八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

丹生ダム中止に伴う「地域整備事業に係る基本協定」締結

 国交省は淀川水系・丹生ダム(水資源機構)の中止を今年7月に決定しました。これに伴い、9月11日に「丹生ダム建設事業の中止に伴う地域整備事業に係る基本協定」が締結されました。

 八ッ場ダム事業では、民主党政権下、ダム中止政策によりダム事業による「生活再建」と「地域振興」も中止されるという不安が地元の大きな反発を招いた原因とされます。丹生ダム事業による水没世帯は40戸と、八ッ場ダム事業による移転世帯470戸(水没290世帯)にくらべればはるかに小規模ですが、40戸の移転はすでに20年前に完了しています。
 丹生ダム事業では1968年の予備調査開始から半世紀近く経過しています。八ッ場ダム事業では1952年に予備調査が開始されながら、多くの障害によりダム事業が遅々として進まず、今も水没予定地に住民が暮らしています。今年4月、強制収用を可能にする事業認定が下されたことで、残る住民も転出を余儀なくされますが、現在、5度目の計画変更手続きが行われており、先行きは依然として不透明です。
 水資源機構を事業主体とする丹生ダム事業では、水没予定地の買収は八ッ場ダム事業よりはるかに容易であったようですが、ダムで開発する水を利用することになっていた京都府、大阪府、阪神水道企業団が事業から撤退したことから、事業中止となりました。

◇2016年9月12日 京都新聞
http://www.kyoto-np.co.jp/shiga/article/20160912000160
ー滋賀・丹生ダム代わる振興策を 国や地元など5者協定ー

基本協定書に調印した丹生ダム対策委員会の丹生委員長(中央)ら=11日、長浜市役所 滋賀県長浜市の高時川上流で建設が計画されていた丹生ダムの正式な中止決定を受け、地元の丹生ダム対策委員会や国土交通省近畿地方整備局など5者は11日、ダムに代わる地元の振興を進める「丹生ダム建設事業の中止に伴う地域整備事業に係る基本協定」を結んだ。5者による「地域整備協議会」を速やかに発足させることも確認した。

 協定書では▽国、滋賀県、長浜市、水資源機構は地域整備を協力して進める▽同協議会での検討を踏まえ、国は責任を持って地域整備の推進を図る▽地域整備推進は同市北部地域の振興を見据えて行う-などとしている。

 調印式では、対策委の丹生善喜委員長、同局の池田豊人局長、三日月大造知事、藤井勇治市長、同機構の甲村謙友理事長が協定書に署名した。

 冒頭、池田局長は「地元の方々に長年にわたってご迷惑をお掛けしたことをおわびする」と謝罪。丹生委員長は「無念な思いだが、調印は丹生ダム事業の新たなスタート」と語った。藤井市長は「地元対策が一刻も早くできることを切に願う」と話した。

 対策委は今年1月、同局に提出した意見書で▽道路網の整備▽高時川の河川整備▽自然、文化、歴史を生かした地域振興策-など6項目の実施を要請しており、池田局長は「意見書の内容を重く受け止め対処したい。(同協議会を)できるだけ速やかに立ち上げ、できる事業から進めていきたい」と説明した。

 丹生ダム計画は1968年10月に予備調査が始まり、96年に水没予定地の約40戸の移転が完了した。2014年1月、同局と同機構が事実上の中止方針を表明し、今年7月20日、国交省が正式に中止を決定した。

◇2016年9月13日 産経新聞
 http://www.sankei.com/west/news/160913/wst1609130042-n1.html
ー「丹生ダム後」の振興策 地元と国、県などが協定書ー
 
 長浜市で国が計画していた多目的ダム「丹(に)生(う)ダム」の建設中止が決まったことを受け、ダムに代わる地域振興策を考えようと、地元住民でつくる丹生ダム対策委員会と国土交通省、県、市などは「地域整備基本協定」を結んだ。
 協定書では、住民と国、県など5者で協議会を設置し、地域振興策を考えることなどが盛り込まれた。協議会での検討をふまえ「国は責任を持って地域整備推進を図る」としている。池田豊人・国交省近畿地方整備局長は「すみやかに(協議会を)設置したい」と述べた。

 丹生ダムは国内屈指の多目的ダムとして計画され、昭和43年に予備調査が始まった。平成8年には、水没予定地となった40戸の家屋の移転が完了。だが、その後国交省は事業再検討の対象とし、今年7月、建設の中止を決定した。