ダム予定地が滋賀県にある丹生ダムについて、国交省が事業中止を正式に決定しました。
丹生ダム事業は1988年に着工、水没予定地の40戸が集団移転後、丹生ダムで開発する水を利用することになっていた京都府、大阪府、阪神水道企業団が事業から撤退していました。これまでに用地買収や道路工事などに約570億円が費やされています。国や水資源機構のダム事業で、住民移転後に中止となるダム事業は始めてとのことです。
京都府などが丹生ダム事業から撤退したのは、社会状況の変化により、当初の想定より水需要を大幅に下方修正することになったためです。丹生ダムの事業主体は(独)水資源機構であり、水源開発が目的から外れると事業を進めることができないことから、すでに10年以上前から中止が既定路線でした。しかし、実際に中止が決定するのに長期間を要しました。丹生ダムの公式ホームページを見ると、つい最近まで関連事業の入札が行われた来たことがわかります。
【参考】 水資源機構 丹生ダム建設所ホームページ
丹生ダムは淀川水系のダム事業でした。淀川水系では、1997年の河川法改正以降、「住民参加」と「環境」という改正河川法の新たな理念を実現するために、画期的な淀川方式が採用され、2001年に国交省近畿地方整備局が淀川水系流域委員会を設置しました。この委員会は、「原則としてダムを建設しない」という趣旨のもと、淀川流域のダム事業の見直しを行った結果、5つのダム事業の中止を勧告しました。丹生ダムもその一つでした。
中止が勧告された5ダム事業のうち、すでに中止されているのが余野川ダム事業です。余野川ダムの利水予定者は大阪府箕面市と阪神水道企業団でしたが、いずれも事業から撤退したため、2008年に中止が決定しました。
他の3ダム事業については、天ヶ瀬ダム再開発は推進が決まっており、現在工事中です。
大戸川ダムは残念ながら、推進の決定がまもなく出ます。ただし、ダム事業の上位計画である淀川水系河川整備計画には大戸川ダム事業が組み込まれていないため、国交省は淀川水系河川整備計画を変更し、大戸川ダム事業を組み込む手続きをとる必要がありますので、もう一段階あります。
川上ダムは2年前に推進の決定が出ていますが、伊賀市民が川上ダムからの伊賀市の撤退を求める運動を進めています。川上ダムも丹生ダムと同じ水資源機構ダムですので、もし伊賀市が撤退すれば、水資源開発の目的がなくなり、水資源機構の川上ダム事業実施計画は成り立たなくなります。
関連記事を転載します。
◆2016年7月20日 京都新聞
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20160720000158
ー滋賀の丹生ダム、国交省が事業中止を正式決定ー
滋賀県長浜市の高時川上流で計画されていた丹生ダムについて、国土交通省は20日、ダム事業を見直す検証の結果、中止と決定した。1968年の予備調査開始から48年を経て計画に終止符が打たれた。国や水資源機構のダム事業で、予定地の住居が移転後に中止となるのは初めて。
丹生ダムは姉川・高時川の治水や利水を目的に近畿地方整備局と同機構が事業を進めていた。だが2014年1月、国によるダム検証の結果、他の治水対策との比較で「有利ではない」との評価が示された。
県は中止を受けて湖北圏域の河川整備計画を近く国に申請する。河川改修のため高時川の掘削など進める内容で、来年度から事業に着手する方針。水没予定地での道路整備など地域振興策は関係機関が地元と具体策を協議していく。県流域政策局は「計画に基づき河川改修を進め、地域振興策は地元とよく話し合って進める」としている。
長浜市の藤井勇治市長は「中止は非常にやるせなく、無念。心労をかけた地元の思いに報いるよう、国は万全の対応をとるよう強く求める」とコメントし、中止後の対策に国の協力を要請した。
丹生ダムは1988年に着工した。水没予定地の40戸が集団移転後、下流の京都府や大阪府などが水利用の枠組みから撤退していた。これまでに用地買収や道路工事などに約570億円が費やされた。
◆2016年7月20日 NHK滋賀放送局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/2064164011.html?t=1469116009669
ー丹生ダムの建設中止 正式決定ー
長浜市で、国が計画していた「丹生ダム」の建設の中止が正式に決まりました。
