを吾妻川上流総合改善事業というが、しかし、まだ現実性のあるものにはなっていない。
*目的
現在の中和方式の改善(品木ダムの満杯対策)
残りの酸性成分への中和対策(現在、中和しているのは酸性成分の全流出量の約4割)
*総事業費 847億円
毎年2億円程度の調査費がついている。
平成4年度から実施計画調査
平成17年度中に草津に実験プラントを設置する予定。
*実施する事業の内容
当初は品木ダムの嵩上げと万座川へのダム建設の計画であったが、現在はプラント方式の中和処理を検討。
*プラント方式の中和処理
石灰による中和をプラントで行って、沈殿物を脱水し、土砂が混ざらない中和生成物を取り出す。その中和生成物の脱水ケーキの再利用を図る。
(しかし、中和生成物の再利用のメドが特にあるわけではない。)