スーパー堤防は全体計画の実現の見通しがなく、ほんの一部進めているところでは住民の強制移転を迫るものになっており、有害無益な事業です。
東京の江戸川右岸では、北小岩一丁目に続いて、篠崎公園地区でもスーパー堤防を整備する計画が進められています。
2月22日の国交省関東地方整備局の事業評価監視委員会では、江戸川スーパー堤防(篠崎公園地区)の再評価が重要案件として議題になりました。
その議事録が関東地方整備局のホームページに掲載されましたので、お知らせします。
★国交省関東地方整備局 社会資本整備 平成27年度分
(第1回~第8回委員会 *「特に重点的な審議を要する案件」として江戸川スーパー堤防(篠崎公園地区)が取り上げられたのは第8回委員会)
記者発表資料に掲載されている出席者は以下の通りです。
審議結果は、議事要旨(記者発表資料)の2ページにある通り、事業主体である国交省関東地方整備局が原案として提示した「継続」方針を「了承」したのですが、議事録を読むと、家田仁委員長が厳しい意見を述べていることがわかります。(江戸川スーパー堤防に関する審議は、議事録4ページ~19ページ)
議事録より、家田委員長の発言の主な箇所を転載します。
◆関東地方整備局の事業評価監視委員会第8回(2016年2月22日)議事録
〇家田委員長
この写真の両側がみんないずれスーパー堤防になったらいいものねという、そういうことですよね。だけど、まだ全然なっていないものねと。最初にやるのは、この篠崎公園の隣をやるからと、そういうことでしょう。何でここなんだと。そういう質問。
つまり、ここまで説明されているのは、みんな家がいっぱいくっついている絵だから、斜面のところに、それで、安全になるし、いいねということなんだけど、これは公園だから、ずばり、一部は住宅だけどほとんど公園でしょう。ということは、公園を高くするということですよね。ということは、高い公園をつくるということであって、それはそこに逃げるという避難所をつくるのか、避難所はこの高さでいいのかとか。だけど、避難のハザードマップのところは、この近所の人は、みんな江戸川の左岸まで逃げるということになっているよね。だから、こんな避難計画と篠崎公園の端っこを高くするということと、どういう関係になっているのかという、何かそもそものこのプロジェクトの本来的意義というのが、何か、要はもうちょっと説明いただきたいのと、多々ある、いろんなやるべきところがある中で、この一番森みたいなところをいじくり回すというのが、楽といえば楽なんでしょうけど、やる価値があるのかという意味からすると、これが最初というのが、もう一つよくわからないんだけど、教えてください。
〇家田委員長
例えば江戸川の右岸でも、この篠崎公園の上流側だって、こんなぐちゃぐちゃのところでやるべきだけど、現地がなかなかそこまで準備が整っていないので、それで篠崎公園のところだけ先にやらせてくださいねという話なのか、それとも一番やるべきところなんて、全然、地元はやる気も何もなくて、それで一番楽そうなところだけちょっとやってやるかという、それだけの話なのかで、随分、このプロジェクトの見え方が違ってくるよね。その辺はどうなんですか。
つまり、さっきの説明だと、地元の準備が整っているからやるんだという話だったけど、地元の準備が整っているのは必要条件であって、地元がやりたいと言ったら、どこでもやっていいというものじゃないんだよね。そうでしょう。
〇家田委員長
いや、だからプランを言ってほしいのよ、もっと。何年くらいでこれが全部できて、そうすれば、ここの赤いところをやることの意義がこう出てくるんですよと。そっちの見通しなんて何もないくせに、これをやると超過洪水対策が、この下流部についてこんなに行きますなんて言われたって、「本当かよ」と言うしかないじやないですか。
〇事務局
いや、ここにつきましては、すみませんが、いつまでにできるということを明確に言えるような状況ではないということでございます。
〇家田委員長
300年後ぐらいですか。
〇事務局
