八ッ場ダム予定地にはおびただしい遺跡があり、その発掘調査は、八ッ場ダム事業によって群馬県埋蔵文化財調査事業団が行っています。さる6月4日、群馬県議会で文化財の問題を扱う文教警察委員会において、酒井宏明県議が八ッ場ダム予定地の発掘調査について質問しました。
群馬県(群馬県教育委員会の洞口文化財保護課長)による答弁の要点は以下の通りです。
(右写真=川原湯地区の石川原遺跡を視察し、発掘調査の担当者から説明を聞く酒井県議 2015年6月17日)
———————-
●本体工事の着工に伴い、八ッ場ダムによって水没する遺跡の発掘調査が再開されている。今年度(平成27年度)は約9万平方メートルの調査を予定。残りはおよそ30万平方メートル。
●天明3(1783)年の浅間山噴火によって発生した泥流が水没予定地に厚く堆積しており、発掘調査の大きな部分を占めている。国では、埋蔵文化財の調査対象は中世までという認識だが、天明泥流に埋もれた遺跡は群馬県を特徴づける非常に重要な史料との認識で、調査に取り組んでいる。
●八ッ場ダム事業による発掘調査の協定は、今年度中に変更する予定である。調査費用が増えるのは確実だが、まだ確定していない。上期中には経費を積算し、国交省と協議する予定。
●縄文時代の翡翠のペンダントは群馬県内で21点出土しているが、そのうち八ッ場ダム予定地で出土した3点が盗まれてしまった。申し訳ない。
●教育委員会や埋蔵文化財調査事業団で遺跡のランク付けをするということは一切なく、これについては、(八ッ場ダム予定地の遺跡保存と徹底調査を訴える)「ダム検証のあり方を問う科学者の会」も了承している。
———————-
八ッ場ダム事業用地の発掘調査については、1994年に建設省関東地方建設局と群馬県教育委員長との間で最初に協定書が締結されました。この時の調査費用は66億400万円、2006年3月末までに調査完了とされました。(右写真=川原湯地区の石川原遺跡 2014年12月22日)
しかし、八ッ場ダム関連事業の遅延に伴い、2005年の第2回協定変更により、調査期間は2011年3月末まで延長され、2008年の第3回変更によりさらに2016年3月末まで延長されました。この第3回協定変更では、調査費用も98億円に増額されています。
八ッ場ダム事業による発掘調査で大きな部分を占める天明浅間災害遺跡は、水没予定地の全域に広がっています。八ッ場ダム事業において、群馬県を特徴づける天明浅間災害遺跡の調査を行うことが決まったのは、県教育委員会によれば第二回の協定変更からとのことです。今年度、旧・川原湯温泉駅周辺で発掘調査が始まった下湯原遺跡も、当初の埋蔵文化財リストには含まれていません。住民の生活や交通に利用されていた時にはわからなかった地下の遺跡が試掘により発見されたケースは多数あり、それに伴って発掘対象面積も増大しています。
現在の調査期間は、第3回変更により今年度末までとなっていますが、今年9万平方メートルの発掘調査を完了したとしても、30万平方メートルの調査が残っており、調査期間の延長が必要です。調査費用も当初の見込みよりはるかに多く必要となることが明らかとなっており、群馬県は第3回協定変更時から98億円では足りないと国交省に訴えていました。
群馬県による6月4日の答弁は、国交省と群馬県の間で今年度中に行う予定の4度目の発掘調査の協定変更には、調査期間の3度目の延長と調査費用の2度目の増額が盛り込まれることを示唆しています。
◆2015年6月12日 しんぶん赤旗
ー群馬・八ッ場ダム予定地遺跡の徹底調査約束 酒井県議質問ー