八ッ場ダム予定地の人々は、何十年もの長い歳月、ダムがらみの生活を強いられてきました。ダムを前提として将来の生活設計を立てている地元の人々にとって、現段階でのダム計画の中止は、その生活設計を白紙に戻し、絶望の淵に追い込むことになりかねません。
また、地域全体としても、ダム事業にともなう様々な関連工事が進められている現状で、突然、事業が中断すれば、工事がそのまま放置されることになり、その痛手は計り知れぬものとなるでしょう。
しかし、わが国では、公共事業は止まらないことを前提としているため、中止を視野に入れた法整備には、いまだに手がつけられていません。
この状況を打開するため、全国のダム問題に取り組む市民団体、水源開発問題全国連絡会が鳥取県の先駆的な取り組みを参考にして作成したのが、「ダム計画中止後の生活再建支援法案」です。
鳥取県では県営中部ダムの中止にともなって、ダム予定地の地域振興、生活再建を図るため、2000年度、県庁内に旧中部ダム地域振興課をつくり、地元住民との話し合い、共同の現地調査などを繰り返しながら、「旧中部ダム予定地域に係わる振興計画」をつくりました。この計画を2001年3月に地元に提示して、6月に地元との合意がなされました。県が誠意をもって現行制度の下で可能な限りの生活再建・地域振興策を進めていくという姿勢は、他県では例をみないものです。