現在の基本計画では八ッ場ダムは2015年度完成になっていますが、到底困難であり、工期の大幅延長は必至の状況になっています。そのことは八ッ場ダムの検証でも、また、国交大臣の答弁でも明らかになっています。
「ダム本体工事の入札公告から試験湛水の終了までに87ヶ月程度必要と考えられる。」
2012年2月2日の衆議院予算委員会で当時の前田武志国交大臣は、
「本体に着工してから、7年で完成すると想定されている」と答弁した。
八ッ場ダム事業では、1994年以来、道路建設などの膨大な関連工事が行われてきましたが、2013年7月現在、本体工事は未着手です。
上記の工程であると、仮に2013年度中に本体工事に着工してもダム完成は2020年度、2014年度着工ならば2021年度に入ってからになります。現在の基本計画による2015年度末完成より大幅に遅れることは確実です。
ダム本体予定地(吾妻渓谷)はJR吾妻線が通過しているため、鉄道の付け替えが完了して現在の鉄道が廃止されないと、ダム本体の本格的な工事を始めることはできません。
付替鉄道の新・川原湯温泉駅の駅舎は2014年2月に完成予定ですが、駅前整備が進んで付替鉄道の開通が可能になる時期は明らかにされていません。駅前整備事業用地の買収完了の見通しが立っていないともされていますので、付替鉄道の開通が遅れ、その影響で本体工事がさらに遅れる可能性があります。
仮にダム本体が完成したとしても、地質が脆弱な八ッ場ダム予定地では、試験湛水中に地すべりが発生してその対策工事に追われる可能性が十分にあります。
実際に奈良県の大滝ダム(近畿地方整備局)では試験湛水中に大きな地すべりが発生し、その対策工事で完成が約10年延び、ようやく2012年度になって完成しました。また、埼玉県の滝沢ダム((独)水資源機構)も地すべり対策工事で工期が約5年間延びて2011年3月に完成しましたが、いまだに地すべりが再発せぬように貯水池の水位低下を超スローで行っています。
八ッ場ダム湖の予定地周辺は、もともと多くの住民の居住地です。さらに、ダム事業によって水没、移転を余儀なくされる住民の移転代替地をダム湖周辺に造成しているため、八ッ場ダム湖は住宅地に取り囲まれることになります。また、道路、鉄道などの多数のライフラインもダム湖周辺を通ることになります。このため、八ッ場ダム事業では他のダム事業にもまして確かな安全対策が求められます。
過去のダム事業の事例や八ッ場ダム事業の特殊性を踏まえると、八ッ場ダムは本体工事に着手しても、実際に完成するのは2020年代後半以降になることも十分に予想されるのです。