八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

都知事選の主要候補者4氏に八ッ場ダムについての要請書を送付

 当会では連携団体とともに、本日、都知事選に立候補している主要四候補に要請書を提出しました。
 要請書を送付した候補者は以下の通りです。(敬称略)

 〇鳥越俊太郎
 〇増田寛也
 〇小池百合子
 〇上杉隆

 送付した要請書を転載します。

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 2016年7月22日
 八ッ場あしたの会
 八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会

  八ッ場ダム建設計画および東京都の水政策について精査を要請します

 八ッ場ダムは64年前に構想が発表されたのち、さまざまな問題により事業が長期化してきましたが、国土交通省関東地方整備局は2015年1月、本体工事に着手しました。
 さる6月14日、国の名勝・吾妻渓谷で、減勢工部分のコンクリート打設が開始されたと報道されています。しかし、建設予定地には浅間山噴火による堆積物や熱水変質帯、地すべり地帯が広がっており、今後工事が難航すること、その対策のために事業費がさらに増額されることが予想されます。現地では縄文時代から天明浅間噴火までの貴重な遺跡が数多く発見されており、その発掘調査にも十分な時間を取ることが必要です。

 一方で、八ッ場ダムに水源を求めてきた東京都では、近年水需要が大きく減っています。「平成30年代に600万㎥/日」必要という水需要予測を立てていますが、2014年度の1日最大配水量は465万㎥であり、実績とのかい離が開くばかりです(要請書末尾に掲載のグラフ参照)。毎年のように利根川の渇水が喧伝されてはいますが、東京都はすでに十分な余剰水源を抱えており、 更なる水源開発は必要ありません。

 また、東京都は治水目的でも八ッ場ダムに参画していますが、江戸川での水位低減効果は3~6cm程度に過ぎません。最近多発する集中豪雨、内水氾濫に対してダムは無力です。
 東京都知事に就任された暁には、こうした現状を踏まえ、次の事項に真摯に取り組まれるよう要請いたします。

1)民主党政権下の八ッ場ダム検証(2011年)では、地すべり対策費などで約183億円の増額が必要と試算され、この他にも東京電力への減電補償などで500億円以上の増額となる可能性があります。増額による計画変更には関係都県の議会の承認と知事の同意が必要ですから、その際には八ッ場ダムの必要性を根本的に見直し、その危険性などの問題点を精査してください。

2)東京都議会では2010年、水需要予測の見直しを求める請願(八ッ場ダムをストップさせる東京の会提出)が賛成多数で採択されましたが、水道局は完全にこれを無視し、2012年に再び従前の予測値を採用しました。水需要が増加していたはるか昔のデータを組み込むことで、需要が減少し続けている現在の傾向とは全く逆方向の計算値をはじき出したものです。八ッ場ダムの必要性を作り出すために過大な水需要予測に固執する結果、都の水道施設の更新規模も過大なものになり、大きな財政負担が生じます。水需要予測を科学的な手法により実態に即して見直すよう、水道局を指導してください。また、八ッ場ダム参画によって切り捨てられる可能性が高い多摩地域の水道水源「地下水」を震災時にも活用できる貴重な自己水源として、東京都が適正に管理しつつ活用するよう方針を転換してください。

3)昨年9月の鬼怒川水害で露呈したダム治水の限界を踏まえ、国交省内ですでに実証されているがお蔵入りとなっている堤防強化工法(耐越水堤防工法)を導入するなど、河川改修に優先的に取り組んでください。この工法は、膨大な時間とコストがかり、住民に犠牲を強いる非現実的なスーパー堤防とは異なり、安価で着実に治水安全度を高めることができる方策です。また雨水浸透や雨水貯留など、都市特有の内水氾濫対策にも注力してください。

4)八ッ場ダム建設工事を優先して、貴重な歴史遺産の発掘調査がおざなりに行われることのないよう注視し、特に重要な遺跡が発見された場合にはダムを中止してでも現地保存がなされるよう国と群馬県に求めてください。  以上
(詳細な解説は、八ッ場あしたの会のホームページ https://yamba-net.org/wp/ をご参照ください)

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 要請書には以下の「東京都一日最大給水量の実績と予測グラフ」を資料として添えました。東京都は八ッ場ダムの主目的である「利水」(都市用水の開発)への参画を正当化するために、水需要予測を過大に設定してきました。

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