いや、高規格堤防事業としては、順次、まちづくりなどにあわせて、整備できるところを整備していくというスキームの中で進めさせていただいているところです。あわせて、ここを整備できるところは整備していくというスキームの中で進めさせていただいています。
〇家田委員長
そうするとね、ここで生じている超過洪水対策で出てくる便益というのは、それが全部でき上がって、いつになるか知らないけど、全部でき上がったときの便益ですね。普通の堤防ならば堤防の敷地だけでいいんだから、お金かけてやっていけばそれなりに進むけども、後ろで区画整理があるなんていうものは、そう簡単に全体に進むとは思えない。そこのところはどう考えているのですか。
〇事務局
そこのところは、今のスキームはそうなっているので何ともお答えしようがないという状況です。
〇事務局
補足いたします。先ほど4ページ目のところで、事業仕分けのときの、その後の考え方を御説明させていただきましたが、4ページ目のところの真ん中ぐらいに、平成23年12月ということで、まさに事業仕分けのときもいろいろ、さまざまな議論がございまして、その一つとして、やはりいつまでかかるんだという委員長の御指摘のような御意見もございました。その結果として、いろいろと政府の中でも議論をした結果、平成23年12月になりますが、当時は約873km、全体としては500堤防整備をやる予定にしておりましたが、その中で地域を限定した上で120km、大体7分の1ぐらいの延長の中で、さらに先ほど申したような三つの条件があるところを優先してということで整理をさせていただいている状況でして、さらにもっと優先的、もう少し計画を持ってということになると、今の段階ではそこまでは、計画としては持っていないという状況になっているというのが今の実情になります。
〇家田委員長
そんな説明じゃだめでしょう。これね、普通の人だって主張可能な格好でやってるんだから、将来展望なんて何にも持ってないんだけど、とりあえずここやると言ってるからやらせてくださいなんていうんで済むわけないじゃないですか、説明として。営々とここのところ、ずっと赤いところやっていくつもりですと、我々は根性入れてやりますと、地元とも頑張ってやっているところですと。だけど、とりあえずここのところが合意ができだからやらせてくださいといったらわかるけど、いつまで何の検討もつかないなんて言ってる、そんなことで、例えば、どこからどこまでリニア新幹線をつくろうと言ってると。だけど、この1mだけ引けるというから、そこだけ合意とれたからやりましょうなんていうので、ほかが何m、500kmぐらいのうちの499kmは一切検討もつかないというときにやるかと、そうじやないでしょう。全体の見通しもいい、そして、準備がここに整っている、だからここからやりましょうというのだったら納得できるけど、あなたの説明は全然、見通しも何にもつかないというような話でしょう。
〇家田委員長
ありがとうございます。それでは、方針はそういうことにして、今日出た意見をよくまとめておいてください。やはり途中で大野先生おっしゃったけれど、僕はスーパー堤防を、やはり甚大な災害を考えるときちんと推進していってほしいと思うんだけれど、ここまでの、鬼怒川のときもそうだったけれど、何年かかったって少しも整備率が上がらないというようなので、もう仕方がないものねと言ってるような河川行政では、いつまでも仕方がないものねが続くわけであって、さっき大野先生が言ったような手法も含めて、どういうふうにしたらもっと素早く進むのかということも勉強課題として考えてもらわないと。今回も継続ですからいいようなものだけれど、新規に考えていくときも、常にやはり批判の対象になりますよ。さっき費用対効果の話や、あるいは地盤、地質調査の今後の取り組みもありましたので、次回とは言わないけれど、いずれこういうものをもっと円滑に進めるためには、関東の河川部隊としては一体どういう知恵を出そうとしているのかというのをまとめて、それで皆さんにお知恵を拝借するようなことをやったらいかがですか。やはりスーパー堤防は関東と関西、近畿でやるのでしょう。そうすると、主として考えるべきことは、ここと大阪の人ですよね。ぜひお願いします。