「丹生ダム」は、大阪や京都などの利水や、ダム周辺の治水のために、国が昭和47年に計画したダムですが、平成22年から、本当に必要なダムかどうかを国が検証してきました。
その後、おととし1月、国土交通省は、「ダムの建設は河川改修などに比べて有利ではない」とする検証結果を公表し、事実上、建設中止の意向を示していました。
そして、20日、国土交通省は正式に建設の中止を決めました。
国土交通省は、今後、ダム建設の中止後の地域振興策について、関係機関とともに検討を進めていく方針を示していて、滋賀県・流域政策局は、「国や地元と協議しながら、周辺の河川の改修で治水対策を進めたり、道路の整備などの地域振興策を進めたりしていきたい」と話しています。
また、地元の長浜市の藤井勇治市長は、「地元が集団移転も含めて協力をしてきたダム建設の中止は、非常にやるせなく、無念です。国は誠心誠意、万策の対応をしていただきたい」とコメントしています。
◆2016年7月20日 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016072090231426.html
ー長浜の丹生ダム中止決定 国交省、住民移転後で初ー
滋賀県長浜市に建設が予定されていた丹生(にう)ダムに関して、国土交通省は20日、事業を中止する方針を正式決定した。2009年以降、国が検証を進めてきた83のダム事業のうち、水没予定地の住民移転完了後に中止となった水資源機構のダム計画は初めて。
丹生ダムを巡っては、14年1月に国交省近畿地方整備局が開いた検証会議で、ダムの目的だった治水は河川改修の方が費用が抑えられることなどから「ダム建設を含む案は有利ではない」と判断。今年6月には「事業中止が妥当」とする対応方針案を国交省に報告していた。
国交省で今月8日に開かれた有識者会議で、同整備局の方針案が認められた。国交省は「中止後の地域振興は、これまでのダム事業の経緯を踏まえ、関係機関とともに実施する」としている。
丹生ダムは琵琶湖に注ぐ姉川支流の高時川上流で1968(昭和43)年に予備調査が始まった。事業主体は水資源機構。水没予定地にあった40戸は、96年までに移転を済ませていた。
◆2016年7月21日 読売新聞滋賀版
http://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/news/20160720-OYTNT50110.html
ー国交省、丹生ダム中止決定ー
長浜市北部の高時川上流に計画された丹生(にう)ダムについて、国土交通省は20日、建設中止を正式に発表した。今後は国や県などが、代替の治水事業として河川整備や地域振興策などを進めていく。
丹生ダムは、旧建設省が1968年に多目的ダムとして予備調査に着手。96年までに水没予定地の40戸が立ち退いた。ダム本体は未着手だったが、今年3月末現在で575億円を投じて用地取得や付け替え工事を進めていた。
ところが、京阪神地域での水需要が低下し、国交省近畿地方整備局などは2014年に建設を中止する方針を決定。今年3月に同整備局などが、検証手続きの中で「中止が妥当」とする報告書原案を作成し、今月8日には、国交相の諮問機関「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」が、「ダム建設を含む案は有利ではない」と理解を示したため、国交相が最終決定した。
中止決定を受け、長浜市の藤井勇治市長は「地元の市長として非常にやるせない思いと、無念であるという思いに尽きる」とし、「国は、長年心労をかけた
◆2016年7月20日 産経新聞
http://news.livedoor.com/article/detail/11787600/
ー滋賀の丹生ダム、国交省が建設中止を決定ー
国土交通省は20日、滋賀県長浜市に計画されている多目的ダム「丹生(にう)ダム」の建設中止を決めた。
洪水調節の機能では、河川の掘削など他の方法と比べ、メリットはないと判断した。国のダム事業で、住民の集団移転完了後に建設中止が決まるのは初めて。
丹生ダムは国内屈指の多目的ダムとして計画され、平成8年には水没予定地の家屋40世帯の移転が完了。しかし、22年に国交省が事業再検討の対象としていた。
一方、同様に再検討の対象となっていた城原川(じょうばるがわ)ダム建設(佐賀県)、五名(ごみょう)ダム再開発、綾川(あやがわ)ダム群連携事業(いずれも香川県)は、継続すべきだと結論づけた。