昨年9月の鬼怒川左岸決壊箇所、茨城県常総市「三坂地区」の堤防本体工事が5月27日までに完了したということで、29日、国交省下館河川事務所が住民説明会を開きました。
堤防の本体工事を完了したのは約200メートルの区間です。堤防の断面図が国交省下館河川事務所のホームページに掲載されています。
http://www.ktr.mlit.go.jp/shimodate/shimodate00172.html
NHKの報道では、「水の浸食を防ぐため、のり面にシートを張り、コンクリートブロックを敷き詰めたうえで芝を張っています」と説明され、朝日新聞では、「夏の出水期を前に、住民らもひとまず安心した様子だった」としています。実際、川表法面(かわおもて・のりめん、堤防の川に接する側の法面)は堤防の土に遮水シートを敷いて、そのうえに大型連結ブロックをおき、その上を覆土しています。
しかし、川裏法面(かわうら・のりめん、堤防の外側の法面)は植生工(張芝)となっており、越水があったときの洗掘防止策は講じられていません。昨年9月、三坂地区における破堤は、堤防を越えた越流水によって川裏法面が洗掘されたことが原因となって起こりました。破堤のメカニズムを考えれば、水害の再来を防ぐために最も重要な川裏法面の被覆をなぜ行わないのか、理解に苦しみます。
この問題は、災害復旧工事計画が公表されて以降、建設省OBの石崎勝義氏、利根川流域市民委員会共同代表の嶋津暉之氏らが指摘してきたことです。昨年12月、東京の全水道会館で開催された八ッ場ダム住民訴訟の集会では、国交省河川局防災課長であった宮本博司氏が「この対策後に越水したらどうするのか」と警鐘を鳴らしてもいます。
◆2016年5月29日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160529/k10010539261000.html
ー「関東・東北豪雨」で決壊の堤防 本体工事が完了ー
茨城県常総市で、去年の「関東・東北豪雨」で決壊した鬼怒川の堤防の本体工事が完了し、29日、地元の住民を対象に見学会が行われました。
茨城県常総市の上三坂地区では、去年9月の「関東・東北豪雨」で鬼怒川の堤防が決壊し、住宅9棟が流されて住民1人が死亡するなど、大きな被害が出ました。29日、堤防の本体工事が27日までに完了したことを受けて、地元の住民を対象に見学会が開かれ、およそ50人が参加しました。
完成した堤防は長さおよそ200メートルで、決壊前に比べて2メートルほど高くなっているほか、水の浸食を防ぐため、のり面にシートを張り、コンクリートブロックを敷き詰めたうえで芝を張っています。
見学会では、国の担当者が「去年と同じような豪雨でも水害の心配がないように設計した」などと説明していました。国は、主に茨城県内の鬼怒川の流域について堤防を増強するなどの事業を平成32年度までに行う予定です。
豪雨で自宅が全壊した70代の男性は「堤防ができて、この地区はよかったが、ほかの地区についても工事を急いでほしい」と話していました。関東地方整備局下館河川事務所の里村真吾事務所長は「今後も鬼怒川流域の事業を進め、住民の心配を取り除いていきたい」と話していました。
◆2016年5月30日 朝日新聞茨城版
http://digital.asahi.com/articles/ASJ5Y4227J5YUJHB004.html?rm=348
ー鬼怒川の決壊箇所の堤防完成 常総市ー
常総市上三坂地区で昨年9月、関東・東北豪雨で決壊した鬼怒川の堤防復旧工事が終わり、住民説明会が29日にあった。決壊前の堤防より1・9メートル高くなり、遮水シートなどで補強された。夏の出水期を前に、住民らもひとまず安心した様子だった。
国土交通省下館河川事務所によると、昨年の豪雨では鬼怒川は堤防の安全性を保てる限界の「計画高水位」を超えた。堤防が破れ、周辺の民家を押し流すなどの被害をもたらした。1月から復旧工事を始めていた。
新堤防は高さ5・4メートルと旧堤防より1・9メートル高い。3~4メートルだった堤防最上部の幅も6メートルに広がった。河川側ののり面には遮水シートを敷いた上に、ワイヤで結んだコンクリートブロックで覆って補強。地中には遮水板を打ち込み、水が堤防を抜けないようにした。
新堤防のそばには、流失した家屋跡が広がる。自宅が全壊した会社員の女性(55)は「これで安全にはなったのでしょうが、自宅再建のめどがまだ立ちません」。上三坂地区の秋森二郎区長も「ここだけでなく、上流や下流側も整備してほしい」と話した。(三嶋伸一)
◆2016年5月29日 産経新聞
http://www.sankei.com/affairs/news/160529/afr1605290030-n1.html
ー【関東・東北豪雨】 決壊の堤防再建 茨城・常総で住民見学会ー
昨年9月の関東・東北豪雨で決壊し、再建工事中だった茨城県常総市三坂町の鬼怒川の堤防が完成し、国土交通省関東地方整備局は29日、現地で住民見学会を開いた。
再建工事では総額約18億円かけ、堤防の高さを決壊前から約1・9メートルかさ上げして約5・4メートルにし、堤防上部の幅を約6メートルとした。同じ規模の豪雨が降った場合でも耐えられるように、鬼怒川で水があふれるなどした他の箇所でも整備を進めており、5年間での完了を目指している。
見学会には住民約50人が参加し、担当者から説明を受けながら完成した堤防を歩いた。三坂町の上三坂地区の秋森二郎区長は「立派なものができて良かったとは思うが、他の部分も早く直してほしい。それまでは安心して生活できない」と話した。