民主党の議連は9月16日、民主党の政策調査会へこの法案を提出し、法案についての議論の場を速やかに設置し、法案を練った上で民主党の成案として国会に提出するよう求めています。
わが国には、ダム事業を促進するための法律はありますが、ダム事業の中止を前提とした法律がありません。1990年代以降、ムダな公共事業への世論の風当たりが強まり、旧政権下では全国でいくつものダム事業が中止になってきました。しかし、ダム事業中止を想定した法律がないため、それまでダム事業に依存してきた地域では、ダム事業が中止になった後、それに代わる地域再生のための裏付けがなく、人口減少・地域の衰退が止まらない不幸な事例が数多く見られます。
ダム事業を促進する法律は「水源地域対策特別措置法」(略称:水特法)といい、1973年に公布されました。当時、ダム事業を押し付けられた全国の水没予定地では行政に対する激しい抵抗運動がありました。八ッ場ダム予定地も例外ではありません。けれども、この水特法により、ダム予定地域には多額の税金が投入されることになりました。このことがダム事業を肥大化させ、ダム関連事業による景気を期待する周辺地域の世論を変え、最終的には孤立した地元を軟化させる契機となりました。
八ッ場ダム事業では、ダム事業費4,600億円のほかに、水特法事業に997億円という予算がついています。これらの巨額の税金は、ダム予定地に多くの道路や施設などのハード設備の建設を促しましたが、この間ダム予定地域は人口減少、地場産業の縮小により衰退の一途をたどっているのが実情です。
ダム事業の見直しをするためには、それを前提とした法整備が必要となりますが、いまだにわが国ではこの問題に焦点が当てられていません。ダム中止を前提とした法整備は八ッ場ダムに限らず、全国のダム予定地にとって必要な法律であり、公共事業の見直しを可能にするための重要な施策でもあります。
●特別措置法案の要綱
●特別措置法案の概要
文責:八ッ場あしたの会
ダム事業の中止の際に実施されているダム建設事業および水源地域整備事業に含まれる各事業について、今後の生活再建・地域振興に必要なものを精査し、継続すべきものは特定地域振興計画の中に位置づけるものとする
第4 特定地域振興計画
ダム予定地はダム計画推進の過程で、地域の自立が著しく阻害され、基幹産業が衰退してきているので、基幹産業を再構築するため、ソフト・ハード両面の支援事業を行う。
第4 特定地域振興計画
国は既買収地(国有地)の利活用を図るため、ダム予定地の地方公共団体および移転住民と非移転住民に対して、既買収地の貸与及び分譲を計画的に進めるものとする。
第4 特定地域振興計画
第7 既買収地の利用及び活用に関する特例
2 国は、会計法第29条の3の規定にかかわらず、特定地域の住民又は住民であった者で政令で定める要件を満たすもの(3において「住民等」という。)に対し、1の公共的な施設の用に供する既買収地以外の既買収地を随意契約により売却することができること。
3 国は、住民等に対し、2の既買収地を優先的に売却するよう努めるものとすること。
ダム予定地の住民はダム事業により、地域の産業が衰退して多大な経済的損失を受けてきたことを踏まえ、非移転住民に対して生活再建支援金を支払うものとする。
なお、非移転住民への生活再建支援金の支給は 公費による助成の基本ルール、① 社会の公平性の面で個人の財産形成に結びつく公費の支出は行わないこと、② 住民間の不公平(移転住民と非移転住民の間の不公平)があってはならないことを踏まえ、都道府県が条例・要綱等で定めるところにより、行うものとする。
第8 特定地域の非移転者に対する生活再建の支援等
ダム予定地の住民は、移転を前提としていたため、家屋、営業用建物の改築ができず、著しく老朽化した家屋等で生活し、営業することを余儀なくされてきた。今後、ダム予定地で生活、営業を続けるためには、家屋等の新改築が必須のことであるので、その費用を助成する。
なお、新改築への助成も 上記の、公費による助成の基本ルールを踏まえ、都道府県が条例・要綱等で定めるところにより、行うものとする。
第8 特定地域の非移転者に対する生活再建の支援等
地域振興計画(基盤産業の再構築を含む)の策定に 地元住民の大多数の意見を反映できるように、地元住民の合意形成を図るものとする。
第6 住民の合意形成